【社会】毎日400トン増える汚染水対策、「凍土壁」の効果のほどは? 海外紙の分析 ニュースフィア 2014年5月21日
16日、東京電力は、福島第一原発の原子炉建屋周辺の地盤を凍らせて地下水の流入を防ぐ「凍土壁」の着工を前に、技術的な課題を検証する実証実験を現地で公開した。
実験の背景
福島第一原発では、メルトダウンした原子炉の圧力容器内に冷却水を送り込み続けているが、周辺の地下水が原子炉建屋に流れ込んでこれと混じり合うため、放射能による汚染水が毎日400トンも増え続けている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)によれば、原発敷地内の汚染水は既にタンク1000個分、40万トンに達し、これ以上タンクを建てる場所が無いという。
そこで汚染水対策の切り札として、導入計画が進められているのが凍土壁である。これは1~4号機の周囲1.5kmにわたって深さ30mの管を通し、冷却材を循環させて地盤を凍らせることで氷の壁を造り、地下水の浸入を防ごうというものだ。
東電は来月にも着工したい考えだが、建設には原子力規制委員会の認可が必要。ウォール紙によれば、規制委のこれまでの会合では、凍土壁建設による地盤への影響等につき懸念が述べられたという。
実験の結果は
これを受けて、東電と鹿島建設とで、3月から実証研究が始められたとウォール紙は述べる。4号機付近に深さ26.5mの凍結管が埋設され、氷点下30度の冷却材が流し込まれて、100m四方の地盤が氷の壁になったという。
東電福島第一廃炉推進カンパニーの中村紀吉部長は、実験によって凍土壁の外側から地下水が流入していないことや、地下に配管などがある場所でも地下水を遮断する効果が確認できたと語る。
東電外部委員クライン氏の凍土壁に対する評価
これより先の5月1日、東京電力の外部委員「原子力改革監視委員会」委員長のデール・クライン氏は、共同通信と会見を行い、懸念を表明。
凍土壁の実績はあるものの、これだけの規模のものが造られたことはなく、本来は「数ヶ月間の一時的な措置」だと指摘。「意図せぬ結果」への懸念から、地下水の行方について、さらなる試験と分析が必要だと主張した。
同氏はさらに、凍土壁の高コストについても指摘。ウォール紙によれば、凍土壁の維持運用には電気代だけで毎月1億円かかるという。
そのうえで同氏は、「個人的には地下水バイパスの方を支持する」と述べたという。地下水バイパスは、汚染水の発生を抑えるため、建屋に流れ込む前の地下水を汲み上げて海に放出する方式。こちらは21日から実施予定となっている。
ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌は、下記のコメントを紹介した。
「調査の結果、凍土壁が最善の方法でないことが分かったら、計画の見直しを政府に申し入れるべきだ。政府が主導で凍土壁を入れると言っていたことは認識している。だが、政治の決めた政策ではなく、科学が優位に立つ事を願っている」。