8都立病院・6公社病院の診療データ活用し、医療水準の向上や臨床研究・治験の推進目指す―東京都 (2017/1/4 メディ・ウォッチ)
すべての都立・公社病院(約7000床)の診療データを活用して、▼臨床現場での医療水準の向上▼安全で質の高い先進医療の提供▼臨床研究・治験の推進―を目指す。
東京都は先頃、こういった内容を柱とする「都立・公社病院診療データバンク構想」の基本的方向性と課題に関する中間まとめを公表しました。
今後、病院での試行や国の動向などを踏まえてさらに議論を深め、最終報告書を取りまとめる予定です。
診療支援、治験・臨床研究の推進、経営マネジメント支援など目指す
東京都は8つの都立病院(総病床数5147床)と6つの都立病院(総病床数2256床)を有しており、各病院には電子カルテが導入されています。ここに蓄積された診療データを活用して、「医療の質の向上」「患者サービスの向上」「都民への還元」「マネジメント力強化」「職員負担軽減」を図ることが、今般の「都立・公社病院診療データバンク構想」(データバンク構想)のベースとなります。
またデータバンクには(1)診療支援(2)治験・臨床研究支援(3)経営マネジメント支援(4)医療ビッグデータ―の4つの機能を備えることが求められます。
(1)の診療支援機能については、例えば▼アレルギー情報管理支援▼感染症管理支援▼抗菌薬スクリーニング支援▼診療指標管理支援▼重篤副作用スクリーニング支援―などが考えられます。
抗菌薬スクリーニング支援では、患者に尿道留置カテーテルを挿入した際に、CRP(炎症反応) 数値をスクリーニングし、診療データバンクの過去データと比較して数値が異常値になった際に、診療端末上でワーニング(警告)を表示させます。医師は、ワーニング表示を参考とすることで、速やかに尿道炎の判断を行い、抗菌薬投与開始などを速やかに指示する事が可能になると期待されます。
(2)の治験・臨床研究支援業務では、例えば▼治験候補者検索支援▼薬物間相互作用分析▼新薬治療効果分析▼疾病予兆分析▼縟瘡リスク分析―などがあげられます。医療全体の質を上げるためにも、病院経営を安定させるためにも、積極的な治験・臨床研究の推進が求められており、データに基づいた支援を行う考えです。
(3)の経営マネジメント支援業務としては、▼病床稼働状況分析▼手術室稼働状況分析▼マーケティング分析▼クリニカルインディケーター分析▼指導料・管理料算定チェック―などが例示されています。中間まとめでは、DPCのベンチマーキングコンサルティングソフトである『EVE』(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンとメディカルデータビジョン社との共同開発)との併用活用方法の検討にも言及しています。
さらに(4)では、(1)-(3)によって整理されたデータをビッグデータとして活用する方向性も示しています。
一部病院での試行から初め、3段階でデータバンク構想を実現
ところで8都立病院と6公社病院では電子カルテのベンダーが異なっていることもあり、▼記述データが多く、情報の検索、データ集計・加工が困難▼診療、看護、検査などの情報が別々のシステムで保存されているため、診療に必要な情報を即時に一括して検索・表示することが困難▼入力用語が病院毎に異なるため、複数病院でのデータ集計が困難▼データの直接相互利用が困難▼個人情報保護の観点から、データ取扱い方法の確立が必要―といった課題があります。
こうした課題を乗り越えデータバンク構想を実現するために、中間まとめでは次の3角フェーズで整備を進める方向が打ち出されています。
【第1フェーズ】:試行病院で試行システム を構築し、各種機能開発と検証を実施する(データクレンジングの手法、データ精度向上のための検証体制の構築といった課題の解決を目指す)
【第2フェーズ】:試行病院で蓄積した技術やノウハウを他の都立・公社病院へ展開する(改正個人情報保護法等に配慮したシステム構成、開設者が異なる都立・公社病院間のデータ統合方法といった課題の解決を目指す)
【第3フェーズ】:蓄積されたデータをビッグデータとして活用し、データの外部提供を実施する(企業や団体などが求めるデータの調査、国の動向などへの配慮を行う)
また、診療データは重要な個人情報であることから、「患者の同意取得や匿名化などに関する取扱いについて、都条例に則った対策を講じる」と同時に、改正個人情報保護法の動向も踏まえた検討を行うとしています。
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