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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第7回「市民の声を基本条例に~那覇市議会改革の今」(2012/10/17 那覇市議会議員 前泊美紀/LM推進地議連)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第7回目は、那覇市議会議員の前泊美紀氏による「市民の声を基本条例に~那覇市議会改革の今」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 「議員は地域のことを何にもわかっちゃいない!」――会場に怒号が響く。これは、沖縄県那覇市議会が議会基本条例制定に向けて開いたタウンミーティングでの一場面。「さまざまな要望もあろうかと思いますが、本日は『市民と議会の関係』にしぼってご意見を」。場を取り仕切る議員の制止を振り切るように、来場した市民からは地域の要望、質問が相次いだ。

 沖縄の県都、那覇市は人口約32万人。議員定数40の構成は、7つの会派と無所属が1人。基地問題を抱えるがゆえに、保革の対立構造が強い政治風土を持つ沖縄にあって、那覇市議会では、政党とリンクする形での会派色が濃く、本来は地方議会には薄いはずの「与野党」意識が根強い。さらに、会派間の壁も高く、議員間討論は不十分。このような中、「自由な立場で是々非々の議員活動をしたい」と無所属を選んだ私だが、任期当初からの1人無所属は前例がなく、議会も事務局も扱いに戸惑っていた。

タウンミーティングを実施

那覇市議会タウンミーティング(2012年8月22日、牧志駅前ほしぞら公民館にて) 那覇市議会タウンミーティング(2012年8月22日、牧志駅前ほしぞら公民館にて)

 そんな那覇市議会が変化を見せ始めたのは、2011年のこと。那覇市が2013年に中核市へ移行する予定であることを機に、「議会も機能強化を」と、議会改革に乗り出した。まず、議員自ら積極的にまちに出て市民と意見を交わそうと、公共交通と交通政策に関する調査特別委員会が市内6地域を回りフォーラムを開催。中核市移行に関する調査特別委員会の舵取りで、2012年12月をめどにした議会基本条例制定へのスケジュールが組まれた。その中で那覇市議会がこだわったのが、条例制定過程における「市民参加」であり、その目玉がタウンミーティングの開催だった。

 市民の声を議会改革に反映させようと企画されたタウンミーティングは、7月から8月にかけ市内4地域で開かれた。中核市特別委のメンバー13人が、市議会の役割と仕組み、議会改革の取り組みを説明、4月に実施した市議会に関する市民アンケート調査(無作為抽出で3,000人へ発送、16.2%の486人が回答)の結果を報告し、会場からの質問・意見に応じた。市民の議会に対する関心はどのくらいあるのか、人は集まるのかとの心配をよそに、来場者は各会場とも100人をゆうに超え、多いところでは160人余りが詰めかけた。

「市民参加」で変わり始めた那覇市議会

 この4回にわたるタウンミーティングの成果は、大きく2つあったように思う。1つは、議会と市民の距離がぐっと近づいたこと。冒頭のように市民の不満も噴出したが、「もっと市民との意見交換の場を設けてほしい」との要望は多かった。このニーズは、市民アンケート調査からも明らかだった。最初は、市民の発言に緊張気味だった議員も、回を重ねると、「その話、もっと詳しく聞かせてください」と身を乗り出すシーンもしばしば。さっそく9月定例会での質問に取り入れる議員もいた。また、この取り組みは、基本条例(素案)に明記されている「毎年の議会報告会開催」の予行演習となり、実行への布石となったのではないか。

那覇市議会議員 前泊美紀氏 那覇市議会議員 前泊美紀氏

 もう1つの成果は、会派間の壁がぐっと低くなったこと。当初、議員紹介や発言の中で「○○党の△△です」との表現が目立っていたが、最終回には政党名を強調することはなくなっていた。加えて、これもその成果だろうか。時を同じくして、各派代表者会議を傍聴していると、以前は会派ごとの賛否のみの表明だったのが、会派内の検討経緯まで報告するようになり、「話し合い」らしくなってきた。

 那覇市議会は変わり始めた。9月末には全員協議会で議会基本条例の素案について協議がなされ、今後は10月中旬をめどにパブリックコメントを実施、予定どおり12月の条例制定に向けて進行中である。その中で、私が求めてきた議員個々の意見の反映と、1人無所属の発言権の獲得のための全員協議会の設置が条例制定過程に組み込まれて実現し、要望してきた公正・透明な議長選挙のための立候補制と所信表明会の開催は、次回からの実施(改選後ではあるが)の方向で動いている。肝心の「1人無所属の平等な権利の保障」については、理解いただくまでまだまだ時間がかかりそうだが、空気は着実に変わってきている。

 議会が変われば、市民との関係が変わる。市民と議会がともに歩めば、足腰の強い政治ができる。地方議会の小さな積み重ねが、確実に政治を変えていく。それを信じて、すべての同志とともに、一歩一歩進んでいきたい。

著者プロフィール
前泊美紀(まえどまり・みき):1972年那覇市生まれ。琉球大学大学院(刑法専攻)修了。地元ケーブルテレビニュースキャスターを経て、2009年8月より那覇市議会議員(無所属)。1期目。ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟運営委員。
HP:那覇市議会議員 前泊美紀 official HP - 前向きにマエミキ!
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