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サラリーマンが副業すると社会保険料は増える?社会保険の基礎を徹底解説 (2017/12/26 nomad journal

副業をしているサラリーマンにとって気になることの1つに社会保険料があります。社会保険料は本業の会社で加入し、毎月の給料から徴収されています。しかし、副業をしていると収入が増えるため、社会保険料が増えるのではないか、何か手続きが必要なのではないかと気になる人も多いでしょう。ここでは、副業と社会保険の関係について解説します。

年金手帳

サラリーマンと個人事業主では、加入している保険が違う

■サラリーマンは社会保険に加入する
サラリーマンと個人事業主。実は、加入している保険の制度が異なります。まず、サラリーマンが加入している社会保険から見ていきましょう。サラリーマンが加入する社会保険は、次の5つから成り立っています。

(1)健康保険
いわゆる健康保険のことです。毎月の掛金を支払うことで病気やけが、出産や死亡のときに給付を受けます。健康保険は大きく2つに分かれます。もともと国が運営していた健康保険を引き継いだ「全国健康保険協会(協会けんぽ)」が運営するものと、それぞれの企業等が主体となって設立した「健康保険組合」が運営するものです。

サラリーマンは、勤め先が加入している健康保険に強制的に加入します。給料の額に応じて設定されている「報酬月額」によって保険料が決定され、会社と従業員が折半して支払います。その他、公務員が加入する共済保険等もあります。

(2)介護保険
介護保険は、介護が必要な老齢者やその家族を皆で支えていくことを目的としている保険です。原則40歳以上の人が毎月の掛金を支払うことで、介護状態になったときに給付を受けることができます。給料の額に応じて保険料が決定され、こちらも会社と従業員が折半して支払います。

(3)年金保険
年金保険は、毎月の掛金を支払うことで、老後や障害が起きたとき等に給付を受け、生活の保障を得るものです。サラリーマンは厚生年金に加入します。日本の年金制度は2階建てとなっていて、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金というイメージです。そのため、サラリーマンは厚生年金に加入していると同時に、国民年金にも加入していることになります。給料の額に応じて保険料が決定され、こちらも会社と従業員が折半して支払います。

(4)雇用保険
雇用保険は従業員のための保険です。毎月の掛金を支払うことで、失業時等に給付を受けられます。会社と従業員が一定割合ずつ負担します。

(5)災害保障保険
いわゆる労災保険です。毎月の掛金を支払うことで、業務中や通勤中に怪我などを負った際に給付を受けられます。全額会社負担です。

■個人事業主は国民健康保険等に加入する
ここからは、個人事業主の保険について確認しましょう。

(1)健康保険
いわゆる健康保険のことです。個人事業主は市町村が運営する「国民健康保険」に加入します。配偶者などを含めた世帯の収入に応じて、保険料を支払います。

(2)介護保険
原則40歳以上の人が、国民健康保険と一緒に支払います。

(3)年金保険
個人事業主は国民年金に加入します。毎月一定額を支払います。

個人事業主は従業員ではないため、自分自身の雇用保険や災害保障保険に加入することはできません。

社会保険料が増える副業とは

ここまで、サラリーマンと個人事業主の保険について確認しました。ここからは、副業をすることで社会保険料がどう変わるのか見ていきましょう。

副業にはアルバイトやパート、商品販売などさまざまな種類の事業があります。その中で、副業をしたことで社会保険料の支払いが増える業種があります。それはアルバイトやパートです。アルバイトやパートも、本業の会社と同じく企業に雇われて給料をもらいます。平成28年10月以降、アルバイトやパートの社会保険への加入条件が引き下げられました。そのため、今まで以上に社会保険へ加入する人が増えています。

現在、アルバイトやパートの社会保険への加入条件は、以下のいずれかに該当する場合です。

  1. 1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
  2. 次の5要件をすべて満たす人
  • 週の所定労働時間が20時間以上あること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 賃金の月額が8.8万円以上であること
  • 学生でないこと
  • 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること

出典:日本年金機構

本業の会社では当然、社会保険に加入しています。では、上記条件に該当し、副業のアルバイトやパートでも社会保険に加入することになった場合はどうなるのでしょうか。

この場合は、以下のような流れになります。

  1. 本業の会社を管轄する年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を自分で提出する。
  2. 年金事務所ですべての給与の金額を合算して社会保険料を求め、求めた社会保険料を会社ごとの報酬月額で案分し、本業の会社とアルバイト・パート先の会社の支払額を決定。
  3. 年金事務所から、それぞれの会社に社会保険料の金額の通知
  4. それぞれの会社で、毎月の給料から該当する社会保険料の天引き

このように、副業がアルバイトやパートの場合は、本業の会社+副業分の社会保険料を支払うため、社会保険料の負担が増加します。雇用保険は本業の会社でのみ加入します。

社会保険料が増えない副業とは

副業がアルバイトやパートの場合は、社会保険料の負担が増えることを説明しました。では、社会保険料が増えない副業にはどのようなものがあるのでしょうか。それは、商品販売業などによる事業所得や、単発の仕事等などの雑所得です。事業所得や雑所得が生じる収入で生計を立てている人は、国民健康保険や国民年金保険に加入します。では、本業の会社で社会保険に加入し、副業で事業所得や雑所得がある場合はどうなるのでしょうか。

実は、現行の社会保険制度では、会社と個人事業のどちらか一方でしか保険に加入できません。またサラリーマンの場合は、健康保険や厚生年金保険などの社会保険への加入が義務付けられています。そのため、副業が事業所得や雑所得の場合は、本業の会社の社会保険にのみ加入します。

では、本業の会社で徴収される社会保険料に変化はあるのでしょうか。徴収される社会保険料の金額は、サラリーマンの給料分に対してのみ計算対象としています。ですのでどれだけ個人事業などで大きな所得があっても、それが副業である限り、社会保険料には影響しません。

サラリーマンの副業は個人事業の方が社会保険は有利

サラリーマンの副業の場合、パート・アルバイトの場合は社会保険料の負担が増えますが、個人事業主の場合は負担が増えません。そのため、副業が個人事業主の方が社会保険料では有利です。では、どれだけ有利なのか見ていきましょう。

例えば、本業の給料が30万円、アルバイト・パートの給料が10万円、介護保険なしの場合で計算してみましょう。協会けんぽ(東京都)では、健康保険料率が9.91%、厚生年金保険料率が18.3%です。

給料の合計金額は30万円+10万円=40万円となり、この場合の報酬月額は38万円になります。

  • 健康保険料…38万円×9.91%=37,658円 自己負担額37,658円×1/2=18,829円
  • 厚生年金保険料…38万円×18.3%=69,540円 自己負担額69,540円×1/2=34,770円
  • 社会保険料自己負担額合計 健康保険料18,829円+34,770円=53,599円

では、同じ条件で本業の給料が30万円、個人事業の収入が10万円の場合を見てみましょう。

この場合、本業の給料30万円のみが社会保険料の対象となります。

報酬月額は30万円です。

  • 健康保険料…30万円×9.91%=29,730円 自己負担額37,658円×1/2=14,865円
  • 厚生年金保険料…30万円×18.3%=54,900円 自己負担額54,900円×1/2=27,450円
  • 社会保険料自己負担額合計 健康保険料14,865円+27,450円=42,315円

このケースの場合、副業がアルバイトやパートの場合の方が、個人事業の場合に比べ月1万円程度社会保険料の負担が大きくなることがわかります。

サラリーマンの副業で、法人を設立したら社会保険はどうなる?

■原則、法人は社会保険に強制加入
ここからは、副業が個人事業ではなく、自ら株式会社や合同会社などの法人を設立した場合の社会保険について見ていきましょう。

法人は原則、社会保険に加入する必要があります。この点は株式会社も合同会社も同じです。すぐに動き出す会社であれば会社設立5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」や「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」と、必要に応じて「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出し、社会保険に加入します。従業員がおらず代表者1人の場合でも社会保険に加入する義務があるので、注意が必要です。

自営業(個人事業主)の場合は、従業員がいなければ社会保険への加入は必要ありません。従業員が5人以上になると、加入しなければなりません。

※法人・個人にかかわらず、従業員がいる場合は雇用保険や労災保険にも加入が必要です。

■副業が役員報酬(給与所得)の場合の社会保険料
法人を設立すると、通常、本人は代表取締役などの役員になります。副業で会社を設立して仕事を行うということは、設立した会社にとって設立者は正社員の会社員という立場ですが、本業を別に持つ設立者本人にとっては、会社からの役員報酬(給与所得)は副業の収入になります。

この場合、副業がアルバイトやパートである場合と同じく、2つの会社で社会保険に加入していることになります。本業の会社を管轄する年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を自分で提出し、設立した会社に年金事務所から通知があった金額を、役員報酬から天引きし支払う必要があります。

なお、本業の会社と設立した会社の2か所から給与を受け取っているため、確定申告が必要です。住民税については、副業の役員報酬分の住民税も合わせて本業の会社で源泉徴収されます。

■サラリーマンの副業で、法人を設立したら社会保険で副業がばれる
これは、副業がアルバイトやパートの場合も同じですが、本業の会社と自分の会社の2か所で社会保険に加入したら、その両方の会社の給料合算額に対する保険料を会社ごとの報酬月額で案分し、各会社の給料から天引きすることになります。本業の会社で支払う案分した金額は、本業分の給料に対する社会保険料と異なるので必然、本業の会社に副業がばれてしまいます。

「副業で設立した会社で社会保険に加入しなくても、年金事務所等にばれないのではないか」と思う人もいるかもしれません。しかしマイナンバーの導入により、税と社会保険については同一の番号が適用されることとなりました。そのため、今まで以上に社会保険に未加入の会社が把握される可能性が高くなることは否めません。

本業の会社に副業をしていることがばれたくない場合は、本人の代わりに、例えば配偶者や家族が代表取締役になり、役員報酬を受け取るなどの工夫が必要です。

まとめ

社会保険料は、副業の種類によって手続きや保険料の金額などが異なるため、多くの人が気になっていることの1つです。この記事を参考に、副業でも社会保険に加入しなければならないのか、どのような影響がでるのかなどを理解し、自分に合った適切な処理を行いましょう。

執筆者:はせがわ・よう

執筆者:はせがわ・よう

関西在住。会計事務所に10数年勤務後、2016年よりフリーライターとして活動。会計・税務関係の記事をメインに執筆しています。

提供:nomad journal

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