空前の転職活況! だが誰でも同じく「売り手市場」か? (2017/6/30 JIJICO)
活況を呈する転職市場
3年ほど前から企業の採用熱はヒートアップし続け、冷める気配が見えません。それは大学新卒者に限らず、転職市場も同様のようです。同僚たちが転職の可能性を話しているのを、そわそわした気持ちで聞いている人が、沢山いることでしょう。実際、筆者の就職相談窓口へも、土曜日ごとに、転職相談を希望される方々がたくさん来られます。
そういった転職相談の人の多くは、一般事務職や営業職の方です。転職理由は大きく2つあり、たいていはその2つが重なっています。
理由1「長時間の残業や休日出勤が日常的になっているが、正しい手当ての支払いが無い」というもの。
理由2「社内の人間関係、特に直属の上司との関係が悪い」というものです。
この2つの理由の内、どちらか一方でも「悪くはない」という条件があれば、人は簡単に転職を希望しません。この2つの理由が両方存在するときに、「これ以上この会社で頑張る理由がない」と考えるようになります。しかしこのタイプの方は、自分に特別な技術をもたず、転職先を考えるにしても、今と同じような職種を選択するしかない、という人が一般的です。ここに、転職希望者の落とし穴があるのです。
転職者向けの求人倍率が高い業界は?
企業の採用熱が高い、と言いましたが、企業が出している求人情報には、明確な傾向が見て取れます。その傾向をまとめた一例が、転職支援サービスのDODAから発表されています。その内容を抜粋すると次の通りです。
転職者向けの求人倍率が高い業界順に、(1)IT・通信業 5.90倍 (2)接客サービス業 2.93倍 (3)メディア業 2.72倍 となっており、以下、医療サービス業 2.55倍 メーカー 1.74倍などとなっています。
また職種別に見ると、(1)IT技術職 7.62倍 (2)専門職 5.17倍 (3)電気系技術職 4.44倍 (4)建築系技術職 4.16倍 が特に多く、以下、営業職 2.68倍、クリエイティブ職 2.21倍などとなっています。
上記はDODAの支援サービスを利用する企業が中心になっていますので、たとえばハローワークの求人を洗い出せば、福祉業界なども上位に上がって来るはずです。
実際に今、転職を考えている人の中で、上記の業界や職種を見た結果、「よし!チャンスだ!」と感じられる人はどのくらいいるでしょうか。ちなみに「事務・アシスタント系職種」の求人は、0.25倍です。つまり4人に1つの求人ということですね。
採用側と応募者側のニーズが大きくズレている転職市場
転職の落とし穴は、採用側と応募者側のニーズが大きくズレている点にあります。日本に限らず先進国の傾向として、今求められているのはIT系の技術者とその周辺の職種です。メカニック系の技術も根強く求人があります。
一方事務系は、常に低倍率になっています。医療事務や経理事務などの専門事務職になれば、かなり倍率が上がりますが、特に医療事務では正社員ではなく、契約や派遣という形が多いようです。
自分に出来る仕事と、企業が求める技術や知識がマッチするか。自分が求める働き方や労働条件と、企業が提示するそれがマッチするか。転職先を探すときは、求人情報を見ながら、この2点を調べましょう。特に転職用の求人では、企業側は「即戦力」を求めるので、学生や若者のように、「今はまだ出来ないが、教えて下さい!」という考え方は通用しません。「出来るか、出来ないか」「何が出来るのか」が単刀直入に問われます。
転職を考える人は、今いる職場で身につけられる知識と技術をすべて学び取って、自分のものにしましょう。「私の職場では学べることなど何も無い」という人も多いですが、どんな職場にも必ず学びの材料があります。それを見つけるような仕事の仕方を考えて、自分の仕事能力の幅を広げましょう。それが、転職市場における自分の価値を高めることにつながります。
- 著者プロフィール
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安藤 ゆかり/研修講師・キャリアコンサルタント
ソーシャルスキル教育株式会社
大阪外国語大学(現大阪大学 外国語学部)デンマーク語科卒業。大学受験予備校にて英語講師15年の経歴を経て、2009年2級キャリアコンサルティング技能士を取得し、キャリアカウンセラーに転身。2012年に「ソーシャルスキル教育株式会社」を立ち上げて法人化。マンツーマンのキャリアカウンセリング(就職相談)を実施し、現在(2014年7月)までの約10年間で、延べ人数3000人を超える就職相談に対応。一方、就職力アップを中心とする各種研修を担当する講師としても幅広く活動する。
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