TPP参加へ一定の理解、食の安全は不安視
第13回政治山調査「TPP(環太平洋経済連携協定)に関する意識調査」(2/2) (2013/11/18 政治山)
経済には「いい影響」だが仕事には「悪い影響」、喫緊の課題は「食」の安全
参加の是非に続いて、TPPに参加することで将来どのような影響があるか、「経済」「物価」「食品の安全」「仕事の機会」「賃金・収入」「会社の業績」の項目ごとに尋ねた(グラフ6)。
まずは日本の経済について、およそ6割が「いい影響がある」と答え、物価についても過半数(54.3%)が好意的な回答をしている。一方、仕事の機会や賃金・収入、会社の業績となると6割近くが「悪い影響がある」と答えており、仕事については危機感を抱く人が多いことが分かる。
また、食品の安全については7割以上が「悪い影響がある」と回答。国内における食品偽装やチルド品の常温配送などと、かつての狂牛病(BSE)や冷凍ギョーザ事件など輸入食品による事件の記憶から、食の安全に対する意識は一際高くなっている。
「いい影響」は不動産業や観光業、「悪い影響」は飲食サービスと公務
次に、「物価」「賃金・収入」「食品の安全」について、回答者の業種ごとに見てみた(グラフ6A)。
「物価」について、「(どちらかといえば)いい影響がある」と答えた人が6割を上回ったのは「不動産業、物品賃貸業」(68.8%)、「観光・宿泊業」(66.7%)、「情報通信業」(61.5%)。逆に「飲食サービス業」は6割が「(どちらかといえば)悪い影響がる」と回答している。
「賃金・収入」で「(どちらかといえば)いい影響がある」と答えたのは「観光・宿泊業」66.7%、「不動産業、物品賃貸業」62.6%、「運輸業、郵便業」58.6%、「金融業、保険業」55.1%など。一方「(どちらかといえば)悪い影響がる」と答えた業種では、「公務」の64.1%が最も多く、「卸売業、小売業」が60.2%、「飲食サービス業」と「土木・建設業」が60.0%、「農林水産業」の59.6%と続いた。
「食品の安全」については、すべての業種で6割以上の人が「(どちらかといえば)悪い影響がる」と回答しており、特に「公務」の87.1%が際立つ結果となった。
2011年の調査でも同様の設問に対して35%が「悪い影響がある」と回答しており、TPP(交渉)への参加が検討され始めた時期からの懸案でありながら、一向に不安を解消することができていない現状が明らかとなった(グラフ6B)。
「安価」と「安全」の間で揺れる消費者心理
続いて、TPPへの参加によって影響を受ける可能性のある項目について、それぞれどの程度関心を持っているかを聞いた(グラフ7)。
まず、「日本製品の輸出額が増大すること」については72.1%が「関心がある」と回答。「GDP(国内総生産)が増加すること」の71.5%と同様、景気の浮揚に対して高い関心を示した。
次に物価について、「競争によってコメや肉などの価格が安くなること」が74.8%、「輸入品の価格が安くなること」が73.9%とポジティブな関心を示す一方、「日本の農業・畜産業にダメージを与えること」が74.5%、「安価な商品の流入によってデフレを引き起こすこと」が66・5%、「食料自給率が低下すること」が73.5%とネガティブな関心も示し、微妙な消費者心理を物語っている。
さらに「食品の衛生基準の緩和により食の安全が脅かされること」「医療保険の自由化により国民保険制度が圧迫されること」「混合診療の解禁により医療格差が広がること」への関心も7割を超えており、TPPに参加するまでに解決すべき課題は山積している実態を改めて浮き彫りにする結果となった。
可能になったら4割以上がネットで投票
最後に、政治山調査恒例の「選挙」と「ネット投票」に関する質問について(グラフ8A)。
普段投票に行くかという問いには73.2%が「毎回欠かさず投票に行く」と回答。「投票には行かない」の15.5%を大きく上回った。また、投票がインターネットでもできるようになったらどこで投票するかという問いには、「引き続き投票所に行って投票する」が27.0%、「インターネットを使って投票する」が43.4%、「どちらでもよい」が21.1%となった。
これを普段の投票行動ごとに見てみると、「投票に行く時と行かない時がある」と回答した人のうち「インターネットを使って投票する」が64.3%と「引き続き投票所に行って投票する」の11.1%を大きく上回っている(グラフ8B)。また、「投票には行かない」と答えた人も36.6%は「インターネットを使って投票する」と回答しており、ネット投票が実現すれば低迷する投票率の改善に一定の効果を見込むことができそうだ。
ネット投票については本人確認などの課題も多いが、在外投票や期日前投票、戦略特区などでの段階的な導入も議論されており、投票率の向上や選挙運動・選挙事務の費用削減と効率化のために、さらなる検討を期待したい。
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12月上旬には次回閣僚会合が予定されており、TPP協定交渉は最終局面を迎えている。国内においては、米や麦、牛豚など農産5品目の『関税聖域化』をはじめとして、医療や保険などの分野でも活発な議論が行われているが、海外に目を向けるとタイやフィリピン、中国や台湾もTPPに関心を示しており、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)に向けた大きな流れの中で、どのように「攻めるべきは攻め、守るべきはしっかりと守る」(安倍首相)を実現していくのか。私たちの仕事や暮らしに直結する課題なだけに、政治山としても引き続き注目していきたい。
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