[福島・新地町]消費者は「広報紙」も参考に (2016/12/12 あんびるえつこ)
この記事は「広報しんち 2016年12月5日号『特集 あの海を取り戻す。』」を紹介し、コメントしたものです。
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このコラムに何を書こうか考えていると、JR常磐線(相馬-浜吉田間)の運転が再開し、福島県新地町の新地駅前の式典には安倍晋三首相が出席したというニュースが、テレビから聞こえてきました。そこで、今回は、報道にあった新地町の広報紙『広報しんち 2016年12月5日号』に注目してみたいと思います。
あの東日本大震災から5年9か月。東京電力福島第一原発周辺となるJR常磐線小高(南相馬市)―竜田(楢葉町)間はまだ不通のままです。しかし、こうした実態や復興の様子が報道されることは、ずいぶん少なくなってきたような気がします。 『広報しんち 2016年12月5日号』には、こうした少なくなった復興への取り組みが詳細に書かれていました。
巻頭の特集「あの海を取り戻す。」では、震災前の海を取り戻すための漁業関係者の取り組みが紹介されていました。現在、福島の漁業は試験操業という形でおこなわれていて、本格操業への目処がたっていません。しかし一方で、漁再開に向け設備は徐々に再建されていること、若い漁師も多く、震災後に漁師になった人もいるなど、希望も見えてきているようです。
とはいえ、消費者として心配なのは放射性物質のこと。風評被害という言葉が盛んに使われていますが、消費者は、「風評被害」が本当に風評なのか、実害なのではないのか…そこが不安で購入を控える傾向にあるのです。ですから、信頼できる検査がされていて、その検査結果が公表されていることが、とても大切なのです。しかし、こうした報道は目に見えて減ってきているのが現状です。
『広報しんち 2016年12月5日号』には、福島県が沿岸部の海域や漁港などの海水・海底土を採取し、放射性物質の分析を行っていて、新地町の漁場では2011年の9月以降は不検出であること。海底土の調査は、福島第一原子力発電所を基準として北側の海域では10Bq未満となる地点も多なっていること。また、試験操業で捕れた魚介類の一部を検査するスクリーニング検査もおこなっていることも書かれていました。なかでも、イカ・タコ類、貝類などは、ほとんどが不検出(下限値10Bq /kg 程度)であることや、検出される魚介類は寿命の長い魚などだということなど、消費者として知っておきたいことが具体的に書かれていました。
報道が少なくなると、消費者の不安は拡大します。こうした不安解消のためにも、地元の広報紙は大いに参考にしたいものです。
- [筆者]「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事 あんびるえつこ
- [参考]広報しんち 2016年12月5日号