第5回政治山調査「都知事選・衆院選に関する<緊急>意識調査」【分析】Part2 (2012/10/31 政治山)
Part2では、石原氏に関する調査結果を紹介していく。今回の辞任・国政転身を都民はどのように評価したのか。これまでの石原氏の実績をどのように評価するか。石原氏支持派と反支持派との意見を聞きながら、13年余りの“石原都政”を見ていくことにしよう。
[関連ページ] 調査概要/【分析】Part1/【分析】Part3
石原氏支持者は、過半が辞任に賛成
今回の石原氏辞任をどう考えるかを聞いたのがグラフ4である。「賛成」は22.9%と、「分からない、関心がない」を除くとトップになった。次に「どちらかというと賛成」が17.1%で続く。賛成派は合わせてちょうど40.0%。反対は26.6%だった。
石原氏への評価を詳しく見るため、この回答を前回の都知事選で石原氏へ投票した人と、石原氏以外に投票した人(「投票していない」「覚えていない」は除く)それぞれで見てみた(Part1のグラフ1参照)。
グラフ4-1は、前回石原氏に投票した人の辞任に対する評価だ。約3割の人が「賛成」とし、「どちらかというと賛成」と合わせると5割を超える。一方、「反対」「どちらかというと反対」はそれぞれ11.5%、16.5%で計28.0%。このグループでは、賛成派が反対派を圧倒する。
一方、前回石原氏に投票しなかった人の回答はグラフ4-2に見ることができる。「賛成」「どちらかというと賛成」は、それぞれ24.4%と15.1%となり、賛成派が39.5%。「反対」「どちらかというと反対」は同様に、19.6%と11.4%で計31.0%である。若干、賛成派が多いが、大きな差にはなっていない。
この辞任の賛否を聞いた設問では、その理由も併せて回答いただいている。実は、「賛成」の中には、「国政で活躍してほしい」というポジティブな賛成と、「辞めてくれてよかった」といったネガティブな賛成の2種類ある。また、「反対」も、任期途中で辞めるのはよくないという意見から、手腕を評価し、都知事を続けてほしいという評価まで、さまざまだった。
今回の政治山調査では、こうした自由記述による回答を多く集めている。以下は、自由記述をもとに、辞任の賛否と石原都政の評価を見ていくことにしよう。
辞任をポジティブに後押しする層が最多
自由記述を詳細に分析してみると前述のように、同じ「辞任に賛成」でもポジティブなものとネガティブなものが混在していることがわかる。「反対」も同様だ。表1は、記述内容を分析し、これらを分類した一覧表だ。ポジ・ネガの判定がつかないものは「その他」に分類した。また、賛成派と反対派で、いわゆる“右傾化”傾向を支持もしくは懸念する意見が多く見られた。このため、こうした意見も含めた表としている。
表中の数字は、意見の総数からそれぞれの意見を割合で見たものだ。ポジティブな賛成が35.9%でもっとも多かった。これは、今回のほかの調査結果とも合致する。次に多かったのは、ネガティブな反対である。内容を見ると、“国政へ転身することへの懸念”と“任期途中で辞めることへの不満”の2種類に分けることができる。
ポジティブな意見の合計は45.8%、ネガティブな意見は計32.4%。ポジティブな意見は石原氏を評価してることを示し、ネガティブな意見はその逆と見ることができる。こうした結果と石原新党への期待の高さから、石原氏の政治的手腕を一定の層が評価していることがわかる。
<表1> n=1498
ポジティブ意見 | ネガティブ意見 | その他 | 右傾化に関する意見 | |
---|---|---|---|---|
賛成、 どちらかというと賛成 |
・国政に出て、日本を引っ張ってほしい。今の日本にはパワーが必要 ・国政で頑張ってほしい ・国政に参加して日本をよくするために仕方がない ・実行力がある ・少々、横暴なところはあるが、リーダーシップを持っている人材が今の日本には必要だから ・この人なら日本を変えられる気がする ・国をどうにかしてほしい ・主張をはっきりするところは評価 ・国政が停滞しているから ・外交に強い日本を希望 |
・考えが偏っているから ・ワンマン的な感じがする ・都政に興味がないならやめたほうがいい ・年齢的にそろそろ交代かと思う ・オリンピックだ、新銀行だの金を使いすぎ ・在任期間が長すぎた ・都政を担っているのではなく、あまりにも国政に偏っていたから ・若い人に任せた方がよい ・お騒がせ発言が多すぎる |
・せめて任期までは続けてほしい。オリンピックの招致も残っているし ・新党立ち上げは賛成だが、危険因子も多分に含んでいる ・本人の希望が一番だから ・政策次第 ・もう少し若ければ |
・極右政党を作ってもらいたい ・中国の侵略に対抗するには石原氏のような信念のある人が必要 ・中国・韓国・北朝鮮には強い外交姿勢が必要 ・愛国心をアピールできる人だから ・護国が必要だから ・対中国で失策だったと思う ・中国に対して強気の行動に出られるのは石原都知事だけ ・外国の言いなりにならず、独立国家として同等に立ち回れるから ・強い日本を望むから ・日本人に誇りと自覚を覚醒してほしい |
35.9% | 13.4% | 10.7% | ||
反対、 どちらかというと反対 |
・もう少しやってほしかった ・都知事の方が能力を発揮できる ・後任に該当する人が思い当たらない ・知事としての任期をまっとうしてほしかった ・他の人に都政を任せられない ・東京でオリンピックを開催してほしいから |
・高齢である ・任期途中で辞めるのは無責任 ・自分勝手、都民をバカにしている ・中途半端で終わった感じがする ・尖閣やオリンピック問題などがあまりにも中途半端に残しすぎる |
・任期途中の突然の退任はいかがなものか ・今ごろ遅い。中国関係が心配 ・選挙にまた税金がかかる ・国政は政党で動いており、個人では動かせない |
・国政レベルでは主張が右寄りすぎる ・右翼政党ができると思うとうんざりする ・対中関係がさらに悪化する ・石原氏が国政に行くと日本がますます右傾化するから ・中韓を刺激する ・危険な臭いがする ・タカ派なので、中国、韓国ともめごとを起こしそうでいや ・国粋主義者だから ・中国関係が心配 |
9.9% | 19.0% | 11.1% |
石原氏の評価を決定づけているものは?
この結果を見るかぎり、石原氏を支持する層が期待するのは、まず強いリーダーシップ。そして、それを背景とした外交的な発言力と成果。この2つが期待の多くの部分を占めているとも言えそうだ。ただこれは、ネガティブな意見を表した層の懸念材料でもあるという一面も持っている。
次ページのPart3で紹介するように、有権者は政治家の「実行力」と「政策」を重視する。そして、政策では特に、「経済政策」を重視している。石原氏は、「実行力」という面では高い評価と期待を受けているが、「景気回復」「デフレ脱却」「雇用問題」といった経済政策が明確ではない。
石原氏を支持する層の多くで、「政策」よりも「実行力」つまり、氏のナショナリズムや強力な政治手法に対する評価・懸念が、そのまま支持・不支持に顕著に反映されていると言うことができるのではないだろうか。
◇ ◇ ◇
Part3では、次期衆議院選挙に向けた意識調査の結果を報告する。支持政党調査と投票意思決定のポイントを聞いたほか、自由記述による求められる政治家・政党像を分析する。