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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】

第7回マニフェスト大賞の特徴(首長部門)(2012/10/18 早大マニフェスト研究所)

政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。マニフェストをテーマとした連載「マニフェスト学校~政治山出張講座~」では、議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考えていきます。

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第6回マニフェスト大賞(首長部門)を受賞した青森県弘前市の葛西憲之市長(2011年11月の受賞式) 第6回マニフェスト大賞(首長部門)を受賞した青森県弘前市の葛西憲之市長(2011年11月の受賞式)

 第7回マニフェスト大賞の授賞式が11月2日に開催されます。今年の応募総数は1889件にのぼり、過去最多だった昨年をさらに更新しました。年々、応募総数が伸びており、地方自治体ではマニフェストを掲げ、その目標を達成する「目標達成型のマネジメントサイクル」が定着しつつあるように伺えます。今回は、その中の首長部門にスポットを当て、今年のマニフェストについての特徴を検証してみたいと思います。

 今年の首長部門は71件の応募があり(2011年は62件)、10月1日の審査会を経て、その中から5件の優秀賞が選ばれました。いよいよ授賞式当日には、この中から最優秀賞が発表されます。

 今回応募いただいた首長部門の取り組みの特徴は、ひと言で表せば「総合計画との融合」です。マニフェストは「選挙時に候補者が掲げるもの」、総合計画は行政が「まちの全体計画」として作成するものです。それでは、選挙で選ばれたマニフェストと行政がつくった計画とでは、取り組む優先順位として、どちらが高いのでしょうか? どちらも重要ですよね。したがって、総合計画とマニフェストに掲げた政策とをうまく合致させ、新たな計画を作成し直して実施する取り組みが、今年は数多くみられました。

 それでは、今大会で優秀賞を受賞された首長の取り組み内容について見ていきましょう(順不同)。

古川雅典:多治見市長

古川雅典:多治見市長

 市長選挙が行われる年度に総合計画の策定または見直しを行っており、選挙の際に掲げたマニフェストを総合計画に盛り込むことで、マニフェストが総合計画における政策として位置づけられ、実行されるシステムとしている。マニフェストの普及促進においても、市長と地域住民の意見交換の場として13小学校区ごとに地区懇談会を実施している。

尾関健治:関市長

尾関健治:関市長

 マニフェストの主要項目を「市長マニフェスト推進計画」において39項目58事業として具現化している。「市長マニフェスト推進計画」は毎年度、取り組み状況を関市のイメージキャラクターとイメージ図を使用して市民に分かりやすく公表し、進捗管理を行っている。また、「市長マニフェスト推進計画」と関市第4次総合計画との整合を図っていることから、外部評価として総合計画審議会での意見を「市長マニフェスト推進計画」にも反映している。

川勝平太:静岡県知事

 「マニフェストの三段跳びサイクル」を展開している。(1)ホップ:マニフェストの初年度での実施状況の公表、工程表の作成。(2)ステップ:「進行中」施策を盛り込んだ全県民参加型の「総合計画」の中へのマニフェストの発展的継承を行い、その施策の公表と実施。目標と工程表に照らした施策の評価と結果の公表。(3)ジャンプ:総合計画を不測の事態(東日本大震災など)に対応できるように柔軟性を持たせ、年度ごとの重点施策の提示とその説明責任の遂行。という3つのステップを踏みながらマニフェストの発展的実現を進めている。

泉房穂:明石市長

 「弁護士職員一挙5名採用」という地方自治体の質的充実への改革が特徴的。地域主権時代の到来に備え、地方自治体みずからが真の自治を担えるだけの力をつけていこうとする挑戦的な取り組みといえる。「市民への訪問相談」「不祥事対応」「“先駆け条例”へのチャレンジ」「地域主権に向けての改革案づくり」等を弁護士が担っており、マニフェストを実行するための一点突破型モデルの事例。

山本孝二:御船町長

山本孝二:御船町長

 町民、議会、行政の三者で総合計画を作り上げている。御船町総合計画策定町民会議で総合計画の素案づくりを行い、総合計画審議会を経て町長に答申した。議会は、議会基本条例を制定し、総合計画の基本構想、基本計画を議決事件として条例に規定。町長は、総合計画審議会へ諮問し、答申を経て総合計画素案にマニフェストを溶け込ませ議会に上程した。議会は、全員協議会で町民会議の素案を上程前に2回チェックし、議員の提案を行った。町民との合意形成を図るためのマニフェスト意見交換会も開催している。


 以上の5人の中から今年の最優秀賞(首長部門)が選ばれます。読者の皆様も予測してみてください。

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第7回マニフェスト大賞優秀賞を発表いたしました | マニフェスト大賞
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