浦和一女に何がおこったのか~2018年埼玉県立高校(学校選択問題採択校)入試概況(3) (2018/6/30 クオリティ埼玉)
平成30年度(2018年春)の埼玉県公立高校入試では、いわゆる「公立離れ」の傾向がみられました。2年目を迎える「学校選択問題」への対応、3年後の大学入試を見据えた準備(大学入試新テスト1期生となるため)、私立高校生への学費軽減策などいくつかの要因が組み合わさっていて、その影響は公立高校それぞれに違った形で表面化しているため、現在中3あるいは中2の保護者にとっては情報の分析が大変難しく感じられることでしょう。
今回は、2年目を迎えた学校選択問題を採用している20校について出願者を確認し、受検生の動向を確認していきます。
浦和一女に何がおこったのか~2018年埼玉県立高校(学校選択問題採択校)入試概況(1)
浦和一女に何がおこったのか~2018年埼玉県立高校(学校選択問題採択校)入試概況(2)
蕨高校に見る「埼玉県立高校の未来」
次に紹介するのは蕨高校です。
資料2 平成30年度 埼玉県公立高校における入学志願者数
偏差値 | 学校選択問題 実施校A |
2018年 志願者数 (1) |
2017年 志願者数 (2) |
2-1 | 2→1 増減率 |
2017→2018 定員増減 |
---|---|---|---|---|---|---|
73 | 浦和 | 504 | 500 | 4 | 0.8% | |
72 | 浦和一女 | 448 | 539 | ▲ 91 | ▲16.9% | 40名定員減 |
71 | 大宮(普通) | 484 | 500 | ▲ 16 | ▲3.2% | 40名定員減 |
69 | 春日部 | 490 | 510 | ▲ 20 | ▲3.9% | 40名定員減 |
69 | 川越 | 508 | 503 | 5 | 1.0% | 40名定員増 |
69 | さいたま市立浦和 | 491 | 407 | 84 | 20.6% | 40名定員増 |
68 | 川越女子 | 549 | 538 | 11 | 2.0% | 40名定員増 |
67 | 蕨(普通) | 392 | 520 | ▲ 128 | ▲24.6% | 40名定員増 |
66 | 不動岡(普通) | 422 | 467 | ▲ 45 | ▲9.6% | |
66 | 所沢北 | 508 | 520 | ▲ 12 | ▲2.3% | |
66 | 越谷北(普通) | 433 | 434 | ▲ 1 | ▲0.2% | 40名定員減 |
グループ総計 | 5,229 | 5,438 | ▲ 209 | ▲3.8% |
(埼玉県教育委員会HPより)
何度も登場する資料2の通り、今春の志願者数はダントツの1人負けとなりました。定員が40名増えたにもかかわらず志願者は128名もの大幅減少で、倍率は1.67→1.10と急落しています。120名の志願者減は、単純に「従来であれば入学してくれた2クラス分の生徒がいない」ことを意味する非常事態で、私立大学難化の影響を大きく受けて2017春卒業生の大学合格実績が低迷したことが原因と思われます。
資料5 蕨高校 主要大学合格実績のべ人数(現浪こみ)
2015春卒 | 2016春卒 | 2017春卒 | 2018春卒 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
早稲田 | 25 | 36 | 23 | 15 | ||
慶應 | 5 | 5 | 6 | 5 | ||
上智 | 12 | 12 | 9 | 11 | ||
明治 | 66 | 92 | 52 | 39 | ||
立教 | 56 | 62 | 48 | 37 | ||
法政 | 73 | 78 | 74 | 51 | ||
東京理科 | 31 | 35 | 16 | 23 | ||
日本 | 118 | 95 | 95 | 89 | ||
東洋 | 137 | 107 | 107 | 116 | ||
国公立 | 91 | 83 | 68 | 88 |
(学校HPより)
今春の受検生にとっての判断材料は2017春卒業生の大学合格実績でしたが、明治大の合格者急減(立教大も)がすべてを物語っています。高止まりしている明治大の人気(特に女子)に逆行する実績推移は、これだけの受検生(保護者)にソッポを向かれる原因としては充分でした。2018春卒業生の合格実績では明治大に限らずMARCH各校の実績が下がっているので、首都圏私立大学難化の傾向が変わらない以上、苦戦はこれからも続くと思われます。朗報は国公立大の実績が回復したことで、2018春卒業生では現役で国公立に81名の合格者を出しており(学校HPより)、数字だけなら浦和一女の現役国公立合格者78名をも上回っているのです。埼玉大26名合格はインパクトがあるので、このレベルの指導が継続的に実施可能なのかどうか説明会に足を運んでみようという御家庭は増えることでしょう。
蕨高校の大学合格実績推移に代表されるように、首都圏私立大学(文系)の大幅難化に伴ってMARCHクラスの合格実績を減らし続けているところは、今年同様志願者数の減少に頭を抱える可能性が高いことが予想されます。埼玉の私立高校の中にはこの状況でも堅実に実績を向上させているところがあるので、明確な国公立大学志望者以外は有名私立大学の合格実績で判断するからです。
埼玉県公立高校は、国公立大学の合格実績を高める路線にシフトするか、あるいはこれまで通りの首都圏私立大学の合格実績競争で私立に勝つかの2択を迫られています。前者の場合は「大学入試新テスト」への対応を中心に、後者の場合も「安易に数学を捨てて私立文系にシフトすると大変である」とう指導を徹底するなど、従来の進学指導の在り方を見直して説明会でアピールしない限り、公立高校どうしの生徒の取り合いだけでなく私立高校との取り合いにも負けてしまうケースは増えてくることでしょう。
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