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【参議院議員選挙2022】[用語解説]非拘束名簿式、特定枠

タレント候補と参院選比例代表の密接な関係―当選者の決め方 (2022/7/1 政治山)

 国政選挙ではしばしば、いわゆるタレント候補といわれる知名度の高い候補者が擁立されます。これはなぜなのでしょうか?もちろん候補者本人の志があってのことですが、政党が選挙戦略の一つとして、とりわけ参院選比例区にタレント候補を立てることには理由があり、これには選挙の仕組みが大きく関係しているのです。

選挙

※画像はイメージです

名前を覚えてもらうことが大事

 参院選比例区は、日本全国を1つの選挙区として行われます。候補者は、全国を巡って名前を覚えてもらわなければなりません。また比例区には100人以上が立候補するため(今回の2019年参院選は155人)、有権者がすべての候補者の名前を覚えることは難しいでしょう。もともと知名度の高い候補者は、その点でやや優位に立っていると考えられます。

 政党がタレント候補を擁立する理由はほかにもあります。それには比例区の当選者の決め方が影響しているので、次にその点を見てみましょう。

候補者への1票は、同時に政党への1票

(1)政党が届け出る

 選挙が告示されると、政党は比例名簿を中央選挙管理委員会に届け出て、有権者は名簿を届け出た政党に対して投票します。その得票数に応じて各党に議席が配分され、その数だけ名簿に登載された候補者から当選者が決まります。

 参院選比例区では基本的に、政党が名簿順位をあらかじめ決めず、有権者の投票によって順位を決める「非拘束名簿式」が採用されています。ただし、2018年に公職選挙法が改正され、政党や政治団体が特定の候補者を優先的に当選させる「特定枠」が導入されました。名簿の中に特定の枠を設け、その枠の候補者は個人名での得票数に関係なく優先的に当選します。枠を設定するかしないか、その人数も含めて政党が自由に設定できます。

 ではどのように当選者が決まるのでしょう。

(2)有権者が投票する

 有権者は、次の2通りのうち、どちらかの方法で投票します。
 ・政党名を書く
 ・名簿に登載されている候補者名を書く

(3)政党別の獲得議席数が決まる

 開票の際は、まず政党の得票数を確定させます。このとき、候補者名の書かれた票も、その候補者が所属する政党への票として計算します。つまり、候補者名の書かれた票は候補者への1票と同時に、政党への1票という意味を持っているのです。

 政党名が書かれた票と、候補者名が書かれた票を合わせて、政党の得票数の合計を算出します。その票数に応じて獲得議席数が決まります。

 ここで前述の通り、もし知名度の高い候補者名を多くの有権者が書いた場合、これは政党への1票となるため獲得議席数に影響を及ぼすのです。

(4)当選者が決まる

 次に、各党は獲得議席分だけ名簿順位の上位者から当選を決めます。この名簿順位は、候補者名が書かれた票の数によって決まります。

 より多くの個人票を獲得した候補者が名簿上位となり、順位が獲得議席数の範囲内であれば、当選となります。

非拘束名簿式の当選の決め方

 非拘束名簿式の名簿順位の決め方について、例を使って説明します。

 ア党とイ党が4人ずつ立候補させたとします。
 【ア党】比例名簿登載者(候補者):A、B、C、D
 【イ党】比例名簿登載者(候補者):E、F、G、H

 それぞれの得票は次の通りで、ア党とイ党の得票数は、政党名が書かれた票と、政党所属の候補者名が書かれた票をすべて合わせた票(ア党=56,000票、イ党=40,000票)になります。その結果、ア党が3議席、イ党が2議席獲得しました。

非拘束名簿式―政党の得票数

 次に名簿順位を決めます。名簿順位は政党ごとに候補者名が書かれた票数で決まります。そのように並び替えたものが次の表です。獲得議席数に応じて、ア党は名簿上位の3人、イ党は2人が当選となります。

非拘束名簿式―名簿順位

事実上の拘束名簿式に

 これまでの参院選比例代表では非拘束名簿式を採用してきましたが、今参院選から導入された「特定枠」により、特定枠の候補者は候補者名での得票数に関係なく優先的に当選します。上記のイ党を例に、特定枠が設定されているケースを見てみます。

非拘束名簿式-特定枠

 2議席を獲得したイ党の比例名簿に特定枠が設定されていない場合は、得票数の多い上位2人であるF候補とH候補が当選します。一方、特定枠が設定されている場合、当選は特定枠の候補者が優先されます。特定枠にG候補とH候補の2人が入っていたとすると、得票数に関係なくG候補とH候補が当選し、イ党の中で最も票を獲得したF候補は落選となります。

 これは過去に採用していた拘束名簿式の事実上の復活といえるでしょう。

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