増える外国人労働者の活用を阻む言葉以外の“壁” (2018/3/7 瓦版)
増加する外国人労働者と受け入れる現場のギャップ
厚生労働省が発表した最新の統計では、外国人労働者の数は127万8670人。過去最高を更新している。深刻な人手不足で“外部人材”の手を借りなければ回らないほど、労働の現場が困っていることの裏返しともいえる。一方で、外国人労働者を受け入れる日本企業の体制はまだまだ不十分という実状もある。
都心のコンビニや飲食店で外国人労働者の接客を受けない日はない。それ位、外国人労働者は日本の職場に浸透している。厚労省の最新データでみても、外国人を雇用する事業者の割合は、東京が27.8%と約3割を占め、2位の愛知(8%)を大きく引き離している。産業別でも、製造業が22.2%で、以下、卸売業、小売業17.1%、宿泊・飲食サービス業14.3%となっており、肌感覚通りの結果となっている。
2015年頃からワーキングホリデーで来日する若手人材を日本のホテル・旅館へ派遣する(株)アプリでも、「2017年の外国人スタッフ派遣人数は約300人で前年と比較して1.7倍に増加しています」と話すなど、外国人労働者のニーズは年々高まっている。ところが、必要と感じながら、受け入れに及び腰な日本企業の現実があることも浮き彫りになっている。
同社広報の原由利香氏は次のように課題を指摘する。「人材不足により例えば宿泊業では外国人労働者が不可欠になりつつあります。しかし、いざ採用の段になると『言葉の壁によるコミュニケーション』やそれに伴う『教育』の面に不安を感じ、採用に踏み切れないというホテルや旅館は少なくありません」とその実状を明かす。予想される不安要因ではあるが、このご時世でも依然、そうしたことで外国人採用を諦める企業は数多いという。
同社では、そうした課題を解消するサービスとして、ホテル・旅館で働く外国人スタッフ全体のスキルアップを図るため、「日本おもてなし研修動画」をYouTubeで公開。受け入れ企業、および外国人労働者の就労支援を行っている。
外国人人材の活用を阻害する言葉以外の壁
こうした言語の壁だけでなく、受け入れ側企業には、特に外国人労働者の主流を占めるアジア人材活用を妨げる“思い込み”があるという。原氏が明かす。
「アジア人材ということで、賃金が安いという固定観念はまだままだ根強いです。言語が不十分ということもそこにひもづけられてしまうようです。しかし、同じ環境で働く以上、同じ賃金で働いてもらうようにしないと、いい人材がいた場合に採用できません。異文化をある程度受け入れることで、特にインバウンド対応などではサービスが向上するケースもありますから、言葉ができないというだけで拒絶するというのは、もったいないと思います」。
例えば老舗旅館がしきたりにこだわり、外国人が難しいというならそれでもOK。ただし、それではいい人材は採れないし、ひいては外人観光客への対応も含めたサービス力の向上は期待できない。さらに低賃金をあてこんでアジア人材を採用するという視点では、見向きもされない可能性もあるということだ。
年々深刻になる人手不足。どんどん必要になる外国人材。日本企業が、上記のような思い込みや視点でしか、外国人材をみなければ、その眼を他国へ向けられても仕方がない。昨今、職場ではグローバル化やダイバーシティが強く求められる。外国人労働者が増え続ける中で、受け入れ側の意識改革は待ったなしだ。
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