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文科省が発表!いじめ解消「9割」の真偽 (2015/11/26 JIJICO

関連ワード : 教育 調査 

各都道府県で「解消」のニュアンスは異なる

先日、文部科学省から「いじめ解消率」が発表されました。解消率とは「いじめの解決数÷いじめの認知件数」で計算されます。発表では解消率が88.7%とのことで、つまりいじめの認知件数の9割近くが解消したということです。

いじめ

では、「解消」とはどんな状態を指しているのでしょうか。「朝日新聞DIGITAL」の2015年10月29日の記事によると、解消率98.3%である愛媛県では「いじめ行為がなくなったかどうかに加え、本人や保護者に聞き取り、様子を一定期間見るなどして解消かどうか客観的に見ている」、解消率が70.9%の静岡県では「いじめは簡単になくならないという認識で対応し、解消も楽しく学校に通えるようになった状態で、認知したいじめのうち24.3%を、解消まで一歩手前の一定の解消が図られたが、継続支援中の状態とした」とされています。これだけを見ても、各都道府県によって「解消」のニュアンスが異なることが分かります。

調査であれば対象を客観的に計測する必要がある

調査をする際、調査対象の概念を統一する必要があります。何について調べるのか、数える人によってニュアンスが違えば、それぞれの調査員が違ったものを数えることになり、その調査は意味をなしません。この調査も、「解消」とはどういう状態かについて厳密に統一していかなければならなかったはずです。

では、いじめの解消の概念を統一することはできるのでしょうか。どうなれば、いじめは解消したといえるのか。いじめの行為がなくなれば解消なのでしょうか、いじめた子が反省したら、いじめによる心の傷がなくなれば解消なのでしょうか。また、調査するのであれば、その対象を客観的に計測する必要がありますが、反省や心の傷は客観的に計れるものなのでしょうか。

現在、いじめに遭っている子どもを救うためには

文科省のいじめの定義は「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」としています。いじめは主観的なものであり、客観的なデータにはなじまないものなのです。

無理やり数えたいじめの解消率が減ろうが増えようが、「今ここで」いじめに遭っている人には関係のない話です。現在、いじめに遭っている子どもを救うため、数の増減を気にするのではなく、いじめがどれだけその子どもの心を蝕むものかに目を向けてほしいと思います。

提供:JIJICO

著者プロフィール
船越 克真船越 克真/教育カウンセラー
船越教育相談室
昭和41年7月6日生まれ。京都市立大宮小学校・京都市立加茂川中学校・京都市立紫野高等学校を経て、 昭和62年京都教育大学第二類教員養成課程第一社会科学科入学。平成3年同学卒業、同年に京都教育大学大学院教育学研究科修士課程教科教育専攻社会科教育専修入学。平成5年同学終了(教育学修士) 。平成6年法務省加古川学園採用(法務教官)。 平成17年に辞職した後、京都市立中学校・特別支援学校講師、発達障害者のための作業所職員、精神障害者のための施設職員、精神障害者のためのホームヘルパーを経て、平成24年6月、船越教育相談室を開設。
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