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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第9回「長野県の議会活動を通して感じる日本再生の不可避の課題」(2012/10/31 長野県議会議員 金子ゆかり/LM推進地議連)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第9回目は、長野県議会議員の金子ゆかり氏による「長野県の議会活動を通して感じる日本再生の不可避の課題」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 「地方の時代」「地方分権」と言いますが、地方の課題と期待を背負うのは国も同じです。国の動向が見えないために地方の改革が進まないという実態は、全国の地方で起きていると思います。地方の元気回復がなってこそ、初めて日本の元気回復となることを思うと、全国津々浦々の地方改革を進められる体制こそ、日本再生の不可避の課題だと思います。

長野県議会の活動の一端を通して見た、地方改革の課題

2012年7月、北アルプス常念岳に登ったときの写真です 2012年7月、北アルプス常念岳に登ったときの写真です

 秋も深まり、冷気の霧が日本アルプスから降りてきて、ふもとから紅葉が始まりました。長野県は標高3000メートル級のアルプスはじめ、浅間山、御岳など、活火山も抱える日本有数の山岳県です。現在、日本全国で課題となっている鹿による被害は、長野県でも農業、林業はもとより、2800メートル以上の高山帯における希少植物の絶滅の危機をあおっています。このため、農水省、林野庁のみならず環境省の積極的な関わりも必要である、と私も県も訴えているところです。そんな長野県の県議会での議会改革の取り組みなどを紹介します。

 長野県は南北約200キロで全国4番目の広さを持ち、当時の知事の合併反対の姿勢と「山と谷の連続」という地域性もあってか、平成において最も合併の進まなかった県となりました。人口では38万人あまりの長野市(中核市)から500人あまりの平谷村まで、市町村数は77で北海道に次いで2番目です。長野県議会は、こうした地域性の中、26の選挙区からの議員58名が選出されています。

コマクサはこの株になるまでに20年ほど必要です。現在、鹿に蹴散らかされるなど被害があり、柵設置などの対策をとって保護しています コマクサはこの株になるまでに20年ほど必要です。現在、鹿に蹴散らかされるなど被害があり、柵設置などの対策をとって保護しています

 議員1人当たりの面積は約234平方キロで全国6位、広い郡下の中心市を挟んで周辺町村が同一選挙区として残った飛び地選挙区が5地区あり、この区数割合は19.2%で全国平均(4.8%)を大きく上回り全国2位。また、1991年以降に順次、合区をして選挙区数を減らしてきてはいるものの、現在もなお、強制合区が4地区、任意合区が6地区あります。また、1票の格差は2.2倍で判例においては適法の範囲にありますが、2011年改選の前に定数削減、議員報酬削減などの世論を受けて、議長の諮問により「選挙区・定数研究会」を立ち上げました。一人区、飛び地の解消なども含めて検討はしたものの、2010年国勢調査の結果や国会の自治法、公職選挙法改正の状況に鑑みて先送りとなった経緯があります。

 そこで、改選後に再び同研究会を立ち上げ、研究を進めてきました。国においては地方自治法の改正により、議会の上限数が撤廃され自由度を増したことは評価できるものの、急激な変化や増員議論は浸透しにくい社会情勢にあります。また、選挙区の単位を「郡市」とするのか「市町村」になるのか、国会では民主党案、自民党案があるものの、結論を得るには至りませんでした。

 長野県では削減数によっては、1票の格差が拡大します。また、公職選挙法が仮に「選挙区は市町村の区域とする」となった場合には、飛び地をはじめとして、長野県では大きな選挙区変更となることが予想されます。結局、今回の研究会でも結論は先送りとなりました。改選時の信濃毎日新聞調査によると、定数削減を公約して当選した議員が28人いたにもかかわらず、結果が出ないという不甲斐なさを感じますが、同時に国会との連動の必要性、あるいは国会の壁、という課題を残しています。

長野県議会議員 金子ゆかり氏 長野県議会議員 金子ゆかり氏

 次に、長野県議会内では「議会改革調査会」も、議長諮問の任意の会として各派から議員を出して活動しています。2011年の改選直前の2月定例会最終日に東日本大震災が発生し、県内の栄村も多大な被害を受けました。そのときの議会対応への反省から、まず通年議会を検討しました。多大な金額の災害関連補正予算が専決処分で執行されるという問題点を指摘する自治体もありましたが、災害時における課題解決とは必ずしもリンクしないとのことから通年議会は一時棚上げし、現在は調査会として訪問調査をした結果、東日本大震災発生時の「岩手県議会議員連絡本部」を参考にして「災害時連絡本部設置要綱」を策定することになりました。執行部の災害対策本部の支障とならないよう議会との伝達を一本化し、情報と執行部への要望の一元化を図るものです。

 今後の課題は、決算特別委員会のあり方についてなどがあり、議会改革につながることを期待しています。

 また、長野県議会には28個の議員連盟があり、それぞれ活動をしています。その中の「がん征圧議員連盟」では、「がん対策推進条例(仮称)制定検討調査会」を立ち上げ、議員提案により条例制定をすべく現在、条文の作成を進めています。全国で一番、がんによる死亡率が低い長野県ですが、その長野県のがん対策をいかに特徴づけるか、県土が広く人口の分散した10圏域(2次医療圏)で、いかに「いつでも、どこでも等しく」がん医療を受けられる体制にするかなど、条文を吟味しています。

がん対策推進条例(仮称)制定検討調査会の様子 がん対策推進条例(仮称)制定検討調査会の様子

 2007年に国のがん対策基本法が施行されましたが、地域がん連携拠点病院の指定要件を満たせないが、地域での期待を負う中心的病院を県独自の基準で準ずる病院としての指定をすべきか否かなど、厚生労働省の今後の方針を注視しながら検討を進めています。2013年度中には上程し、可決されれば長野県の議員提案条例としては5例目、がん対策の条例の制定としては全国21例目となる予定です。

以上、長野県議会での改革の一部をご紹介してきましたが、例えば地方のことでありながら、公職選挙法改正の動向が定まらないと選挙区・定数の改正が足踏みとなり、厚労省の方針が見えないと県条例への書き込みにためらいが生まれる。地方の課題が「国の決定を待たないと進まない」という現状を実感します。地方の元気回復がなってこそ、初めて日本が回復する――。地方改革を進められる体制こそ、日本再生への不可避だと痛感しています。

著者プロフィール
金子ゆかり(かねこ・ゆかり)長野県議会議員:1958年8月28日長野県諏訪市生まれ。1981年慶応義塾大学法学部政治学科卒。2005年早稲田大学院公共経営研究科修了。ローカルマニフェスト推進地方議員連盟運営委員。現在、長野県議会 農政林務委員会委員長。地方に軸足を置く政党の枠にはまらない会派「県政ながの」を立ち上げ、現在同会派の政務調査会長、長野県議会「がん対策推進条例(仮称)制定検討調査会」幹事長、長野県議会 議会改革調査会委員ほかを務める。
HP:金子ゆかり公式ホームページ
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