【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校特別講座「衆議院議員選挙2012特集」】
Part3 各党マニフェスト検証(2012/12/06 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。12月16日に実施される衆議院議員選挙までは、「マニフェスト学校特別講座『衆議院議員選挙2012特集』」を短期集中掲載。第3回の今回は、各党のマニフェストを検証。なぜ、各党のマニフェストが十分に詰められていないのか。その背景を取り上げます。
関連ページ:特集:衆議院議員選挙2012
◇ ◇ ◇
衆院選が公示され、各党の政権公約(以下、マニフェスト)が出そろった。当研究所では、マニフェスト作成に必要な要件と考える項目=(1)理念・ビジョン、(2)政策の体系性・一貫性・独自性、(3)政策の具体性・実現可能性、(4)国民起点度について=に基づき、検証を行った。その指標に照らし合わせると、民主党マニフェストは64.50点、自由民主党は59.50点、日本維新の会は50.50点となった(詳細については当研究所ホームページをご覧いただきたい)。
後退したマニフェスト
今回の総選挙で各党が作成したマニフェストは、数値目標も行程表もほとんど盛り込まれないものが目立ち、解散が決まってから「慌ててつくった感」がある。
ところで、少々さかのぼってみよう。日本維新の会が発表した「維新八策」に対して、自民党は「まだスローガンに過ぎず政策ではない」「政策として熟成されていない」と発言した(2012年12月3日、時事ドットコム)。2012年2月には、民主党の野田総理も、大阪維新の会が出した維新八策について、「一応目を通す程度の内容だ」という意味合いの答弁をしている。
これは各党が、維新八策について「具体性に欠け、内容が煮詰まっていない」と批判していることを意味している。しかし今回、自らの政党が出したマニフェストも具体性に欠けており、政策の中身が国民へ分かりにくいのも事実だ。これはどういうことなのだろうか。
公約が十分に詰まっていない背景には、政策をじっくりと調査研究する組織(シンクタンク)を、政党が持っていないことが原因の1つと考える。実はこの表現は適切ではなく、かつては民主党も「プラトン」というシンクタンクを持ち、自民党にも「シンクタンク2005・日本」というシンクタンクがあった。現在は、双方とも解散し、政策を考える場所がなくなってしまったのが現状である。政策を問わないで、選挙や政権奪取後の国の運営をどのように行えばいいのだろうか。
有権者は何を基準に投票先を選ぶべきか
今回の選挙で、各党が掲げているマニフェストは具体性に欠け、政策の中身や実現可能性が分かりにくいものとなってしまっている。有権者は、何を考慮して投票先を選択すればよいのだろうか。また政党は、政策の作成に力を入れないのであれば、政策以外の「何」を国民に訴えようとしているのか。
16日の投票日までには、まだ少なからず時間がある。各党は現行マニフェストを補足する説明責任を果たし、有権者が納得できるよう、努力をお願いしたい。また有権者も、新聞やテレビなどで分かりやすく各党の政策の違いを検証してくれているため、こうした情報を自ら入手し、投票へ生かしてほしい。
政治家や政党をいくら批判したところで、どこかの政党が政権を握り、誰かが総理になる。政策の失敗の「つけ」を負い、最後に痛い目を見るのはわれわれ国民である(もちろん負担ばかりでなく、利益も享受できるが)。どの政党が自分の考えに近いかを読み比べて、投票所へ必ず足を運んでいただきたい。
- 関連ページ
- 特集:衆議院議員選挙2012