【LM推進地議連連載/地方議員リレーコラム】
「東日本大震災復興支援賞」の優秀賞を受賞したその後~市民と議員が官を動かした~(2012/07/18 奥州市議会議員 佐藤邦夫/LM推進地議連)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載コラムを掲載しています。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信中です。第10回は、奥州市議会議員の佐藤邦夫氏による「「東日本大震災復興支援賞」の優秀賞を受賞したその後~市民と議員が官を動かした~」をお届けします。
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岩手県奥州市議会議員の佐藤邦夫です。
第7回「マニフェスト大賞」の応募が7月2日から始まりました。前回の第6回大賞で私は、「東日本大震災復興支援賞」優秀賞をいただきました。
その活動を簡単に言うと、
1)津波で被災した仮設住宅に住む方々に野菜を届けよう!
2)その活動は1回だけでなく長く、少なくても1年は続けよう。
3)野菜は生産者から無料でいただくのではなく、安くても買い上げて届ける。その方が長続きするため。
4)その資金は内外から義援金として寄付を募ろう。
5)その活動、義援金の使途などホームページで報告しましょう。そのほうが、支援した方々が自分の寄付したお金がどのように使われたか分かるため(見える義援金の使途)。
6)議員として何か支援活動をしたいと思った。
このような趣旨で始め、仲間の会派5人と産地直売所(産直)・生産者組合等の声をかけたところ多くの賛同者があり、早稲田大学大学院公共経営研究科のOBや現役の学生たち、教職員などの協力で50万円ものカンパの義援金を集めていただき、大船渡中学校グランドの仮設住宅138戸に毎月1回、野菜・生花・果物などを届ける支援がスタートしました。この活動が評価され、マニフェスト大賞の優秀賞をいただきました。
マニフェスト大賞受賞後……広がる支援の輪
六本木ヒルズで行われた
第6回マニフェスト大賞授賞式にて
受賞後も、この活動に多くの賛同をいただき、多くの市民、遠く離れた方々や、奥州市や金ヶ崎町も予算を回してくれたのです。その結果、最初は1カ所の仮設138戸の支援でしたが、陸前高田市の仮設も含めて3カ所280戸の仮設に増え、協力してくれる産直も5カ所に増え、それぞれの会員が現地まで配達するボランティアに参加してくれました(奥州市から大船渡まで往復300キロも離れているため、活動は1日がかりです)。
この活動が現地の新聞などに大きく取り上げられたためか、国の東北農政局の担当者が「この事業に使える予算があるので応募しないか」と教えてくれました。応募の結果、「東日本大震災被災地緊急支援事業」に採択され、約570万円の予算が付き、さらにこの支援が広がりました。2012年3月までの短期間の予算だったため、とても忙しく大変でしたが、大船渡市の仮設全戸1,800戸、陸前高田市の仮設と仮設に入らない被災者約50戸の計2,000戸を超える大きな支援になりました。その際、支援の野菜を大船渡市の産直や隣の住田町の産直からも買い上げ、また被災した漁業者の若芽を買い上げたり、できるだけ被災地の支援に心がけました。
その他にも、横浜の麺屋さんから中華めん2,000食、Tシャツ300枚、絵本、辞書といった物資の支援や、奥州市の25歳厄年連の踊り、65歳の同級生35人がゴーヤ・野菜・花等の植栽などのボランティアがあったりするなど、数えきれない支援の輪が広がっています。今月も奥州市で開催される「仙台フィルハーモニー」のコンサートに、大船渡・陸前高田両市の職員とその家族向けに、主催者からチケット100枚の提供を受けました。震災以来、昼夜を問わず市民のために一生懸命仕事をしてくれている職員と家族が、素晴らしい音楽を聞いていただき、少しでも疲れをいやしてほしいという気持ちだと思います。この時の送迎を奥州市で引き受けてくれるなど、官・民・議員が一体となった活動になっています。
東日本大震災のような災害やその他有事の際に議員がどのような行動をすべきか、行政側との役割分担はどのようにするのかは、今後各議会できちんと議論すべきだと考えます。奥州市、大船渡市、陸前高田市の3議会では、災害時や東日本大震災の今後の復旧、復興でお互いに協力していきましょう、と先日初めての会合で話し合いました。
議員・議会の仕事が認められる第一歩が、マニフェスト大賞
今、「議会・議員不要論」が叫ばれています。民主主義の最後の砦の議会に対する不要論は、現職として重く受け止めています。その上で、議会・議員の仕事を再度見直し、「きちんと仕事をする議会・議員」を目指し、議員という仕事が理解され、尊敬されるような社会にしなければならないと、私は考えます。その活動の第一歩が、「マニフェスト大賞」なのです。毎回の受賞者の提案、活動以外にも、全国には素晴らしい活動や提案をしている議員がたくさんいます。北川正恭審査委員長がおっしゃるように、行政側、議員個々、会派やグループなどが市民のための「善政競争」をしながら、「地方から国を変える」。全国の志のある議員諸君の参加を強く希望いたします。
- 著者プロフィール
- 佐藤邦夫(さとう・くにお):1947年生まれ。岩手県奥州市議会議員(現在4期目)。産業経済常任委員会 委員長、ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 元共同代表。旧江刺市議会議員時、「えさし地産地消推進条例」を議員提案で成立させた。
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