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【龍馬プロジェクトリレーコラム/若手政治家が考える「まちの課題を解決するために」】

第44回 結婚・妊娠・子育ての希望が叶う社会に向かって~県民の主観的な幸福実感から~ (2014/8/22 鈴木英敬/龍馬プロジェクト首長会 代表)

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「地方から日本を変える」を合言葉に、日本全国の国会議員や地方議員などが超党派で集まった『龍馬プロジェクト』。政治山では、龍馬プロジェクトの思いに賛同した若手議員によるリレーコラムを連載しています。「まちの課題を解決するために」の第8回は、三重県知事で龍馬プロジェクト首長会代表の鈴木英敬氏による「結婚・妊娠・子育ての希望が叶う社会に向かって~県民の主観的な幸福実感から~」をお届けします。

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 三重県は、古来より東西文化の交わるところに位置し、昨年(2013年)1,420万人が訪れた伊勢神宮や、今年世界遺産登録10周年を迎え一層注目を集める熊野古道などの日本有数の聖地を有し、人々を魅了する自然や歴史、文化に恵まれています。また、県民1人あたりの製造品出荷額が日本一であり、2014年3月に発表された日本経済研究センターによる中期予測において2025年までに成長率が最も高い県とされ、日本経済をけん引するポテンシャルを有した地域でもあります。

 さて、先進国では経済的な豊かさを表す指標の1つであるGDP(国内総生産)の上昇が幸福感や生活満足度の向上に必ずしも結びついていない、との指摘があります。このことは日本も三重県も例外ではありません。これからは、経済成長や社会資本の充実だけではなく、人々が個人の幸せや地域や社会の状況をどのように感じているのかなど、内面的なものにもこれまで以上に目を向けた政策が必要です。

 私は、2011年4月三重県知事に36歳で就任して間もなく、「県民力でめざす『幸福実感日本一』の三重」を基本理念とする長期戦略計画を策定しました。日本一幸福を実感することができると胸を張ることができる、新しい三重づくりにみんなで取り組んでいく、という方向性を表現したもので、人々の主観的な実感も重視していきたい、そんな思いも込めています。

 幸せにはさまざまな形があり、感じ方は人それぞれ。この多様で主観的な県民の幸福実感を把握し、県政運営に活用するため、2011年度から県民10,000人を対象とした「みえ県民意識調査」を毎年行っています。

 調査では、県民の幸福感を10点満点で尋ねる質問があります。県民全体の平均値は、3年連続で上昇し、類似の調査を行っている内閣府やいくつかの県と比較すると最も高い値になっています。また、「幸福感を判断するために最も重視した項目」は、国や他県の調査では「健康」や「収入」が1位でしたが、わが県は3回連続して「家族」でした。さらに詳細に分析すると、幸福感は既婚者が未婚者よりも高く、既婚者では子どもがいる層の方がいない層よりも高い傾向が見られるなど、結婚や子どもを持つことと幸福実感には密接な関連があることが明らかになってきました。

 未婚化、晩婚化が進んでいる一方、9割を超える20歳代未婚者が「いずれ結婚するつもり」と回答していますし、理想の子どもの数が2.5人に対し実際の子どもの数は1.6人にとどまるなど、人生のさまざまな場面において、理想と現実にはギャップが生じており、さまざまな事情により希望が叶わない現実があります。ナポレオンの名言に「リーダーは希望を配る人である」とあるように、希望が叶う状況を作り出すことが、政治の、リーダーの最も重要な使命であると強く感じ、改めてその対策に取り組む決意をしました。三重県という地は希望が叶う場所なんだ、ということが認知されていけば、県内外の住民から「選ばれる地域」になるとも考えています。

 2013年7月に私を本部長とする三重県少子化対策総合推進本部を設置するとともに、少子化対策を2014年度の最重点テーマとして位置づけました。少子化対策における政策的経費は対前年度88.2%増とし、思い切った選択と集中でメリハリをつけた予算編成を行いました。全国初の男性不妊治療への助成、フィンランドで家族支援の核となっている「ネウボラ」を参考に、すべての家族を予防的に継続的に支援する事業、マタニティおよびパタニティハラスメント(女性、男性への出産、育児についての嫌がらせ)に対する啓発、企業の取り組みを「見える化」するための企業子宝率調査などを盛り込みました。

内閣府「少子化危機突破タスクフォース」会議風景

内閣府「少子化危機突破タスクフォース」会議風景

 私は、委員として参画している内閣府「少子化危機突破タスクフォース」において、少子化対策は全国一律の対策だけでは不十分で、「地方目線」の少子化対策が必要、と主張してきました。そして、最初に私が、地方の実情に応じて創意工夫できる基金の創設を発案させていただき、その思いは多くの知事の賛同を得られ、全国知事会としても全面的に動いてくれました。なんといっても森まさこ少子化担当大臣の強いリーダーシップにより、国では「地域少子化対策強化交付金」という形で財源30億円が確保されました。

 国、地方における少子化対策に関する機運は着実に広がっています。7月の全国知事会議では「少子化非常事態宣言」を採択し、少子化対策を国家的課題と位置づけ、未来の姿を変えていくことは私たちに課せられた使命であると認識を共有しました。

 少子化対策においては、価値観を押し付けず希望が叶うことを重視すること、家族はさまざまなので、きめ細かに配慮することをしっかり気を付けなければならないものの、今取り組まないと本当に手遅れになってしまうという危機感も同時に持つことが必要です。三重県も、さまざまな取り組みを通じて、県民の皆さんの幸福実感が高まってほしい、そう願っています。

鈴木英敬氏著者プロフィール
鈴木 英敬(すずき えいけい) 三重県知事
昭和49年8月15日生まれ(40歳)。兵庫県出身(本籍地は三重県菰野町)。東京大学経済学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。第一次安倍政権時は官邸スタッフ。2011年4月に三重県知事に最年少(現在も)の36歳で当選。現在、内閣府の少子化危機突破タスクフォース委員であり、自らも育休を取得し、他県の知事と子育て同盟を創設。また2014年3月から世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーズ メンバー。
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