政府は「農業白書」を閣議決定して強い農業を打ち出したが・・・ 株式会社フィスコ 2014年5月29日
政府は27日、2013年度の「農業白書(食料・農業・農村の動向)」を閣議決定した。
まず、2013年12月に「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録が決まったことに触れ、農業委員会や農協組織の見直し、企業参入を促進する必要性を強調、農地集約や担い手の育成、輸出拡大などの強化策を盛り込み、安倍政権が掲げる「強い農業」の推進を打ち出した。
白書は「東日本大震災からの復旧・復興」など4章で構成され、昨年度版の「農業の持続的な発展」という章は「強い農業の創造に向けた取組」と改めた。
食文化を見つめ直し次世代に継承していくことに加え、今後の政策改革のグランドデザインとなる「農林水産業・地域の活力創造プラン」を取りまとめるとともに、食料の安定供給の確保という観点から、世界の食料需給や食料安全保障に向けた取り組み、農産物貿易交渉の状況や我が国の食料自給率の動向、食料消費の動向や食育の推進、食品産業の動向や食の安全と消費者の信頼確保に向けた取り組み等を記述。強い農業の創造に向けた取り組みという観点からは、農業の構造改革の推進、農業生産基盤の整備・保全、農業の高付加価値化等の推進、主要農畜産物の生産等の動向、最新の研究・技術開発、環境保全を重視した農業生産、農業関連団体等の取り組み等を記述しているほか、農村の振興・活性化という観点からは、農業・農村の持つ多面的機能の維持・発揮、鳥獣被害の現状と対策、再生可能エネルギーの推進、都市と農村の共生・対流の取り組み、都市農業の振興等を記述した。
さらに、今後増え続けると見られる65歳以上の単身世帯の食料消費支出動向が初めて紹介された。2013年は10年前の2003年との比で、生鮮食品が6.8%減少したのに対し、コーヒーや野菜ジュースなどの飲料・酒類が27.6%、天ぷら・フライといった総菜などの調理食品が9.5%、外食が4.9%増加するなど、簡単で手間が掛からない食事が選ばれる傾向が明らかになった。白書では「単身・高齢者世帯のニーズに合った食品や農産物の生産の推進が重要」と指摘している。
本報告書を通じて、我が国の食料・農業・農村に対する国民的な関心と理解が一層深まることを期待しているとしているが、日本の農業は、農業従事者の減少や高齢化、農業所得の減少、農業生産費の減少など多くの課題に直面しており、農業生産活動の弱体化に対する懸念は強まるばかりだ。このような課題を打開して農業の強化を実現できるかどうか、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)とともに、我が国の農業は大きな岐路に立たされているといえる。 <YU>
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