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特集「参議院議員選挙2013」

参議院議員選挙における「政策」の役割とは? (2013/7/1 日本政策学校 北原秀治)

関連ワード : 全国 参院選 

今回の参議院議員選挙から解禁されるネット選挙は、これまでの選挙戦を大きく変えると期待されています。インターネットを使って自身の政策を発信し、これまで政治に関心がなかった層へのアピールができると考えられています。またこうした取り組みが投票率の向上につながるとの期待もあります。ここでは、特集「参議院議員選挙2013」として日本政策学校の北原秀治氏に、参院選と政策の関わり方、そしてそれが有権者の参政意識にどうつながるのかを解説していただきます。

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「政策」は誰のためのものか?

 広義の意味での「政策」とは、社会における多種多様な諸問題を解明し、その対応策を考えることです。また、現存する諸問題を解決するために、制度を変えようとする活動などのことを言います。主に「政策」は、官公庁・地方自治体・シンクタンクが行う活動です。

 しかし実際、身近に感じる意味(狭義の意味)は、「公共体(政府関係)が主体となって行う各々の策」のことでしょう。現代社会においては、政府や政党などの施政(政策を実施すること)上の方針や方策を指すことがほとんどです。今現在、各政党や各候補者のホームページなどでも容易に確認できます。

 では、「政策」とは誰のためのものでしょうか?

 私自身、日本政策学校に在籍し、『未来の選択~僕らの将来は政策でどう変わる?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2013年7月20日発売)という「政策」を分かりやすく解説した書籍の作成に関わってきました。参院選が近づいてきた今、未来を担う若者を中心に、投票率を上げるために、そしてよりよい未来を作るために、もう一度、「政策」というものを見直す必要があるのではないのでしょうか?

投票率を世代間で見る

graph001 1票の格差や投票率の低さは、常に選挙時の話題となります。実際に、総務省のホームページには投票率の変化を示したグラフがいくつかあります。グラフ1は2010年(平成22年)までの参院選の投票率ですが、平成に入って(1989年)から急激に低下しています。

 これを厚生労働省の人口動態と比較してみると、団塊の世代ジュニアである現在40歳前後の現役世代が、選挙権を得てから投票率が下がり続けていることが分かります。つまり、選挙権を得た人口は増えているのに投票率は下がっていくという状況が続いている訳です。

 しかし、これを世代間における投票率に分けてみると、世の中でもっとも元気な、そして日本を背負っていく20代の若者の投票率は、団塊の世代の投票率に比べたら約半分しかありません。これでは、現代社会の諸問題を解決するための「政策」は、若者のためではなく、投票率が高い団塊の世代から高齢者のために決定されることになり、いわゆる“対症療法”の話し合いしかできていないことになります。

「政策」を「見える化」して政治を分かりやすくする

graph002 では、なぜこのような現象が起きているのでしょうか? グラフ2の投票に行かなかった人達の理由から、注目すべき事実が読み取れます。3番目の「適当な候補者も政党もなかったから」から「私1人が投票してもしなくても同じだから」までの(「体調がすぐれないから」は除いた)約半数が、逆から考えれば興味があれば投票するということになります。

 つまり、選挙にとって最重要課題の1つである「政策」が分かりやすく、身近に触れる位置にあれば、興味を引きつけ、1つの道具になるのではないでしょうか? また、この結果を紐解けば、「政策」というものが、実は情報がありふれている現代社会において、分かりにくく、投票の妨げになっているということはないのでしょうか?

 そこで、われわれ日本政策学校は、「政策」を「見える化」し、政治に対する垣根を下げようと考えました。このポジション図は、簡単な「政策」に関する設問に答えることで、自分がどういう考えの位置にいるのかを視覚化することを目的としています。

 さらには、それらの設問は非常に分かりやすい言葉で書かれており、その設問に答える事で、その「政策」についての理解も深まるようにできています。つまり政治の垣根も下げる狙いがあるのです。

政策はネット、スマホ、SNSと一体化するか?

matrix001 『未来の選択~僕らの将来は政策でどう変わる?』に掲載した政策ポジション図は、各政党、各候補者、有識者の考え方がひと目で分かるようにできています。そして、この可視化した政策ポジション図は、書籍だけにとどまらず、ネット環境を利用することにより多くの若者を取り込むことができるでしょう。

 例えば、この政策ポジション図をアプリにしてスマホで見る事ができたらどうでしょう。自分がどの政党、どの候補者と同じ考えだったかを、SNSを通じて拡散することができれば? たちまち情報は共有され、SNS、ツイッター、ブログを通じて一気に広がるでしょう。今まで、選挙ポスターを見て投票していた有権者も、スマホ片手に立候補者の政策を見て投票する事になるでしょう。

 このように、政策を可視化することは、大いなる投票率上昇の可能性を秘めているのです。そして、今後のネット選挙解禁においても、大きく関係してくるでしょう。

将来を担う若者世代は日本の未来をどう見る?

 ただ、「政策を可視化し、垣根を下げたから投票率が上昇しました」だけでは、もちろん許されるものではありません。重要なのは、何度もキーワードとして出てきている「未来」です。日本の人口が減少しているのは、ご存知だと思います。30年後の未来、日本はどうなっているのでしょうか?

 現代に話を戻すと、例えば憲法改正が議論になっています。憲法九条改正案です。領土問題などにおいても、連日煽るマスコミ報道を見ていると、当然、若者達も憲法改正、戦力保持に傾くかもしれません。しかし、何度も言いますが、「政策が未来を作る」を考えた場合、誰がその戦力になるのでしょうか。もし有事が起きたり、徴兵制が施行されたりした場合、どの世代に関係してくるのでしょうか。

世の中をよくするには「政策」を理解し、政治に参加する

 「政策」は30年後の日本の未来を作っていきます。その未来を生きるのは、今現在投票率が最も低い若者です。世の中をよりよくするためには、「政策」を理解すること、そして政治に参加することです。

 「デモクラシー2.0」発起人の田坂広志氏の言葉を借りるならば、情報があふれている時代の転換期であるからこそ、「観客型民主主義」から「参加型民主主義」へと変化していかなければいけません。候補者や政党が発信する「政策」が分かりにくい、また苦手意識があると言うならば、上記のような手法を用いて、理解を深めてもらいたいと思います。今回の参議院議員選挙は、じっくりと「政策」を見てから臨んでみてはいかがでしょう。

(日本政策学校 北原秀治)

[出典]
・『未来の選択~僕らの将来は政策でどう変わる?』(日本政策学校編、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2013年)
・総務省選挙部「目で見る投票率」(2012年)
・厚生労働省人口動態統計(2012年)

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佐藤淳氏北原 秀治(きたはら・しゅうじ)
1974年6月12日生まれ。大阪府出身。東京女子医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。日本政策学校(2期)出身。2008年より東京女子医科大学医学部助教(解剖学・発生生物学講座)。専門は解剖学、組織学、癌研究。「政治と科学こそ融合すべき」を信念に活動中。

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日本政策学校とは、主義主張・政党を超えた自由な議論を通じて多様な民意が反映される「真の民主主義社会」を実現するために推進役となる政治リーダーを育成・輩出する学校です。
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