[用語解説]政務活動費
受け継がれる不正請求の手口―富山市議会の政活費不正受給は氷山の一角か (2016/9/15 政治山)
富山県内で政務活動費(政活費)の不正受給が相次いで発覚しています。政活費といえば、野々村竜太郎元兵庫県議が約913万円をだまし取ったとして7月に詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使罪で有罪判決(懲役3年、執行猶予4年)を受けましたが、それ以降も相次ぐ不正発覚は、地方議員の間で組織的に不正の手口が繰り返されてきた実態を示しているようです。
市議報酬アップきっかけに不正が続々発覚
端緒は7月、矢後肇・富山県議が実際には購入していない書籍の領収書を偽造して、2010年度からの4年半で政活費460万円を不正に受け取ったことが発覚し、矢後氏は辞職。その後、富山市議会でも少なくとも5人の自民党市議の不正が発覚しました。自民会派だけでなく、民進党系会派でも2013年度から15年度にかけ、計約1180万円の不正受給が明らかとなりました。
市民団体が詐欺容疑で告発
2014年に野々村元県議の問題が浮上して以降、政活費の報告に領収書添付を義務付ける地方議会が増えましたが、富山市議会では特に対応してきませんでした。逆に6月、世論の厳しい反対の声を押し切り、市議報酬を来春から月10万円増の70万円とする条例改正案が可決されました。これをきっかけに「議員とカネ」への関心が高まる中、矢後氏の不正が発覚しました。さらに県議会自民会派の調査で、他の書店や15年度分を合わせた不正請求額は約480万円と判明し、矢後氏は延滞金を含め約560万円を返還しました。
市民団体「富山県平和運動センター」は9月7日、矢後氏について詐欺容疑などで県警に告発状を提出しました。その後、富山市議会では自民会派の5人が領収書偽造などの不正を認め3人が辞職し、1人が辞職の意思を表明しています。民進党系会派でも不正が明らかになり、2人が辞職願を提出しました。このうちの1人は、不正請求の手口を同会派の元会長(故人)から引き継ぎを受けたと説明しているとの報道があります。
政治とカネに対する不祥事が絶えない中で、「富山市議会の不正請求は、氷山の一角では」という声もあります。各地方議員の政活費の使途については今後、市民団体や第三者機関などのより厳しいチェックが行われると見られます。
東京都でも精査へ
東京都議会の場合、政活費の使われ方については議会局や第三者機関のチェックがあるため地方議会の中でも厳しい監視の下にあると言われますが、都政改革の中で過去に遡って精査する可能性もあります。
小池都知事は自身の報酬を半減して1450万円にする条例案を28日の定例都議会に提出する予定です。現在、都議の年収は、報酬1700万円のほか、政活費が年間720万円支給され、総額は2420万円になります。
都知事1人よりも127人いる都議の年収が各1000万円も多くなってしまう見込みで、都民から出始めている批判を後ろ盾に「都議会のあり方検討会」で、過去の使用実態をオープンにして斬り込むと見られます。
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