人事のデータ化は職場をギスギスさせるのか、それとも… (2018/7/20 瓦版)
経験や勘で判断する人事は信用できるのか…
人事はブラックボックスとはよくいわれたものだ。頑張っている人が評価されることもあるが、そうでない人も評価されていたりするからだろう。一体どんな基準で査定されているのか。まさか好き嫌いや勘だけで判断? とにかく、何から何まで不透明だから、どうにも信用できない…。
そんな人事部門でも、昨今はテクノロジーを組み合わせたHRテックが広がりをみせている。だが、人の適正をデータで判断することに抵抗のある人はいまだ少なくない。それを反映するように、リクルートマネジメントソリューションズが行った人事のデータ活用実態調査(回答者数1,232人:2017年7月)では、実際に取り組んでいるのは25.1%。4社に1社の割合だ。前向きな企業は59.8%だが、発展途上というのが実状だろう。
同じ調査では、“データ化”への悩ましさが浮き彫りになっている。データ活用における悩み関する質問では、「取り組みの成果・効果がわからない」がトップ。そのうち、取り組んでいない企業では51.7%で、取り組んでいる企業の45.8%を上回った。このことから、人事のデータ化への“壁”が透けてみえる。
人事データ化のメリットとは
実際のところ、データ化によるメリットはあるのか。リクルートマネジメントソリューションズのHat Lab所長・入江崇介氏が解説する。「例えば上司と部下の関係をみるとき、上司への満足度と仕事への満足度を散布図にしてみるだけでも、新たな発見があったりします。経験や勘に頼っていると見過ごしがちな部分を、可視化することで鮮明にあぶりだすことが可能になります。AIといった大げさなものでなく、エクセルレベルでも十分に実践できます」。
経験や勘に頼る良さももちろんある。一方で、そこには無意識のバイアスがかかるという懸念がある。第三者がみて、公平と思える根拠も示しづらい。こうした部分が、人事への不信感を増幅しているとすれば、エビデンスを示すことができるデータ化は企業にとってメリットと言えるだろう。
さらに、データ化が実は人事部門の生産性を上げることにつながると入江氏はいう。「見える化で勘と経験が『実証』されることで、人事業務・施策でPDCAを回せるようになります。根拠が示せるので、経営とのコミュニケーションも円滑になり、意思決定も支援しやすくなります。結果、人事部門の生産性が高まることになります」。
働き方改革の文脈でも、施策をより効果的に推進することが期待される。例えば、長時間労働是正なら、タイムカードでいくら残業チェックをしても、効果は期待できない。それよりも、残業常習者と定時帰宅者の間にどんな差があるのか。そこをデータをもとに「分析」しなければ、本質的な解決策には辿り着けない。
結局、人事のデータ化は職場におけるあいまいさを明確にし、良くも悪くも個々を公平に照らし出す全方位の照明といえるのかもしれない。当然、そこには「影」も映し出される。だが、それは健全な経営という観点でみれば、“ブラックボックス”がもたらした弊害とは比較するまでもない、微々たるものでしかないのではないだろうか。
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