小規模多機能型の食堂と居間、総合事業の交流スペースとの共用を条件付きで認める―厚労省 (2017/1/6 メディ・ウォッチ)
小規模多機能型居宅介護の「居間」および「食堂」について、利用者へのサービスに支障がなければ「介護予防・日常生活支援総合事業の交流スペース」と共用しても差し支えない―。
厚生労働省は12月28日に、「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について」を一部改正し、上記の取り扱いを明確にしています。
市町村サイドからの「利用者間の交流確保」要望など踏まえた規制緩和
「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)は、市町村の実施する「地域支援事業」の一部(ほかに地域包括支援センターの運営などを行う「包括的支援事業」と、家族介護支援などの「任意事業」がある)で、要支援者に対する訪問・通所サービスを、より地域の実情に合わせた形で実施するものです。高齢化がさらに進展する中で、地域のさまざまな資源(医療・介護の有資格者はもとより、ボランティアや地域の元気な高齢者など)を活用して、地域の実情に応じた柔軟なサービスを提供することが狙いで、2014年6月に成立した医療介護総合確保促進法(介護保険法改正や医療法改正など)によって実施が可能となったものです。
厚労省は、従前の介護予防給付(介護予防訪問介護、介護予防通所介護)から、新たな総合事業への移行を来年(2017年)4月までに完了する(完全移行)こととしており、今年度(2016年度)中には516市町村で移行が済む見込みです(2016年4月時点で288市町村において移行済)。
また新たなサービスの形態として、「現行のサービス相当」(訪問介護、通所介護)のほかに、▼緩和した基準によるサービス(生活援助やミニデイサービスなど)【訪問型サービスA、通所型サービスA】▼住民主体による支援(住民主体による生活援助や体操・運動などの通いの場など)【訪問型サービスB、通所型サービスB】▼短期集中予防サービス(保健師による居宅での相談指導や生活機能・栄養状態改善プログラムなど)【訪問型サービスC、通所型サービスC】▼移動支援【訪問型サービスD】―などを例示しています。
ところで、地域包括ケアシステムの構築に向けては「小規模多機能型居宅介護」(小規模多機能型)の整備も重要です。小規模多機能型は、要介護度が高くなっても住み慣れた地域での生活を可能とするために、▼通い▼訪問▼宿泊―の3機能を備えた地域密着型サービスで、単なるサービス提供にとどまらず、利用者同士の交流や地域住民との交流などを通じて、まさに「地域包括ケアシステムの要」となることが期待されています。
しかし市町村サイドからは、例えば「小規模多機能施設を核にした複合施設を建設し、『要介護』のデイサービス利用者の移行を予定しているが、『要支援』の利用者は別の総合事業サービス利用となれば、今まで築いてきた『利用者間の交流』や『事業対象者や地域住民との交流』を続けられるようにできないか」との要望が出ています。従前の構造設備基準では、食堂・居間を「法第115条の45第1項指定通所介護等の機能訓練室及び食堂として共用することは認められないが、浴室、トイレ等を共用することは差し支えない」とされているためです。
この点について厚労省と内閣府が調整し、「利用者同士の交流などが重要となる」「過疎地では要介護・要支援におけるハード・ソフト両面での住み分けが困難」との観点で規制緩和を行うことが決まりました(12月20日に閣議決定)。厚労省はこれを受け、次のように構造設備基準(指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について)を改正したものです。
▼小規模多機能型の食堂・居間を総合事業の交流スペースとして共用することは、事業所が小規模(小規模多機能の通いサービス利用者と、総合事業の交流スペース参加者の合計が少数)の場合などで、小規模多機能型の食堂・居間として機能を十分に発揮しうる適当な広さが確保されており、利用者に対する小規模多機能型居宅介護の提供に支障がない場合には差し支えない
「小規模」がどの程度に設定されるのか、「適当な広さ」がどの程度か、などの詳細は、今後の通知などを待つ必要があります。
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