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【衆議院議員選挙2014】

低投票率が後押し?自公300議席超えか―衆院選情勢 (2014/11/28 選挙プランナー 松田馨)

関連ワード : 松田馨 衆院選 衆院選2014 

 11月20日(木)に衆議院が解散され、来月12月2日(火)公示、14日(日)投開票のスケジュールで第47回衆議院議員総選挙が行われます。総選挙が行われるのは2012年12月以来、2年ぶりとなります。

475議席を各党が争う

 これまで衆議院の定数は480でしたが、今回から一票の格差是正のため、小選挙区が5つ減って295となり、比例区180の議席とあわせて475議席を各党が争うことになります。

 急転直下の年末解散でしたが、与党である自民党・公明党は、選挙区での候補者擁立をほぼ終えています。共産党以外の野党各党は、前回衆院選で非自民票が割れ、小選挙区で大敗を喫した経験から、民主党・維新の党・次世代の党などが立候補予定者を一本化する「候補者調整」を行い、すでに220議席以上で調整が完了しています。共産党は291の選挙区で候補者が確定し、各党・各候補者はすでに選挙戦本番のような活発な活動を展開しています。

政党別の獲得議席数予測

政党名 解散前 改選後予測
自由民主党 295 272
民主党 55 99
維新の党 42 40
公明党 31 31
次世代の党 19 10
みんなの党 8
日本共産党 8 10
生活の党 7 3
社会民主党 2 2
無所属(諸派含む) 12 8
欠員 1
合計 480 475

情勢は? 与党300議席超えの可能性

 公示まであと1週間を切った現時点の情勢ですが、自民党・公明党あわせて300議席を超える可能性があります。以下、私の予想の根拠を3点あげます。

(1)投票率が戦後最低をさらに更新しそうであること

 衆院選の投票率は、2005年の郵政解散で67.51%、2009年の政権交代解散で69.28%、そして前回2012年は59.32%でした。前回、戦後最低を記録した投票率ですが、各種世論調査を見ていると前回以上に有権者の関心が低いことが見てとれます。例えば、朝日新聞社の電話世論調査(11月22日~23日実施)によれば、衆院選への関心について「大いに関心がある」と答えた人は21%でした。前回2012年の同様の調査で「大いに関心がある」と答えた人が39%だったことを考えると、関心の低さが見て取れます。

 なぜこのタイミングで解散するのかが有権者にはわかりにくいこともありますし、内閣支持率や自民党への支持率も堅調なことから「現状肯定」で無党派層が投票に行かず全体的な投票率が下がることが予想されます。

 今回の解散について「大義がない」「税金のムダ遣い」などの批判はありますが、こうした声が自民党への逆風になるかと言えば、現時点では、ならないと考えています。一部、そうした批判的な票が野党に流れる可能性はありますが、多くはわざわざ投票へ行って非自民候補へ投票するほどの怒りは抱えておらず、投票へ行かないのではないでしょうか。結果として、投票者に占める自公支持票の割合が増加します。

 また、マスコミ各社の世論調査でも、比例区投票先は自民党が25~41%と支持を集め、他の野党を大きく引き離して比例投票先の1位であることからも、選挙区・比例区ともに優勢に選挙戦を展開することが予想されます。

(2)野党協力は候補者調整にとどまること

 295選挙区のうち、民主党・維新の党・次世代の党は220議席以上で「候補者調整」を行いました。小選挙区では1人しか当選できませんので、与党に批判的な有権者の票を集める意味で一定の効果が見込まれます。

 ただ、前回衆院選で落選した野党候補の票を単純に足して、自民党候補を上回るからといって、今回その選挙区で野党候補が当選できるかと言えば、そう単純な話ではありません。その候補者だから獲得できた票、その政党だから獲得できた票がありますし、2年前よりも自民党の支持率は安定しています。

 違う政党がそれぞれ党員名簿を出し、人手を出し、違う政党の候補者のために選挙運動するというのが「選挙協力」ですが、支持基盤の異なる民主党と維新の党にできるのは「候補者調整」までだと思います。それぞれの票を掘り起こし、1つにまとめる「選挙協力」ができなければ、小選挙区でも野党の躍進は難しいと考えられます。

(3)支持率を伸ばしている共産党の存在

 低投票率のなか、野党が非自民票を掘り起こしてまとめることができない状況のなかで、大きな存在感を持つのが共産党です。2年前の総選挙直前のNHK世論調査で、共産党の支持率は1.6%でしたが、今年11月の調査では3.5%と、野党では唯一上昇しています。

 民主党が大勝した2009年の衆院選において、共産党は小選挙区で152人の候補者しか擁立しませんでした。私は2009年に民主党候補が自民党候補に競り勝つことができた選挙区では、共産党候補がいなかったことも影響していると分析しています。

 今回、共産党は全ての選挙区で候補者を擁立すると発表しており、すでに291の選挙区で候補者擁立を終えています。共産党候補は大体1万票弱~3万票弱を選挙区で獲得していますが、これは共産党支持票であると同時に、与党への強い批判票ですから、結果として与党批判票が割れることになります。

 実際に2013年の参院選では、自民党への批判票の受け皿として共産党が票を伸ばしました。安倍政権・自民党への批判票の受け皿として今回も票を伸ばす可能性は高いでしょう。「確かな野党」の存在が、小選挙区での与野党候補の当落を左右する展開になりそうです。

短期決戦だが一寸先は闇

 残り20日をきった短期決戦ですが、衆議院総選挙は全ての選挙のなかで最も注目度が高く、マスコミの報道量が多い選挙です。

 上記したように与党優勢の情勢ですが、投開票日までに、安倍総裁や自民党に不適切な発言や不祥事の発覚といった「オウンゴール」があった場合は、風向きが大きく変わる可能性もあります。

 地方選挙から国政選挙まで、さまざまな選挙に関わっていますが、衆議院総選挙こそ、我が国の未来を決める最も影響力のある選挙です。低投票率が予想されていますが、こうした予想を裏切って、1人でも多くの方が投票に行ってほしいと思います。

著者プロフィール
松田馨氏松田 馨(まつだ かおる)
株式会社ダイアログ代表取締役。選挙プランナーとして100を超える選挙に関わり、「日本最年少プランナー」「ネット選挙に精通した選挙プランナー」としてマスコミに多数取り上げられる。週刊誌等での国政選挙の当落予想記事の執筆など、無党派層の動向分析には定評がある。一般社団法人 日本選挙キャンペーン協会理事・事務局長。日本選挙学会会員。
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