第61回 今、議会がおもしろい~議会での多様な条例づくり~  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第61回 今、議会がおもしろい~議会での多様な条例づくり~ (2013/11/20 京都府議会議員 上村崇氏/LM推進地議連会員)

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政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第61回は、京都府議会議員の上村崇氏による『今、議会がおもしろい~議会での多様な条例づくり~』をお届けします。

◇      ◇      ◇

 平成24年(2012年)12月26日、京都府議会と京都市会のそれぞれ12月定例会の最終日に、それぞれ名称も内容も違うが、京都府民、市民にとって大切な条例が議決され、成立しました。

 京都府議会においては、「京都府歯と口の健康づくり推進条例」で、これは、平成23年(2011年)8月に「歯科口腔保健の推進に関する法律」(歯科口腔保健法)が制定され、それを前後して、都道府県や市町村の多くの自治体においても歯と口の健康に関するさまざまな条例が制定されている流れとも一致します。

 決して他の都道府県議会に先駆けてというものではありませんが、それこそ議員提案条例として、京都府議会では議会運営委員会理事会での各会派の合意を経てから、各会派から代表者を集めた政策調整会議での10回にも及ぶ議論の後、成立しました。

 途中に歯科口腔保健に携わっておられる社団法人京都府歯科医師会、社団法人京都府歯科衛生士会、社団法人京都府歯科技工士会、京都府立医科大学の皆様から、府の歯科口腔保健の現状や課題等に関する意見をお伺いし、条例の立案の参考にするとともに、平成24年10月には、条例に規定する項目及びその内容を「京都府歯と口の健康づくり推進条例案要綱(中間案)」として取りまとめ、府民の皆さんにパブリックコメントを募集しました。185件にも上るご意見をちょうだいし、最終案の取りまとめとなりました。

 条例ですから、堅く難しいものというイメージが先行しますが、条例としての最低限のルールは守りながら、できる限り分かりやすいものになるように心掛けるとともに、京都府が実施する施策について、その対象となる方のライフステージに区分して定めるなど、条例の構成についても分かりやすいものになるように心掛けたものになっています。

京都府議会議員 上村崇氏

京都府議会議員 上村崇氏

 京都市会においては、「京都市清酒の普及の促進に関する条例」で、全国的には「乾杯条例」として有名になったのではないでしょうか。京都市内には、「兵庫の灘」「広島の西条」と並んで、「京の伏見」という昔から日本酒の製造が盛んな地域があります。

 しかし、近年お酒の多様化が進んだり、若者の日本酒離れなどと言われる中で、決して出荷量や経営も安定したものではなく、厳しいものになっていました。その傾向は特に中小の酒蔵で顕著で、それぞれの酒蔵ごとに特色ある清酒を造っているのですが、その良さを知ってもらうことすら厳しい状況でした。

 そのような中、伏見の酒造組合さんから京都市会へ、日本酒の振興を図るような条例が作れないかという相談からのスタートであったと仄聞(そくぶん)しています。その間、「1つの産業や物産の振興条例を作ると、京都には多くの伝統工芸品などがあって難しいのではないか」「人の趣向に係るものまで条例で規定するのはどうか」などなど、かなりの議論が巻き起こったそうです。(この辺の詳しい内容については、LM地議連に所属する京都市会議員にお聞きください。おもしろいですよ。)

 最終的には、「本市の伝統産業である清酒による乾杯の習慣を広めることにより、清酒の普及を通した日本文化への理解の促進に寄与することを目的とする。」と第1条に規定されましたが、第2条以下には、「乾杯」と言う文字を除いた修正案で全会一致での成立でした。

 同じ日に、それぞれの議会で、ある意味正反対のような条例が出来ましたが、成立することによってそれぞれの行政はしっかりとこの条例を踏まえた取り組みを進めるようになります。

 京都府では、歯と口の健康づくりに関する計画の策定を行い、特にライフステージごとの取り組みでは、障がい者や介護を必要とする方などが具体的に明記されるなど、いい意味での議会主導で行政計画に中身を盛り込ませることに成功しています。

 京都市では、12月に条例を議決したのがミソで、1月の新年会シーズンでは、京都市内のホテルでの宴会では、そこかしこで、日本酒で「乾杯」の声が響きました。また、全国からお越しの特に議会関係者は、「日本酒で乾杯ですよね」とわざわざ言っていただけるぐらいに知名度が上がっています。

 京都府と京都市、都道府県と政令指定都市、それぞれに思いはありますが、そこにある議会には、多様な議論が息づき、地域の実態に少しでも即した取り組みを行おうと必死です。

 それは、11月1日に開催したマニフェスト大賞でも、受賞された各議会での取り組みが千差万別だったことと同じです。

 ローカルマニフェスト地方議員連盟に参加する議員たちは、各地でその先頭を走れるようにこれからも日々研鑽(さん)していきます。応援よろしくお願いします。

著者プロフィール
上村 崇(かみむら たかし):京都府議会議員。民主党所属。1972年6月1日、京都府京田辺市生まれ。1999年京田辺市議会議員に初当選し、2003年に京都府議会議員に初当選(現在3期目)。ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟共同代表。NPO活動を通じ、地域からの自発的な協働の動きにも取組んでいる。
HP:京都府議会議員 上村たかし
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