フリーランスママ集団「Mom’s Lab」メンバーが語る~女性の働き方はこう変わる!~ (2016/8/16 SOCIAL DESIGN NEWS)
第三次安倍内閣の目玉である「一億総活躍社会」。その中心は女性です。しかし、「働きたいけど働けない」「仕事と育児との両立が大変」などの課題も山積。そんな女性の悩みを解決するために、全国各地でフリーランスとして働くママを統括し、ディレクション、品質管理、教育等を経て、企業や社会の課題を解決しているのが「Mom’s Lab(マムズラボ)」。Mom’s Labにはデザイン・ライティング・PR等を中心に全国各地でフリーランスとして活躍するママが所属しています。
今回は、コミュニティマネージャーの佐藤にのさん、プロデューサーの大洲早生李さん、プロジェクトマネージャーの小松紫穂里さんに、Mom’s Labの活動内容や未来の働き方について話を伺いました。
――本日はよろしくお願いします。まず、どのようなきっかけでMom’s Labにジョインされたのでしょうか?
佐藤:Mom’s Labは2016年4月にスタートしました。その約1年前の2015年の春先に、Mom’s Lab 運営元であるSBヒューマンキャピタルからいくつかのママ団体へ声かけがありまして、そのうちの一つが、小松と私が所属していた前団体でした。
前団体でも、ママクリエイターのみなさんと事業プロデュースを任意団体として行っていました。ただ、バックオフィス業務等に手が回らないことが多く、一部のメンバーに負担が集中する状況が続いていました。 より事業をスケールさせるために運用パートナーが必要という段階が来ていて、そんな折にMom’s Lab構想についてお話を頂いた、という流れです。
――ママの問題をママだけで解決するのは難しい部分もあるのですね。大洲さんはいかがですか?
大洲:もともと私は、2つの法人を運営していました。株式会社グローバルステージでは企業向けのマーケティング・PRコンサルティングの仕事を、一般社団法人日本ワーキングママ協会ではママのためのビジネススクール「東京ワーキングママ大学」の運営に従事しています。
それで、たまたまうちの団体のメンバーが、Mom’s Labの運営元であるSBヒューマンキャピタルの社員でして。その経緯でお声がけいただき、「なにか一緒にできませんか?」という流れになりました。
私の場合はビジョンから入る方なので、「ママの力で社会を変える」というビジョンでやろうという話にまとまったとき、その一翼を担いたいと考えました。私自身、グローバルステージを立ち上げた経緯が、自らの妊娠・出産による会社退職だったので。
「子育てしながら働くのってこんなに難しいんだ」と痛感しましたね。おまけにキャリアアップもできない。時短勤務の人は研修を受けることができないからです。当然、昇給や昇進も難しい。それが現実でした。
――佐藤さんも大洲さんもビジョンが似ていたんですね。小松さんはいかがですか?
小松:私は前団体時代から佐藤と一緒に仕事をしています。
前団体に所属した動機と、Mom’s Labに参加した動機はほぼ同じです。もともとフリーランスでウェブディレクターをしていたんですが、どうしても孤独を感じてしまっていて。なにか問題が発生しても、自分1人で解決しなければならないのです。
スキルアップという面でも、育児をしながらだと時間がまったく足りなくて。目の前の案件で手一杯になる中で、外からの視点がなく、「このままでいいのかな」という状況がずっと続いていました。
そのとき、佐藤と出会って、同じ状況のママやクリエイターとつながることで、新しい視野を提供してもらえました。コミュニケーション自体に飢えていた、ということもあったと思います。
――女性の働き方には色々な課題があるんだなと改めて感じます。皆さん今はどういったお仕事をされているのでしょうか?
大洲:私は主に営業、ディレクションを担当しています。住まいは名古屋なので、月の3分の1は出張で東京に来ています。たまに大阪や福島、新潟など、遠方に行くこともあります。海外に行くこともありますね。
――ディレクションとは具体的にどのような業務ですか?
大洲:お客様との窓口になり、フォローアップをしています。継続的にお付き合いいただけるように、細心の注意は払ってフォローすることで、お客様のニーズにきちんと誠実に対応できるように心がけています。
お客様が考えている方向性とずれていると感じたら、内部でヒアリングを行い、アプローチを変えて提案するなど、バックヤードからサポートしています。
――女性ならではの心配りもできそうですね。佐藤さんの業務についてはいかがですか?
佐藤:Mom’s Labでは、コミュニティマネージャーという肩書きで、受注した仕事の管理と関わる人のアサインを行っています。やはり、クリエイターネットワークのコミュニケーションを円滑に保つためには人材管理が欠かせません。
――具体的にはどんなことをしているんですか?
佐藤:にぎやかしから営業、ママの相談窓口まで、幅広く対応しています(笑)。
特にメンバーとの対話は大切だと思っています。子育てしながら働くことに際しモヤモヤはあってもいいのですが、それを吐き出す場の用意や雰囲気づくりは大切です。特に女性は共感しあうことで絆を深めあいますので、”分かってくれる”と感じてもらうことで、居続け安く仕事しやすいMom’s Labを目指しています。
相談は、メールやチャット、対面で行うようにしています。すべての問題を解決できるわけではありませんが、ボヤキを打ち明けられる場があればこそ、少しすっきりすることができますよね。クリエイターの心の負担が軽くするお手伝いができれば、という思いです。
また、Mom’s Labへのクリエイター登録は、原則として実務経験3年以上と設定させていただいていますが、今後に向けて、未経験の方を育成するためのスキームも構築しています。そのための講座を東京以外の地域で開催する予定です。
スキルアップを希望をする方には、思いに寄り添えるよう、学びと働ける環境を提供することで、理想の働き方が実現できたり、もっと上流の仕事に関われるようになったりします。例えば、ライターからディレクターへ、さらにプロジェクトマネージャーにもなれるよう、働き方の選択肢を増やすための仕組みづくりを整えていきたいですね。
そのようにして、「ママ時代」が終わってからのセカンドライフにもしなやかに対応できる女性を増やしたいと思っています。
――確かに、ママというのは女性にとって一時的なものですからね。小松さんはどのような業務をしているのですか?
小松:主にウェブディレクションをしています。ただ、Mom’s Labに所属したことで、紙媒体のディレクションやライティングに近い仕事、または小さなイベントの運営まで携われるようになりました。仕事の幅がかなり広がりましたね。
また、切迫流産で1週間ぐらい入院したときには、Mom’s Labに助けられました。すぐに入院が決まってしまい、クライアントに説明する暇もなかったのですが、佐藤やほかのメンバーが仕事を引き継いでくれたおかげで、乗り切ることができました。
――支え合うことでパフォーマンスを担保しているのですね。それ以外にも普段の仕事で、気をつけていることはありますか?
小松:ママという環境で働いていることを、クライアントにきちんと説明し、理解してもらうようにしています。また、スケジュールにも余裕をもたせるなどの工夫もしています。
ただし、ママということを言い訳にはしません。つねにいちビジネスパーソンとして責任を果たす、という姿勢で仕事をしています。
大洲:あくまでプロフェッショナルであることがベースになっています。「クライアントに対してどうなのか」が重要なので、仕事に穴をあけそうな場合には、ほかの人にお願いするよう徹底する。
プロフェッショナルであることを意識すれば、今後のキャリアにもプラスになります。たしかにお子さんが小さいと大変です。病気になってしまうこともあるでしょう。リスケすることもあるかもしれない。
それでも、仕事のスタンスとして、自分の価値を上げていくためにはプロ意識が必要だと思います。ですので、機会を見つけてはさまざまな角度からプロ意識について話をするようにしています。大事なことですから。下手すれば、業界全体の価値を下げてしまう可能性もありますので。
― ママであることに甘えずにプロフェッショナルとして仕事をしているわけですね。そのためにはママ同士の支え合いが大事だと。
佐藤:穴があかないようにする、仕事にコミットするなどは、フリーランスでも正社員でも、社会人であれば自分の責任で行っていることです。
Mom’s Labは、個々が自立しつつ、かつ相互に助け合う、相互扶助組織です。誰かに依存しきるような環境ではうまくいかないかもしれませんが、お互いに頼りにしあえることで、“分かってくれる”“自分1人だけじゃない”という強い絆のもとに仕事ができます。ちっちゃい点の集まりで面を作るようなイメージを大切にしています。
実務では、ディレクターにはサブディレクターを付け、進捗や情報の共有は必ず行うようにしています。ホウ・レン・ソウを必ず行うことで、何かあったときにすぐ対応することができます。
またライティングでは、ライターを多めにアサインし、急なご家族の体調不良やお子さんの事情などが発生した場合でも、いつでも誰かが対応できるようにしています。
――バッファを用意することで、アウトプットに影響がないようにしているんですね。
佐藤:どんな理由があっても納期と品質を担保すること。それがプロとしての基本だと思います。
――最後に、今後の話について聞かせてください。
佐藤:“ママ”は普遍的なものですが、昨今の事業ブームとしては落ち着きを見せ始めているように感じます。
そんな社会の波の中で、フリーランスとしても、ビジネスパーソンとしても、普通のママとしてもこれからを生きてゆくためには、将来のビジョンやしたいこと・やりたいことを理想論で終わらせないことが大切だなと感じます。実現するためのプロセスをいくつ自分の中にもっているかが大事だと思います。
やりたい仕事がある、住みたい場所がある。子育てはこういうことをしたいとか、家族で旅行へ行きたいとか、そういったことをどんどんやっていける人が、仕事にノウハウを活かせたり、家族という共同体を運営するためのスキルを身につけられたりするはずです。
そのような思考をつねにもっていること。それがフリーランスとして活躍していくために必要なのではないでしょうか。
大洲:ママブームやアベノミクスによって、チャンスはかなり増えたと思います。重要なのは、チャンスを自分でとりにいっているかどうか。業務だけでなく、情報収集なども積極的にするべきですよね。受け身でいると、申し訳ないけど、何も変わらず、時代のスピードから取り残されてしまうと思います。
――ママとしてのキャリアは転換期にあると感じます。この荒波を乗り越えるためにママにはどういたアクションが必要でしょうか?
佐藤:社会と何らかのカタチでつながっておくことが大事だと思います。ママが復職するプロセスにおいて、最終的に働き続けられる人は、何らかのカタチで普段からPCを使っているとか、地域のコミュニティに所属して人と対話をしているとか、そういった部分がポイントになります。
小さくてもいいので社会と接点をもっておくこと。ボランティアでも仕事でも、PTAでもいい。接点さえあれば、仕事のチャンスも舞い込んでくるものです。
――小松さんは自身の将来やキャリアについてどのように考えていますか?
小松:これからは、「生活」と「働く」がより近づくのではないでしょうか。地域で何らかの活動をしつつ、家では働き、さらに子どもの面倒もみる。打ち合わせがあれば、隣のおじいちゃんやおばあちゃんに子どもをあずけて、相互に支え合う。そのように地域ぐるみで、「働く」と「生活」がより近づく社会が到来するのではないかと予想しています。
そうしたとき、Mom’s Labのような団体に所属していたり、プロフェッショナルとして働いていたりする経験は、大いに役立つのではないでしょうか。
――働く人だけでなく、社会全体の意識も変わっていかなければなりませんね。本日はありがとうございました!
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