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消費税転嫁措置法ガイドライン改正へ (2019/2/8 企業法務ナビ

関連ワード : 法律 消費税 税金 

はじめに

 今年10月からの消費税率引き上げに向け、公正取引委員会は消費税転嫁対策特別措置法ガイドラインの改正を予定しております。これまでの違反例などを踏まえ例示を明確化するとのことです。今回は消費税転嫁措置法の規制を見直していきます。

消費税

消費増税と軽減税率

 今年平成31年10月から消費税率が8%から10%に引き上げられます。しかし低所得者の負担軽減を考慮して一定の食料品や新聞等の生活必需品については税率を8%に据え置かれます。これを軽減税率制度と言います。

 対象品目は生鮮食品や加工食品、新聞などが挙げられます。酒類や外食などは除外されます。ファーストフード等の場合、店舗での飲食は該当しませんがテイクアウト等で持ち帰る場合には対象となります。ケータリングや出張料理も対象となりませんが、有料老人ホームや学校などで提供される場合は対象となります。

消費税転嫁特別措置法による規制

 消費税が上がり購入価格が増加すると消費者の心理としては購入意欲が一般的に低下します。そこで当面、従前の価格に据え置いて販売されることも少なくありません。その際の消費税分負担を事業者自らが負担するのであれば何ら問題は無いのですが、仕入先の取引事業者に値下げを強要するなどといった行為が禁止されます(3条)。

 違反した場合は公取委等により指導や助言、勧告や公表が行われます(4条、6条)。罰則は特に規定されておりませんが勧告に従わなかった場合には独禁法の規定に基づき排除措置命令や課徴金納付命令が課されることがあります(7条、独禁法20条、20条の6)。

規制の具体例

 違反事例の典型例は買いたたきです(3条1号)。たとえば小売店が仕入先からの仕入れ価格を1個108円から消費増税分を上乗せした110円にすべきところを108円に据え置いたり、1個の内容量を変更させたりする行為です。価格を増税に応じて引き上げる場合でも、その見返りとして在庫の買い取りや役務の提供を強要することも禁止されます(同2号)。

 また相手方からの価格交渉を拒む行為(同3号)や、違反行為を公取委等に通報したことの報復として契約を打ち切るなどの不利益行為も禁止されます(同4号)。なおこれらの価格の据え置きや在庫の買い取りについて相手方取引業者が任意に納得した上で行っているのであれば問題となりません。

ガイドラインの追加点

 今回のガイドラインの改定にあたっていくつか違反事例の具体例が追加されます。例えば「10月1日以降◯%値下げ」「10月1日以降◯ポイント付与」といったセールを実施するにあたって、その分の負担を取引先に求める行為です。仕入れ値の値下げだけでなく、協賛金の提供や従業員の派遣なども挙げられております。

 また従来からいわゆる税込価格(内税取引)で価格を定めている場合に、そのことを理由として仕入先からの価格を据え置くことも違反にあたる旨が明確化されております。

コメント

 消費税が増税される場合、一般的に消費者は増税前に駆け込み購入を行い、増税後はしばらく消費が落ち込むと言われております。そのため増税後に値下げセールを行うことも多いと考えられます。その際の負担を仕入先に求めることが禁止されており、当局も繰り返しその点について警鐘を鳴らしております。なお増税は10月1日からですが、納品がその日以降となる場合は予め取引契約をしていても、その契約が4月1日以降であれば規制の対象となります。

 また税込価格で取引している場合には問題とならないと誤解している場合が一般的に多いと言われておりますが、上記のとおりこの場合でもやはり価格を据え置いた場合は違反となります。4月1日からの適用に備え、今のうちから仕入先との価格設定を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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