【海外】ビットコインの父、見つかる!? 本人否定も、人物像など一致 海外紙軒並みトップニュース NewSphere(ニュースフィア) 2014年3月10日
ニューズウィーク誌が、インターネット仮想通貨「ビットコイン」の発案者であり、正体不明であった「中本哲史」氏と思われる人物と接触したと報じた。掲載から24時間足らずで2000近いコメントが寄せられ、他のメディアもこの「スクープ」に注目している。
「今はもう」ビットコインとは無関係
2008年ごろからビットコインを提唱し、基本的プログラミングを行ったのは「中本哲史」なる人物であった。記事は、2ヶ月にわたる調査やインタビューの結果、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外郊外テンプルシティ地区在住の日系アメリカ人、「ドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモト」氏(64)こそがそうであると示唆している。
本人は、自宅を訪問した記者に対し直ちに警察を呼ぶなど、取材を一切拒む姿勢を示している。しかし、「私はもう関わっておらず、これについて議論はできません。他の人々の手に渡っているのです。今責任があるのは彼らです。私はもう何の繋がりもありません」と、暗に認めたともとれる発言もある。
政府や銀行への不信感
記事は、中本氏は1949年別府市の生まれで、3人兄弟の長男、先祖はサムライ、母親は僧侶であり、離婚・再婚の後、中本氏らを連れてカリフォルニアに移住した、と紹介している。中本氏自身は2度の結婚歴と6人の子供がおり、93歳で存命の母親と同居しているという。また1973年に、「中本哲史」から現在の名前に改名した裁判所記録が残っていたという。
中本氏はカリフォルニア工科大の物理学課程を卒業後、カリフォルニアあるいはニュージャージー州で、国防関連の業務など含め、コンピューターエンジニアとして多くの職歴があるという。しかし1990年代に2度解雇され、自宅が抵当に流されるなどの経験をして、既存の政府や銀行に対する不信感が強いとのことだ。
記事は、この経歴が、ビットコインの思想と一致することを示唆している。その後、専門家が集まったオープンソースプロジェクトであるビットコインを主導したようだが、健康問題のためか、3年前に去っていたという。
偏執的な人物像
開発者仲間や家族らによると、中本氏は一日中仕事に打ち込み、無駄話を嫌った。仕事では電話はせず、匿名化されたメールを使用し、背景について詮索されることを非常に嫌うなど、秘密主義的であったようだ。
仕事場は鍵をかけ、いつも一人で仕事をしていたようだという。「他人に読まれる前提になっていないソースコード」や、他の開発者よりかなり年長と思われる言動、文体の特徴などが、両者の一致を示すと記事は主張している。
また、知的な人物ながら「嫌な奴(asshole)」、「誰かが単純ミスを犯したら馬鹿と呼んで、二度と口を利かないような人」、「就職面接に行って面接官に馬鹿だと言い、実際それを証明した人というのは、他に知りません」といった人物像も報じられている。
長女には、政府をあてにせず自立を勧め、「政府機関が後ろから来るマネ!」と言うと娘がクローゼットの中に隠れる、という遊びをよくやったという。
趣味は鉄道模型で、イギリスからも頻繁に注文したため、その際の決済上の不満がビットコインにつながったとも言われている。また、記者はその模型会社から中本氏の現在のメールアドレスを入手したと明かしている。
プライバシー侵害の懸念も
とはいえこの報道は、真偽を疑う意見も多い。プライバシー侵害の懸念も多く寄せられている。中本氏自身のほか、自宅や車の写真までも掲載されていることや、一見慎ましい暮らしの中本氏が何億ドル相当ものビットコインを死蔵していると思われることから安全上の懸念も指摘されている。記事中で頻繁に引用される開発者仲間は、取材に応じて後悔したと語っているという。
しかしフォーブス誌は記事に好意的だ。自宅の映像はGoogleストリートビューで検索可能、アメリカでは宝くじの高額当選者は名前を公表される、そもそもなぜ本名で論文を書いたのかなど、上記の懸念はあたらないとしている。同誌は「プライバシーを侵害し、人々が往々にして報告されたくないことを報告し、人々が言われたくない話をするのがジャーナリストの仕事」であり、ビットコイン問題はそれに値すると主張する。
またブルームバーグは、その後各紙の記者が中本氏の自宅に押し寄せた際、中本氏は一人だけと一緒に食事をすると宣言し、「高くつく」と言った、と報じている。AP通信の記者が選ばれ、2人は寿司屋に寄った後、AP通信支社に消えて行ったとのことだ。ブルームバーグは、ニューズウイーク誌の記事の信ぴょう性に疑問が強い論調である。