正社員不足に反比例して、有能なプロ人材が増殖している事情とは (2017/3/3 瓦版)
正社員が足りないという発想を転換するだけで会社は回り始める
人材不足がジワジワ顕在化している。全体的には症状は軽いが、特定ジャンルでは事態は深刻だ。この窮地を救うにはどうするべきなのか…。AIによる代替や学び直しによる再戦力化も期待できるが、ボーダレスに複数の企業間で活躍するプロ人材の活用は、即効性の面では有力だ。人材企業・Warisのプロ人材発掘のプロセスと案件整理のフローからみてくるのは、人材不足時代の極めて合理的な“穴”の埋め方だ。
プロ人材増大から透ける正社員のボトルネック
同社が企業へ人材をアサインする目的は、新規事業立ち上げ、欠員や不足による急な必要が生じた場合などさまざまだ。いわゆる人材派遣を使えば、代替も可能に思える。だが、似て非なるのが、登録人材の質だ。
Warisでは登録者を「プロ人材」に厳選。その定義は、基幹職での10年以上の経験だ。まさにその道のプロといえる人材が、スタンバイしている。登録者は約3,500人におよび、そのほとんどがワーキングマザーというのが特徴的だ。それには明確な理由がある。
「企業でしっかりとスキルを身に付けた人材が出産などを経験した時、時短などで就労を継続する事例もありますが、可能ならばもっと自由に働きたいというニーズが意外にある。そこにフリーランスという選択肢があるワケです。どころが、不安定と背中合わせであり、なかなか踏み切れない。そうした不安を解消するプラットフォームとして私どもの役割があると思っています」と同社共同代表の田中美和氏は解説する。
政府の女性活躍推進で、ワーママの就労環境は改善されつつある。だが、正社員という雇用形態は安定に違いないが、フルタイムでない働き方にシフトするとどうしても後ろめたさを感じさせる側面がある。すでに自立できるスキルを持つワーママにとって、仕事さえ確保できるなら、自身の裁量でフレキシブルにこなしたい。つまり、フリーランスとして働きたいという潜在ニーズは高い。
働く意欲を後押しし、就労継続の障害を取り除くプラットフォーム
Warisは、砂漠に咲く花の意。<どんなに環境が変化しても誰もが能力という「花」をさかせてイキイキと働き続けられる社会を実現したい>という同社の思いが込められている。制約の多いワーママでも、スキルさえあれば、安定して働き続けられる。そうした社会を構築することが、働く女性を一層活性化する--。同社では、単なる人材紹介の域を超えたところへ目を向け、ミッションとしてその実現へまい進する。
プロ人材にフォーカスすることは、そのアプローチとして非常に有効になる。なぜなら、プロ人材はすでに戦力だからだ。人材不足の時代。企業にとって、即戦力ほど欲しい人材はいない。非正社員なので、コスパもいい。企業が、「フルタイム」にこだわらなければ、いいことづくめだ。
もちろん、課題はある。一般事務業務の場合の業務内容の切り出しが困難。どうしてもフルタイムが希望の場合に、都合をつけづらい…。これが、個人のフリーランスとの契約なら、調整は困難を極めるだろう。すんなりいくとすれば、割を食うのはたいていフリーランスの側となる。だが、間に同社が入ることで、キチンと交通整理。課題を丁寧に解消することで、スムーズなアサインを実現する。
プロ人材活用で人員の最適化を実現
例えば、管理部門の立ち上げ案件では、フルタイムが望ましかったが、プロ人材を週2日で2人アサインすることでカバー。結果的にフルタイム正社員2人採用予定を代替した。ネットベンチャーの新規事業開発案件では、元大手ITのマーケ担当者を週2~3日でアサイン。コンサルティングファームとの契約などをすることなく、新規事業戦略の基盤づくりを実現した。
フリーランスというと、ライティングやデザイン、プログラミングなどのクリエイティブ系の印象が強いが、昨今はその幅が拡大。上記のように、多様な職種に対応出来る土壌も整っている。こうしたことも、企業がプロ人材活用を推進すべき要因といえる。実際、同社の登録者では、管理部門(人事・経理など)32%、マーケティング・広報30% で、クリエイティブ系のプロ人材の割合を上回っている。
正社員の代替ではなく、進化系がプロ人材
このことは同時に、キャリアを積んだ優秀な正社員が、プロ人材として流動し始めていることを示しているといえる。正社員のまま、複数企業と契約を結ぶパラレルな働き方、フリーエージェントとしての複数契約、フリーランスとして自在に複数企業と契約を結ぶ働き方…。正社員という雇用形態を外すことで、優秀人材の潜在力はこれまで以上に引き出され、企業の人材不足も解消される。同社が目指す理想の社会はまさに、全労働者の人材最適化にもつながる、新しい雇用のカタチを示しているといっていいだろう。
企業はこれまで、人材不足を派遣や契約で補ってきた。悪く言えば、都合よく低コストで業績変動のリスクヘッジとしていた。そして今、優秀な正社員が採れないと悲鳴を上げている。一方でプロ人材は、優秀な即戦力として、人材不足の救世主として注目され始めている。この流れは、今後さらに加速することは必至で、そうなれば、企業と個人の関係は確実に変質する。個人が、ライフとワークのバランスを取りながら最大限に能力を発揮できる社会。同社が目指す理想の社会と、そのベクトルがピタリ一致する--。
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