【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校特別講座「衆議院議員選挙2012特集」】
Part1 民主党政権を検証する(2012/11/22 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。今週から12月16日に実施される衆議院議員選挙に向けて、「マニフェスト学校特別講座『衆議院議員選挙2012特集』」を開講いたします。
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2009年総選挙において歴史的な政権交代を実現した民主党。マニフェストにこの先4年間に取り組む政策を掲げ、政権奪取した。政権を担ってきた3年2カ月、民主党がどのような政権運営をしてきたか、「マニフェスト運営の視点」で見てみよう。
マニフェスト運営の“視点”とは、PLAN(計画)~DO(実行)~CHECK(確認)~ACTION(改善して実行)のサイクル(以下、PDCAサイクル)をどのように回してきたか、という視点のことをいう。マニフェストは、これまでの公約に比べ政策の内容を具体的に明記することから、事後検証が可能となる特徴がある。目標実現に向け、どのように取り組んできたか──。以下で検証する。
1.PLAN(計画)
2009年総選挙時の民主党マニフェストには、「目指すべき国家像がなかった」点が最も問題視される。「民主党が目指すのは、このような日本です。政権を担ったら、このような政策を実施します。具体的にはこうです……」というように体系立ててマニフェストは作成されるべきであったが、当時のマニフェストには「政権交代」が最大視されており、「ありたい国家像」が示されていなかった。そのため、政権奪取後の党内の混乱は「党員が1つになれる目標がなかった」ことも要因であると考えることができる。また、政策実現のための財源根拠や実行体制、工程表などが不明確であった。
2.DO(実行)
政権奪取後、マニフェストを実現するためには、「計画表の作成」と「組織編成」に着手することが肝要である。政権担当直後に国家戦略室を設け、それを行うはずであったが、作成までは至らなかった。結局、党内での合意なく(計画表がなく)各省庁が個々に事業を実施したため、行き詰ってしまったと考えられる。課題が明らかかになった後も、全体計画を作成しないまま進めてしまっていた。
3.CHECK(確認)
党内にマニフェスト検証委員会を設置し、2011年6月9日を皮切りに計9回の委員会検証を開催。同年8月26日に、それらをとりまとめた中間検証の報告が発表された。2010年の参院選時には党代表が交代し、前年の総選挙時とは違うマニフェストが発表された。このことを考えると、政権奪取後、直ちに課題発見があったにもかかわらず、検証を行うことなく2010年参院選で新たなマニフェストが出てきたことは、検証時期が遅かったと指摘せざるを得ない。
4.ACTION(改善して実行)
課題発見が早期にあったにもかかわらず検証時期が遅れたことは、その後の政策実現や政策の修正を難しくした。中でも、マニフェストに当初記載されていなかった消費税の増税に関する国民への説明は、丁寧に時間をかけて行われるべきであった。
2011年3月11日に発災した東日本大震災により、政策の優先度を大きく見直さなければならないという事態が発生したが、この場合でも政策優先度とその内容について国民へ丁寧に説明した後に実施されるべきであった。
総括
上記の通り、民主党の政権運営には非常に厳しい指摘ばかりが目立つが、民主党がわが国にもたらした功績もある。
1.「“お願い”から“約束”へ」と選挙スタイルを変えた
以前の選挙は、いわゆる「地盤・看板・かばん」型の選挙が中心となっていた。そのため候補者が有権者へ「お願いします」と依頼する場面が多々あった。候補者が土下座するというシーンは、その象徴である。こうした「情実型選挙」から、候補者が政策を示して有権者が政策を比較して判断する「約束型選挙」へ選挙のあり方を変えたことは、国政史上大きな転換点となった。
2.世論やメディアの視点を変えた
民主党は政権奪取後、世論やメディアから批判を浴びてきた。しかし、その批判の内容は「マニフェスト違反」や「マニフェスト未着手」などが大半である。すなわち、選挙時に約束したマニフェストが起点となって、国政を見る目が国民に備わってきたことがうかがえる。メディアの報道も、従来の政局報道から政策報道へとシフトしていることも、大きな変化と見て取れる。
3.マニフェストの未達成や政策修正について公式の場で謝罪した
先般、野田総理はマニフェストの進捗状況や当初掲げていなかった政策の実施などについて、国会の答弁で謝罪の言葉を述べた。選挙時に国民と約束したことが果たせたか果たせなかったかは、政権末期に総括・検証を行い、公表する必要がある。民主党政権以前では、選挙時の公約が果たせようが果たせまいが、政党も国民もほとんど関心がなかった。このように、足跡を振り返らずに次へ進むという「政治の悪習」に歯止めをかけたことは大きな成果と言える。
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まもなく総選挙が公示される。民主党に限らず各政党は、民主党の今回の反省点を生かし「目指すべき国家像を明示」し、実現可能な政策立案とその根拠を示したマニフェストを作成して、堂々と説明してほしい。また有権者も、自分の目で各党の政策を読み比べて投票へ行っていただきたい。
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