大阪都構想は地方政治をどう変えるか 22、23日に議員研修会開催(2012/04/24 政治山)
大阪都構想や地方制度の変更で自治や議会がどう変わるかを議論する議員研修会「マニフェスト大賞2012キックオフ・ミーティング in 横浜〜激論!大阪都構想とこれからの自治、議会のあり方〜」が22、23日の2日間、横浜市内で開催された。
橋下徹大阪市長が提唱する大阪都構想で注目された大都市制度について早大大学院教授の北川正恭氏、総務省自治行政局の新田一郎氏などによる講演やパネルディスカッションが行われ、活発な議論が交わされた。
1日目 都構想、自治と議会をテーマに
横浜市議会で行われた会の1日目。会場には地方議員を中心に約90名の聴衆が集まった。
会ではまず新田氏から「これからの大都市制度と市町村自治〜大阪都構想から考える大都市制度の課題と市町村の今後〜」というテーマで講演が行われた。
新田氏は同省自治行政局行政課の行政企画官・大都市制度専門官で、現在は大阪都構想の情報収集や検証などを行っている。こうした立場から、橋下氏の提唱する都構想と大都市制度について解説を行った。
新田氏は「大阪都構想は大阪だけの問題だと思われている」と述べ、維新の動きに反応して作成された各党の法案について説明。
法案が適用範囲の広い「一般法」として作られていること、また法案にある対象自治体の規模を見ると、人口規模の大きい市を抱えている都道府県では都構想を導入することができるとし、都構想は実は「全国的な問題である」と指摘した。
その後は、東京都の都区制度や大都市制度を巡る国の議論を紹介。都道府県と政令指定都市の権限争いは「昭和20年代からあり、同じ議論を繰り返している」とした。
会場からの質疑で、都構想の弱点を問われた新田氏は、財源の問題を挙げ、自治体の運用について「橋下氏は『まわる』というが、うまくまわらないのでは」と懸念を示した。また、都構想では府市間の問題に限定されており、国に対して権限、財源の移譲や規制緩和の議論が少ないことも付け加えた。
その後、山梨学院大教授・江藤俊昭氏が「今求められている地方議会、議員〜政策本位の議員だからこそやるべきこと〜」という題で講演を行った。
この中で江藤氏は、議会には地方自治法の規定によって様々な課題について議論し、採決によって形にしていく大きな権限が与えられていることについて自覚を促し、議員として議会の役割を改めて問うことを求めた。
最後のプログラムは、江藤氏をコーディネーターに神奈川県議・菅原直敏氏、横浜市議・鈴木太郎氏、藤沢市議・原輝雄氏、東京都議・伊藤悠氏らをパネラーとして「地方議会から考えるこれからの自治」というテーマでパネルディスカッションが開かれた。
政令指定都市である横浜市と同市を抱える県、また神奈川県内の政令指定都市以外の市では最も人口の多い藤沢市、都区制度を導入している東京都といったバックグラウンドの違う議員らが、県と政令市の役割、住民自治に最適の人口規模など大都市制度で取り上げられるテーマについてそれぞれ語った。
江藤氏は、議員には陳情を主とする陳情型議員と政策提案を主とする政策型議員の2つのタイプがあるとし、「地域には議員の役割が陳情だと思っている人もいるが、これからは政策を作れない議員はいらなくなってきている」とした。
菅原氏は、地方分権の時代には政策型議員が求められているとし、多くの議員が政策を議論するようになればいいと語った。
一方で鈴木氏は、「政策提案で終わらず形にしていくことが大事。陳情型と政策型を対立で考えるべきではない。泥臭く地域の課題を政策で解決していくという形で、2つを統合することが必要では」と述べた。
4議員が参加したパネルディスカッション
1日目には約90名が参加した
2日目 北川氏講演、自治体の情報活用、公会計
2日目は場所をローズホテルに移し、北川氏によって「これからの議会、議員とマニフェスト大賞」というテーマで講演が行われた。
北川氏は、これまでの政治が担ってきた「富の分配」という役割が、今の日本では「不利益の分配」に変わったことに触れ、税収の分配がより重要になっていくとした。そうした状況のなか、自治体の予算を議決するのは首長ではなく議会であると強調。議員が地方政治のなかで決定権者として役割を増していく状況において、11月のマニフェスト大賞を有効に活用してほしいと語った。
その後、「新しい自治に向けた、先進事例紹介 〜【豊島区】システム共通基盤を活用した情報共有の取り組み」では、豊島区の情報活用事例が紹介され、また新日本有限責任監査法人からは「公会計から始める 自治体改革」というテーマで、自治体の会計制度に複式簿記を導入する有効性が説明された。
豊島区の先進事例紹介
公会計から始める 自治体改革
関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所