東京都知事選挙の結果と市場反応 (2014/2/17 フィスコ)
政治山が東京都知事選挙の投票締め切り直後に実施した「第15回政治山調査『東京都知事選挙に関する意識調査2』」では、東京都在住の成人男女1,105人の回答を支持政党別、年代別、職業別など、各候補者に投票した有権者を徹底分析しました。ここでは、投資支援サービスや情報を提供する株式会社フィスコが、東京都知事選挙の結果を受けた金融市場の反応を分析します。
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東京都知事選挙の結果
猪瀬前知事の辞職に伴う東京都知事選挙の結果、終始優勢が伝えられた舛添要一氏が初当選を果たした。投票が締め切られた9日の20時ちょうどに当選確実が伝わったことで、事前予想通りの結果となった。想定外だったのは小泉純一郎元首相が応援した細川護熙氏が3位となったことか。前日の大雪などの影響から投票率が下がったことで、今回の選挙では無党派層の風は吹かなかったとのイメージが強い。次点に共産党・社民党が支援した宇都宮健児氏が入ったことからも、組織力の強さが勝敗を決める要因となった。
一方、ツイッターで出馬を宣言したIT実業家の家入一真氏が5位に入ったことは、ご本人には失礼だがサプライズと言えよう。35歳と今回の立候補者のなかで最年少だった家入氏はネットでの選挙戦を展開。若い世代を中心に支持を広げたとの見方だ。
アンケートの結果から見えてくる無党派層の今回の動き
大雪の影響で投票率は大幅に減少したとの見方だが、「現在、どの政党を支持していますか?」との質問では、政権与党の「自民党」が22.1%を獲得してトップを取った(公明党を入れると24.5%)。2位に「共産党」(4.9%)、「民主党」が4.1%、「日本維新の会」が2.6%と続いている。この並びは東京都知事選挙でのトップ4と同じだ。一方、「支持政党なし」が57.6%いるということは、今回投票しなかった割合(100%-投票率46.14%=53.56%)とほぼ同じとなる。こうした結果から、今回の都知事選挙は無党派層が殆ど動かなかったと言う結論を導くことができる。
舛添氏の勝利は想定通り 金融市場(為替・債券・株式)の反応は総じて乏しい
舛添候補の優勢が選挙直前まで伝えられていたことから、都知事選挙が行われた翌日10日の東京為替市場では選挙結果を意識した動きは特にみられなかった。市場参加者の大半は11日に予定されていたイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を注目していたことから、都知事選挙の結果は材料視されなかったようだ。
一方、債券市場、株式市場も同様だった。首都高速道路などインフラ整備を早急に着手することは織込み済みとなっていたため、舛添氏の勝利が長期金利の水準などに影響を及ぼすことはなかったほか、株式市場でインフラ関連が賑わうこともなかった。
マクロ経済全体のインプリケーション
上記の通り、金融市場における反応は限定的となった。ただ、都知事選挙の期間中に見えてきたことを整理すると、選挙結果がマクロ経済に与える影響は決して小さいものではないかもしれない。
アンケート調査結果によると、有権者が重視したのは、東京五輪の準備、防災、少子高齢化対策、医療・福祉の充実、原発への対応を含めたエネルギー政策の5点であることが判明した。このうち、東京五輪の準備については都政に限定されるが、他の4つは国政レベルでも有権者の関心を集める可能性が高いと思われる。
これらにうまく対応するためには、大規模な財政出動が不可欠だろう。財政面でのサポートが不十分であれば、有権者の不満が強まることは間違いない。「アベノミクス」だけでは対応できない問題が多く、これらの問題への対応の巧拙次第で安倍政権は厳しい状況に直面することになるかもしれない。
東京都知事選挙の結果については、前日の大雪の影響で投票率が50%を下回ったことを考慮する必要はある。ただ、投票しなかった有権者も、上記に上げた5つの問題に対する関心はまずまず高いと思われる。舛添新都知事の政策実行力が都民の期待を下回ることになれば、同氏を支援した安倍政権に対する批判が強まるかもしれない。