蓮舫氏の衆院鞍替え観測―参院議員では総理大臣になれないのか (2016/10/30 政治山)
次期衆院選で参議院からの鞍替えに意欲を示す民進党の蓮舫代表が、比例代表単独で東京ブロックの名簿登載順位1位として立候補する可能性が報じられました。同党執行部が検討しているとのことです。閣僚を経験したり、党の要職に就いたりした参議院議員は、衆議院への鞍替えを目指すことが少なくありません。なぜでしょうか。
参議院議員でも総理大臣にはなれるが解散権が発動しにくい
自民党議員の場合、宮沢喜一、石原慎太郎、藤井孝男、小池百合子の各氏は、参議院から鞍替えして衆議院議員になった後で総裁選に立候補しました。2012年、参議院議員として初めて総裁選に立候補した林芳正・参議院議員は、今年5月の政治資金パーティーで「決断をするのが我々政治家の仕事」と発言し、鞍替えに意欲を示したと報じられました。
参議院議員が内閣総理大臣に指名されても問題はありませんが、過去に例はありません。参議院に所属したまま総理大臣になれば、自らの議席が安泰のままで衆議院の解散権を持つことになりますが、「国民に信を問う」との説得力に欠ける恐れがあります。また、国会議員として入閣を目指す場合、衆議院議員を中心に人選され、参議院議員に充てられる大臣ポストの数は限られています。
地元の歓迎ぶりにも差があります。県全域か全国比例代表で選ばれる参議院議員よりも、小選挙区や比例ブロックで選ばれた地元密着型の衆議院議員の方が有権者に身近であり、各種会合でも上座に座ることが多いことから、ある程度の当選回数を重ね知名度を得た参議院議員は鞍替えを模索することになります。
衆議院の優越が権力の源泉
衆参を比較すると、権力の差も歴然としています。法律案の再可決(憲法第59条)、予算の議決(憲法第60条)、条約の承認(憲法第61条)、内閣総理大臣の指名(憲法第67条第2項)で、衆議院の優越が認められています。予算についても衆議院に先議権が認められ、参議院は常に後議の院となります(憲法第60条)。また、内閣不信任決議や内閣信任決議は、衆議院にのみ認められています(憲法第69条)。
一方、参議院だけに認められる権能としては、衆議院解散中における参議院の緊急集会(憲法第54条2項)があります。政治家にとって、参議院の最大の魅力は解散がないことです。辞職するか死亡しない限り、6年間の任期が約束されています。「良識の府」と言われるように、選挙に忙殺されずに政策の勉強にも集中できるので、衆議院議員よりも魅力的だと考える議員もいます。
国政復帰に活用される衆議院から参議院への鞍替え
しかし実際には、蓮舫代表の鞍替えが取りざたされるように、参議院から衆議院に鞍替えする議員の方が多く、ある程度の当選回数を重ねた参議院議員は、選挙区に空きが生じれば衆議院への鞍替えに手を上げます。本人が望まなくとも、党から鞍替えを命じられます。
蓮舫代表に対しても、民進党都連が「比例単独で楽な選挙をしたら駄目だ」と難色を示す声があり、落選中の海江田万里氏の東京1区を当て、海江田氏を比例1位で優遇する案も検討されています。
衆議院から参議院に鞍替えするケースでは、衆院選で落選後に参院選に臨み国政復帰を果たす例が目立ちます。7月の参院選でも、自民党の山田宏氏や民進党の田名部匡代氏、日本維新の会の渡辺喜美氏など複数の元衆議院議員が当選しました。
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