観光庁 民泊業務適正化指導室長に聞く「住宅宿泊事業法」独占インタビューで語る (2017/10/26 Airstair)
2018年6月に全国的に民泊を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、届出を行うことで民泊を合法的に運営できるようになる。10月24日には民泊新法の関連政令が施行され、徐々に民泊新法の具体的な中身が明らかになってきた。
それでもなおまだまだ住宅宿泊事業法に関するガイドランなどは公表されておらず、まだ不明瞭な部分も多い。そこで今回は、国土交通省 観光庁の民泊業務適正化指導室長 波々伯部 信彦氏に住宅宿泊事業法と来年以降の民泊市場について話を聞いた。
年内に民泊統計を公表 現状把握のため
メトロエンジン株式会社のメトロデータなどで全国の民泊施設は50,000件となっているなど公表されている数値はある一方で、国としては民泊の実態がつかめていないというのが実状だ。「今現在は民泊の実態調査を進めており、まずは実態の把握を行う。年内にはある程度の数値を公開予定」(波々伯部氏)と語った。
具体的には、「訪日外国人消費動向調査などでどういった宿泊施設に泊まったのかという調査のところに民泊というカテゴリを加えて実態を把握していく」という。ここ数年で民泊に宿泊する外国人観光客が増えていると言われるが数値的にも確認することができるようになりそうだ。
民泊新法の施行後は届出制となるが、施行後は「届け出物件の数や、民泊施設の宿泊者の数、国籍といった基本的なデータはまとめて公表する」という。
年内については、訪日外国人消費動向調査で民泊に宿泊したと回答した旅行者による調査データ、来年以降は民泊新法の届出物件に関する基本的なデータ(民泊オーナーからの定期報告データを含む)を確認できることになりそうだ。
日数制限を行う自治体について
民泊新法の目的は、全国一律に民泊サービスを提供できるようにすることにあるが、「住宅地でも民泊サービスの提供ができることから地域によっては周辺の生活環境の関係で大きな支障が出る場合もある。そのため例外的に条例で区域と期間を限定したうえで制限をできるようにした」と語る。
すでに自治体関係者には「観光庁としては全国的に民泊サービスを普及させるという法律の趣旨を伝えている」といい、各自治体では地域の実情に基づいて条例で制限をかけるなどの検討が進められている。
インターネットから電子申請が可能に
2018年3月に開始する届出申請については、現在電子申請のためのシステムを作っており、民泊ホストなどの住宅宿泊事業者、管理会社などの住宅宿泊管理業者、AirbnbやHomeAwayなどの住宅宿泊仲介業者がインターネット上から届出ができるようになるという。
届出の方法については、郵送等で送る必要はなく「添付ファイルなども含めて電子添付した形で送ることができるようになる」という。届出が受理されると自治体から届出番号が通知されることになるが「届出番号についても電子的な方法で送ることを検討しており、仮に難しい場合は一部郵送で送ることも考えうる」と語った。
住宅宿泊事業法の届出は、民泊ホスト・管理業者、仲介事業者ともに添付資料なども含めてインターネットからすべての手続きが完了できる見込みだ。
700件以上の意見、年内にガイドライン公表も
政府は民泊新法の施行令案に関するパブリックコメントを9月21日~10月11日の21日間にかけて実施したが、「700件以上のパブリックコメントが寄せられ、数としては他のパブリックコメントと比べると非常に多かった」と語った。意見を出した方々も様々で自治体や民泊事業への参入企業、有識者、弁護士、既存の宿泊事業関係者など様々だったようだ。
特に既存の宿泊事業関係者からは「今の旅館業とのイコールフッティング、競争条件を同じくしてほしい」という要望も寄せられているといい、「旅館業法は実態に合わせて規制緩和を行う予定で厚生労働省とも連携をとっていく」と語った。政令については10月24日に公表となったが「運用の細目についてはガイドラインとして遅くとも年内に公表する」という。
年間上限180日の日数制限について
民泊新法では1年間の営業日数が最大で180日となるが、この日数管理については「2か月に1度の定期報告がベース」になるといい、民泊仲介業者から自動的に宿泊予約日数が自動送信されるといったことはない。
届出番号については「民泊オーナーから民泊仲介事業者に登録できるようにし、その情報が宿泊客にも提供されるようにする予定」。虚偽の届出番号が民泊仲介事業者に申請されることはないよう「民泊仲介業者からは基本的な情報の提供を受ける」と語る。
定期報告は民泊ホストの負担となるが、報告の手間がかからないよう「届出の日数を報告するためのシステムも届出のシステムと一緒に作っている」といい施行日から利用できる見込みだ。
玄関の標識で届出状況が明らかに
民泊新法では、「民泊の玄関に民泊サービスが行われていることを示す青色のステッカー」を貼る必要がある。従来であれば民泊が行われている場合旅館業法の許可を取得しているかすぐに判断することは難しかったが、新法民泊では玄関に青色のステッカーがあるかないかでわかるようになるという。
「国では全国統一的なコールセンターを施行までに間に合わせるように整備をして」おり、国と自治体が連携した窓口を準備。万が一、ステッカーのない民泊施設がある場合には、コールセンターに問い合わせをすることができるようになる。
京都ではすでに独自に民泊専用の通報窓口を開設しているが、全国統一的な民泊専用窓口を国として開設するイメージとなるようだ。
民泊新法と今後の民泊市場について
民泊新法では税や消防との連携の必要性も高まっているが、すでに「関係省庁と具体的な連携方法を模索しており、両者で連携し必要な対応を今後行っていく」という。
また年間上限日数の180日が後に延長される可能性があるのかについては、「施行後3年を経過した場合において、法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときには必要な処置を講じる」と法律に書かれているといい、必要に応じて検討を行っていくという。
今後の民泊市場については、「民泊新法により民泊の白黒がはっきりし、黒の民泊については関係機関が対策を行っていく。民泊新法によりマーケットが健全化することが中長期的な発展につながっていくと考えている」と今後について語った。
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