東京都知事選挙2014
第15回政治山調査「2014年東京都知事選挙に関する意識調査2」(1/2) (2014/2/14 政治山)
猪瀬直樹前知事の辞職に伴う東京都知事選が2月9日に投票日を迎え、舛添要一氏が、宇都宮健児氏、細川護煕氏、田母神俊雄氏らを破って初当選した。最終投票率は46.14%という低投票率となり、過去3番目の低い水準になった。政治山では、都知事選挙投票締め切り直後の2月9日から11日に、ネット意識調査「政治山リサーチ」を利用し、東京都在住の有権者を対象に東京都知事選挙に関するネット意識調査を実施した。回答者は1,105人。
今回の調査では、各候補者に投票した有権者像を詳細に分析し、東京都知事選挙の結果から政党の影響力がいまだ非常に強力であること、しかし、その中でも静かに起きつつある政治の地殻変動の姿をあぶりだすことに成功した。
[結果分析]2ページ目
[調査概要]意識調査の方法や回答者属性
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今回の東京都知事選挙は、舛添要一氏が投票数全体の43.4%を獲得し、次点の宇都宮健児氏の得票率19.6%に大差をつけ圧勝した。このたびの政治山調査で誰に投票したかをたずねたところ、田母神俊雄氏の得票率が実際の選挙よりもやや高くなり、舛添氏と宇都宮氏の割合が低かったものの、実際の選挙と同様の傾向が見られる結果となった(参考・実際の選挙での得票率:舛添氏 43.4%、宇都宮氏 20.2%、細川氏 19.6%、田母神氏 12.5%、家入氏 1.8%)。
党派色が鮮明に現れた投票結果
今回の東京都知事選挙は、舛添氏が自民・公明から支持、細川氏は無所属ながら民主党が勝手連的な支持を得て、宇都宮氏は社民・共産からの支持、田母神氏は石原前東京都知事からの支持を得た戦いとなった
その結果が各政党支持者の投票結果に綺麗に現れた形となっている(グラフ3)。自民党は舛添氏・田母神氏が二分する形となり、公明党は舛添支持一色、民主党は6割以上が細川支持だが固めきれず、態度が曖昧であった維新・みんなは支持がばらつき、社民党・共産党は宇都宮氏への支持でほぼ固まる形となった。
これらの傾向は各政党の支持方針がそのまま各候補者への支持として反映したことを意味しており、無党派層が多いとされる東京都知事選挙においても政党の影響力がいまだ大きいことを示している。
舛添氏・田母神氏の支持者は似て非なるもの-自民党支持者の年代対立の存在―
一方、各候補者別の得票構造における政党支持者の割合はグラフ4の通りとなっている。
舛添氏、田母神氏は無党派層以外に得票構造の40%前後を自民党支持者が占めている。宇都宮氏・細川氏は得票構造における無党派層の支持割合が同程度であるが、宇都宮氏に社民党・共産党からの強固な組織票が組み込まれていたことが分かる。今回インターネット選挙を展開した家入氏の支持者は大半が無党派層であった。
より詳細に分析した結果、自民党支持者・無党派層支持者の年代構成はグラフ5の通りである。
舛添氏と田母神氏は自民党支持が非常に厚い傾向があることは同様であるが、同じ自民党支持者であったとしても舛添支持者は高齢世代の自民党支持者、田母神支持者は若年世代の自民党支持者である。この支持者構造の違いは今後の自民党内の政局動向にも影響を与える要素になるだろう。
一方、もう一つ大きなウエートを占めている無党派層であるが、こちらも年代によって投票した候補者が異なる傾向がある。細川氏は無党派層の中でも高齢世代の支持者によって支持されているが、田母神氏の場合は大半が若年世代であることが分かる。田母神氏の支持者が自民党・無党派層の若年世代によって占められていることが今回の東京都知事選挙の特徴となっている。
これらは中長期的な自民党・無党派層の構造の変化を示しており、静かな地殻変動が起きつつあることを示している。
職業によって分かれた支持
次に、投票先を職業別に見てみると、舛添氏は全職業から比較的高い得票を得ており、特に主婦層からの厚い支持を獲得している(グラフ6)。
田母神氏は会社員からの支持を得ているものの、最も支持が厚い層は学生となっている。
宇都宮・細川両氏は全職業から満遍なく票を得ているが、自営業・自由業においては相対的に得票の比重が高い。
各候補者は有権者のどのような政策的な期待を受けていたのか
続いて、今回の都知事選で投票先を決める際に重視したポイントをたずねた。舛添氏・宇都宮氏に投票した都民は、少子高齢化及び医療・福祉の充実を重視したとともに、舛添氏は五輪の準備、宇都宮氏は雇用改善を重視していた有権者が投票していることが分かった。
一方、宇都宮氏と細川氏を比較した場合、同じ脱原発を掲げた候補者であっても、重視する政策のウエートで、細川氏へ投票した有権者は、よりエネルギー政策・原発への考え方を重視する割合が高かった。
また、田母神氏へ投票した都民の重要政策は地震・防災対策の割合が比較的高く、同氏の経歴・主張が同氏に対する投票者に浸透していたことが読み取れる。
一方、グラフ8を見ると、新知事がまず取り組むべきと考える政策の上位は、地震・防災対策、医療・福祉の改善、少子・高齢化対策となっており、新知事として選ばれた舛添氏に期待されている政策の上位4位とほぼ変わらない。そのため、同氏に対する期待は都民全体からの期待とおおよそ同一の傾向があることが分かり、シングルイシューよりも総合力で勝る同氏が政策的な期待面でも都知事選挙を有利に進めたことが分かった。
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ここまでは、支持政党別、年代別、職業別などの投票行動を分析してきたが、次ページでは、今回の選挙においてインターネットの情報やツールをどのように活用したかについてリサーチした結果をご紹介する。