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50万回のはずが5千回で。優良誤認表示とは? (2016/9/8 企業法務ナビ

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ショップジャパンを運営する会社がダイヤモンドの次に固いとされる物質で加工されたフライパンをTVで販売する際、金属製品で50万回擦っても傷がつかないような表示をしたが実際には5千回で傷がついてしまった。そこで消費者庁は当該表示が優良誤認表示に当たるとして措置命令を行った。それでは優良誤認表示とはそもそも何なのか見ていきたいと思う。

フライパン

事案の概要

ショップジャパンを運営するオークローンマーケティングは商品名「セラフィット」というフライパンを販売する際、「クギを炒めても傷がつかない!」との映像および「たとえ大量のクギを炒めたって傷がつかない」との音声、「耐摩耗テスト50万回クリア!!」との映像および「セラフィットは50万回擦っても傷まないことが証明されました」との音声並びに対象商品で金属製品を用いて調理する映像を表示して販売した。しかし実際には5千回で傷がつき、50万回擦ったのは実際にはナイロン製の調理器具であったという。

そのため消費者庁は当該表示が優良誤認表示にあたるとして、当該表示を行わないよう同社に対し措置命令を行った。

優良誤認表示とは?

優良誤認表示は不当景品類及び不当表示防止法第5条第1号(以下、景表法)に規定されている。その内容は商品やサービスを供給する際、その品質、規格、その他の内容について一般消費者に対して(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものであって不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を言う。簡単に言うと商品の本当の価値、品質を偽って非常に良いものに見せることが禁止されている。

注意すべき点

この規定で特に注意すべきなのは、今回のような故意の場合のみならず過失によってこのような表示をした場合にもこの規定は適用されるということである。

なお景表法7条2項は内閣総理大臣が優良誤認表示に該当するかを判断するに当たり、当該事業者に対してその表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとしている。この資料の提出を企業が行わない場合、当該表示は優良誤認表示と「みなされる」ことになっている。「みなされる」とはつまり、裁判等でこれは優良誤認表示ではないと争うことはできないという意味であり、このような求めがあった場合は対応を誤らないよう注意しなければならない。

また課徴金納付命令でも内閣総理大臣は資料の提出を求めることができるが、この求めに応じなかった場合、当該表示は優良誤認表示と「推定される」ことになっている。「推定される」は「みなされる」とは異なり、後に優良誤認表示ではないと争うことが可能である。

もっとも裁判で争うのはコストがかかるので、この段階では求めに応じた方が無難である。

注目すべき事例

さらに次のような場合にも措置命令が行われた実績がある。平成28年3月10日、村田園に行われた措置命令では原材料が国産であるとは一切表示がないが、(1)「阿蘇の大地の恵み」との記載、(2)日本の山里を思わせる風景のイラストの記載、(3)「どくだみ・柿の葉・とうきび・はと麦・甜てん茶ちゃ・くま笹・あまちゃづる・はぶ茶 甘かん草ぞう・大豆・田舎麦・桑の葉・枸杞くこ・ウーロン茎・びわの葉・浜茶」といった記載を総合的に見て、「原材料が日本産であるかのように示す表示」と判断された。

措置命令等が出されてしまったら…

また措置命令等がなされてしまい、それに不服がある場合には行政不服審査法第2条、第4条及び第18条第1項の規定に基づき措置命令があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に審査請求をすることができる。これは行政庁に判断の再考を訴える手続きである。

一方で直接、裁判で争うという方法もあり、行政事件訴訟法第11条第1項及び第14条1項の規定に基づき、この処分があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に国(法務大臣)を被告として、措置命令の取り消しの訴えを提起することができる。

コメント

今回のような表示は「金属製品で50万回擦っても傷がつかない」というイメージを消費者に与えるものであることが比較的わかりやすいものであった。はっきりと「金属製品で50万回擦っても傷がつかない」とは表示しなくても全体の表示を総合的に見てそのような印象を抱かせれば、それは優良誤認表示に当たる。一方で村田園のように一見しただけではわからないものもある。

このように優良誤認表示に該当するかの判断は総合的に行われ、その限界を見極めるのはなかなか難しい。そのため担当者の方は消費者庁が措置命令等を行ったケースはもちろん、裁判でその点が争われたケースで特に判断が覆ったものを参考にその限界を探ることが求められる。

提供:企業法務ナビ

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