ツイッター炎上と企業による社内教育 (2016/1/14 企業法務ナビ)
1 はじめに
有名人のプライバシーをツイートして炎上するという事件がまたしても発生した。今回は、不動産仲介会社に勤める従業員が、有名人の来店や紹介物件等をツイートしたという事例だ。ツイートしたその日のうちに炎上し、ツイッターアカウントは既に削除されたものの、この従業員が勤める会社では、今回の騒ぎの対応を検討しているとのことだ。
このようなツイッターによる炎上騒ぎにより企業等が謝罪する流れとなることも少なくない。以前にも、有名人が来店したことを従業員がツイッターに投稿し、炎上した結果、企業がホームページに謝罪文を掲載するに至ったというケースなどがある。
2 企業の対応
では、企業はこのような事態に対していかなる対処ができるのであろうか。問題のツイッターを投稿した従業員に対する処分や損害賠償請求、このツイートにより損害や迷惑を被った関係者等への謝罪など行われることとなると考えられるが、これらの対処はいずれも事後的なものにすぎない。炎上騒ぎが元となって営業を継続することが困難となり、店舗を閉鎖せざるを得なくなってしまったケースもあることを踏まえれば、できる限り事前の対処をすることが望まれるといってよいだろう。事前の対策の一部としては以下のことが考えられる。
- (1)従業員教育としての研修を定期的に行う
- (2)守秘義務を守る旨の誓約書等にサインしてもらう
- (3)社内規則とは別にツイッターなどの利用に関するガイドラインを作成し、従業員に配布・周知させておく
- (4)作成したガイドラインを従業員がいつでも見られるような状態にしておく
そして、研修を行う際には、法令を知り、理解したうえでどのような行為を行わないようにするか、という意識だけでなく、自己の行為が法令に違反するかどうかを問わず、どのような結果をもたらすこととなるか、というリスクへの意識を芽生えさせることも重要となってくるのではないだろうか。
3 課題
もっとも、社内教育をどこまで行えばよいかという点は一番の悩みどころであると思われる。ツイッターなどの利用に関しては、本来個人の自由に委ねられるものであるため、企業が従業員に対して逐一その利用上の注意点を教育しなければならないというのもなんとも不自然な話だからだ。とはいえ、ツイッターによる炎上騒ぎが頻繁に発生し、その都度企業が対応に追われているという現状を踏まえると、常識や良識的に考えれば個人情報を流出させるような軽はずみな投稿は行わないはずであろう、という考え方を持ち、その利用上の注意点に関する教育を怠るのは、いまや安易な判断であり危険といっても過言ではないだろう。
4 おわりに
ツイッターに軽率な投稿を行わせないということは、企業が保有する情報の漏洩を防ぐという側面もある。1月からマイナンバー制度も開始され、企業はますます情報の管理を徹底して行うことが求められている現状にある。情報の管理に関して十分な体制・制度を構築するとともに、管理を行う従業員の教育にも目を光らせ、情報漏洩による甚大な損害の発生を回避したいところである。