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医療は危機的状況、良質な医療確保のため「上手に医療にかかる」ことが必要不可欠―厚労省・上手な医療のかかり方広める懇談会 (2018/12/6 メディ・ウォッチ

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 「医師の過重労働」をはじめ、現在、医療は危機的な状況にある。このままでは良質な医療を受けられなくなる可能性があることから、国民が「上手に医療にかかる」必要がある。そのためには、例えば「正しい医療情報を入手できるwebサイトの構築」や「#8000・#7119などの整備と周知」「ターゲットごとの情報伝達」などを進めていくことが重要で、▼国▼民間(企業等)▼医療関係者▼一般国民―がそれぞれ何をしていくべきかをメッセージとして打ち出す―。

 12月6日に開催された「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」(以下、懇談会)では、こういった方向で議論を取りまとめていくことが確認されました。次回会合(12月17日開催予定)で議論の取りまとめを行います。

 さらに、「議論のとりまとめ」内容を、医療関係者や一般国民にどのように伝えていけばよいか、厚生労働省では広報の専門家なども交えて、さらに検討してくことになりそうです。

12月6日に開催された、「第4回 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」

12月6日に開催された、「第4回 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」

「上手な医療のかかり方」を広めるために、国や国民、医療関係者は何をなすべきか

 「医師の働き方改革」に向け、「医師から他職種へのタスク・シフティング」や「時間外労働の上限設定」などが検討されています。ただし、検討の中で、「患者・国民側にも医療のかかり方について、しっかり考えてもらう」ことが必要ではないか、という共通認識も生まれています。

 医師の時間外労働規制を制度的に手当てしたとしても、患者・国民側が「医療機関が空いている夜間や休日に受診しよう」「良く分からないが、とりあえず医療機関にかかろう」などと考えていたのでは、医師は過重労働から永遠に解放されないからです。

 懇談会では、これまでに、国民に「上手な医療のかかり方」を広めるために、例えば▼#8000・#7119などの整備と周知▼正しい医療情報を入手できるwebサイトの構築▼インターネットによる情報伝達には限界があることを踏まえた、「ターゲットを絞った」情報伝達(口コミ等)―などの取り組みを複合的に行っていくことが重要ではないか、という点で共通認識が生まれています。12月6日の懇談会では、こうした共通認識を踏まえた「取りまとめ案」が厚労省から提示されました。

 そこでは、「なぜ上手な医療のかかり方が求められているのか」「国や国民、医療関係者は何をすべきなのか」が整理されています。現状・課題・対応策が体系立てて整理され、非常に理解しやすい内容であることから、整理の仕方そのものに構成員から反対意見は出ませんでした。しかし、「一般国民に伝えるには、言葉が難しすぎる」「国民全体が『我が事』として上手な医療のかかり方を考えられるよう、メッセージ性を強調してはどうか」などといった注文も相次ぎました。

 例えば、厚労省案では▼「どういった状態のときに、どの医療機関へかかるべきかが国民には分かりにくい」という課題の認知と理解 → ▼「#8000等の活用」「正しい情報を入手できるwebサイトからの情報提供」などの取り組みを行う―などの整理がなされています。非常に分かりやすい整理なのですが、デーモン閣下構成員(アーティスト)は「一般国民にとっては、非常に硬い言葉で、伝わりにくい」と指摘。

 また、10月22日の会合でなされた赤星昂己参考人(東京女子医科大学東医療センター救急医)による「救急医療現場の実態」を踏まえ、「医療は危機に瀕しており、このままでは良質な医療を受けられなくなる恐れがある」という点を、データやイラストを交えて強く訴えることが重要との提案も、小室淑恵構成員(ワーク・ライフバランス社代表取締役社長)からなされました。小室構成員は「勤務医は過重労働の中にあり、3.6%もが自殺を考えながら業務にあたっているというデータもある」ことを紹介し、「医療の危機」をメッセージとして強く訴えるよう求めています。

 こうした指摘を踏まえ、渋谷健司座長(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)は、次の2本柱を立て、「平易」かつ「インパクトのある」表現ぶりで、取りまとめ案を作成しなおすよう厚労省当局に要請しました。図表(データ)やイラストなども活用し、よりメッセージ性を打ち出していくべきとの注文も付いています。

(1)現在、我が国の医療は危機的な状況にあり、このままでは良質な医療を受けられなくなる恐れもある。そこで「上手な医療のかかり方」が求められている

(2)「上手な医療のかかり方」を広めるためには、例えば「正しい医療情報を入手できるwebサイトの構築」や「#8000・#7119などの整備と周知」「ターゲットごとの情報伝達」などを進めていくことが重要で、▼国▼民間(企業等)▼医療関係者▼一般国民―がそれぞれ何をすべきかを明確にする

 また、12月6日の懇談会では、一般国民に向けて、▼まず#8000などへ電話する▼医師に聞きたいことはメモ書きしておく▼薬のことは薬剤師に相談する▼抗生物質(抗菌剤)は風邪には効かない▼慢性疾患は日中にかかりつけ医にかかる―という5つの「上手に医療にかかるためのポイント」案も提示されました。

 医療現場の意見なども踏まえた、我々一般国民が「今できること」を整理したものですが、「患者・家族が『より良い医療を受けるため』になすべきこと」(医師への質問事項のメモ書きなど)と、「我が国の医療提供体制を守るためになすべきこと」(日中受診の勧奨など)とが混在しており、「無理のあり整理ではないか」(豊田郁子構成員:患者・家族と医療をつなぐ特定非営利活動法人架け橋理事)、「『薬剤師への相談』を勧めているが、具体的にどの薬剤師に相談すればよいのか不明確である(例えば、街の薬局の薬剤師に、最新の抗がん剤について相談すべきなのか)」(岩永直子構成員:BuzzFeed Japan News Editor(Medical担当))といった疑問も提示されました。

 さらに、岩永構成員は、「上手な医療のかかり方推進は、国や医療関係者、企業、一般国民全体で進めるべきであり、『一般国民向けのポイント』も重要だが、各関係者それぞれへのメッセージを打ち出す方が、より重要ではないか」とも提案。他の構成員もこの提案に賛同しています。

 したがって懇談会では、まず上記(1)(2)の柱に沿った「議論の取りまとめ」を行います。あわせて、(2)の「▼国▼民間(企業等)▼医療関係者▼一般国民―のそれぞれがなすべきこと」の中からポイントを絞り、各主体への「メッセージ」も打ち出していくことになりました。次回会合(12月17日予定)で、「議論の取りまとめ」と「メッセージの設定」を行います。

 もっとも、「取りまとめ」や「メッセージ」で終わらせては、「上手な医療のかかり方」は、一般国民にまではなかなか浸透しません。11月12日の前回会合で佐藤尚之構成員(ツナグ代表取締役)が指摘したように、「ターゲットを絞り、そのターゲットに『伝わる経路』を考え、実行する」ことこそが重要です。厚労省では、佐藤構成員の指摘を重視し、「取りまとめ」や「メッセージ」の内容をいかに「伝えていけばよいか」について、広告の専門家なども交えて、より具体的な検討を行っていく考えも示しています。

提供:メディ・ウォッチ

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