マニフェスト大賞
市民こそ“変えたい”想いの発信者に~マニフェスト大賞第15年目に思う (2020/8/21 第15回マニフェスト大賞実行委員/松戸市議会議員 山中啓之)
こんにちは。第15回マニフェスト大賞の実行委員を務めております千葉県松戸市議会議員の山中啓之です。
節目となる第15回マニフェスト大賞
マニフェスト大賞が創設されてから早15年。自らの議員活動と時期を同じくした第1回の時からつぶさに関わってきた一人として、これまでの時の経過とともにその進化を振り返ってみたい。恒例行事には不易と流行が付き物だが、どうしても後者(流行)に目が奪われがちとなる。私はどちらかというと前者(不易)に注目してきたが、今回、新型コロナウイルスの発生と未だ終息の見えぬ現状で、後者も無視することはできない。また、第10回大会の時(「マニフェスト大賞がもたらした功と罪~過去の10年を振り返り、新たな10年を見据えるために~」)に述べた応募総数や二極化の問題はどこまで解消されたのか、問題意識と共に合わせて考察を試みる。
広がるマニフェスト大賞の使い方
当初と比較すると応募総数が十数倍に増加した本大会は今や日本最大級の政策コンテストである事は論を待たない一方、ここまで巨大化したイベントであるがゆえ、いわゆる“受賞常連組”の発生(それ自体は決して悪い事ではない)や、応募初心者がそのレベルの高さに新規参入が難しそうと錯覚してしまうという課題が付き纏うようになった。無理もない。創設期“前半”の第7回で私が受賞した時の取り組み(個々の議員の賛否態度の公開等)は、今や全国ほとんどの議会でいわば標準装備。トップランナー議会とそうでないところの差は広がりを見せているのも事実だ。
そんな中、マニフェスト大賞には受賞以外の使い方もあることを私は指摘したい。そもそも社会に有益な取り組みを周知してこそ意義がある。例えば授賞式の前日に行われるプレゼン発表会では受賞者自らによりその取り組みの詳細が解説され、議員をはじめとした参加者に多くの実践へのヒントを与えてくれる。
それでもレベルの高さに応募のハードル(本当はそんなもの無いのだが)を感じている人もいるため、数年前から「ノミネート(優秀賞候補)」形式が導入された。これにより、一定の水準以上の取り組みは積極的に評価していこうという本来の主旨がより鮮明になった。実際、昨年の応募総数2,619件から73件の取り組みが選ばれており、これまで以上に応募者に光が当たる数が急に増えた。
このように、受賞までに至らなくとも、ノミネートによる活動モチベーションに繋がる事は大きな進化と言えるだろう。また、それらの取り組みを世の中に知らせる事、知った世の中がそれをきっかけに新たな化学反応を起こして更なる善政競争を展開できるところも醍醐味だ。
特に近年は議員も市民も勉強熱心だと感じ、実行委員として身の引き締まる思いをしている。自らのレベルアップの位置付けでマニフェスト大賞(およびその周辺イベント)の応募や運営に参加しているという議員の声も珍しくない。また市民からも、議員や行政任せにせず自らの参画によって社会を良くしようという数々の行動が起きている。その連動もまた、互いの原動力となっているようである。
広がる取り組みの傾向
また近年の応募・受賞傾向のうち、いくつかは世界の縮図そのものだと私は感じている。(1)多様な応募主体(2)旬な社会課題との連動(3)市民が主役、の3点を挙げる。
(1)多様な応募主体
首長には突出した政策や成果が目立つ一方で、議会では個人よりも会派や議会などの「団体」として組織戦で行政を動かそうとする取り組みが増えている。また、議会の応募主体も委員会や横断的な議連も増えた。数がいれば動きやすくなり展開にも幅が出る。時には選挙管理委員会や議会事務局など、どちらかというと見えにくい行政側や、これまでサポート側と思われてきた側の積極的な取り組みも表面化してきた。
(2)旬な社会課題との連動
マニフェスト大賞は決してどこか特別な世界で起きていることではない。現実社会で起きている様々な課題に対して取り組んだ結果として存在しているのである。時事問題への俊敏な取り組みが多くなってきたことは、それだけ社会的関心がマニフェスト大賞への期待として高まってきた事の表れである。3.11の際に「東日本大震災復興支援賞」が設けられた事が象徴的だが、それ以外にも子どもの貧困や、女性(特に子育て中の主婦)の参画など、SDGsを含む時々の世界情勢と密接している課題への取り組みが多くなった。今15回では新型コロナウイルス感染症に対する取り組みが出るかもしれない。
(3)市民が主役
かつて応募者は議会関係者(首長、議員)が主に想定されていた。そんな時代が今となってはもはや懐かしい。近年では議会や行政とは一味違った民間目線を取り入れた市民の取り組みが顕著である。市民と一口に言っても、その主体は一般社団法人、NPO、任意団体まで様々である。
また、学生の応募はもはや珍しくなく、毎年の受賞式にも制服姿がチラホラ混じる。大人も負けてはいられない。特に市民参加の推進は今後ますます強まるだろう。議会や行政の情報が容易に入手できる環境がある程度具備された状況において、図らずも新型コロナウイルスの影響でオンライン会議等のICT活用が急速に進んだ側面もあり、各種参加ハードルがより低くなり、門戸は全市民により実質的に開放された。
変えたい!ならばまず自分が変わる
このようにマニフェスト大賞はここまで大木に育った。だが、果たして社会はどれだけ良くなっただろうか。マニフェストは明白に事後検証できなければならないが、政治や行政に目をやればより大きな課題が日々増加を続けている。例えば森友・加計問題をはじめとした公文書問題など、政策の内容以前に、客観的にプロセスが検証できない事態が横行している。投票率が低迷する中、民主主義の根幹が問われるようなアンチマニフェスト(注:筆者の造語)的な政策決定が続けば、さらに社会に不安と不信が渦巻くだろう。
「納得できる状態に変えたい!」という普遍的な願いを多くの国民が抱いている。ならば、変えてくれる誰かの登場を待つよりも、自分が変える方が遥かに充実感のある人生を送ることができる。たとえ一人ひとりは小さな一歩だったとしても、多くの人間の意識と行動が変われば社会全体が進むのだから。
この膨大な潜在力は、実はまだ主体的に参加していない市民の中に眠っている。普段の生活を見回せば、本質は身近なところに転がっている。あなたが意識せずに行っている行為が、もしかしたら社会や他の誰かのためになっているかもしれない。積極的に生きる一つの手段として、このマニフェスト大賞への応募を利用してはいかがだろうか。
著者プロフィール
山中啓之(やまなかけいじ)
1979年5月28日生まれ。千葉県松戸市出身。二三ヶ丘幼稚園、横須賀小学校、小金中学校、早稲田大学高等学院(在学中に1年間スコットランドに留学)、早稲田大学政治経済学部卒。サラリーマンを経て、松下政経塾出身。
現在、松戸市議会議員(4期目・無所属)。会派「市民力」代表
特に行財政改革、議会改革、情報公開などに力を入れて取り組む。第7回マニフェスト大賞「優秀コミュニケーション賞」受賞。
松戸市議会議員 山中けいじ ホームページ/ブログ/twitter
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