医療資源投入量の少ない患者、基準病床数の「平均在院日数短縮」で勘案―厚労省・医療計画検討会(1) (2016/11/10 メディ・ウォッチ)
2018年度からの第7次医療計画では、一般病床の基準病床算定式について▼地方ブロック毎の経年変化を踏まえた平均在院日数を設定する▼病床利用率は76%を下限に都道府県の実情を一定程度踏まえることを可能とする―。
9日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」では、このような「基準病床数」算定式の見直し案が了承されました。
また医療資源投入量が175点未満の患者についても、計算式の中の「平均在院日数の短縮」の中で織り込むことも認められ、今後、厚生労働省で「175点未満の患者がどのような状態で、どのような経過を辿っているのか」を精査し、具体的な反映方法を探る予定です。
一般病床・療養病床の基準病床計算式を見直し
事実上の「地域における病床数」上限となる基準病床数の算定式については、2018年度からの第7次医療計画において次のような見直しを行うことが了承されました。
【病床利用率】(一般および療養)
▼一般病床は76%、療養病床は90%を下限値とし(2010-15年の平均)、「都道府県における直近の値」が下限値を上回る場合は、その数値を上限値として設定する
【平均在院日数】(一般)
▼平均在院日数の経年変化や、ブロック毎の平均在院日数の乖離などを踏まえ、地域ブロックごとに「2009から15年にかけての平均在院日数の変化率」(直近6年の短縮率)をベースとする
▼地域差是正のため、▽平均在院日数が全国平均を下回るブロックでは、当該ブロックの直近6年の短縮率を使う▽平均在院日数が全国平均を上回るブロックでは、当該ブロックの直近6年の短縮率と『全国値+α』とを比較し、より高い短縮率を使う(αは、地域差の是正を目的とした適正値を厚労省で設定し、告示する)
【流出入】(一般および療養)
▼流出先または流入元の都道府県と協議を行い定めた数とする
資源投入量少ない患者は「平均在院日数短縮」の中で勘案、具体的手法は今後
このうち平均在院日数については、「医療資源投入量が少ない患者を勘案すべきか」というテーマが宿題として残っていました。地域医療構想策定ガイドラインでは、1日当たりの医療資源投入量が175点を下回る患者については、「慢性期」「在宅医療等」での対応を念頭に置くこととしています。仮に「医療資源投入量が175点未満となった患者をすべて在宅に移行する」という方針が決まった場合、「一般病床の基準病床数を減少する(平均在院日数が短くなるため)」という選択肢が浮上してくるため、ここをどう考えるかが、検討会の下部組織「地域医療構想に関するワーキンググループ」で宿題とされたのです。
この点について、厚労省がNDB(ナショナルデータベース)のデータを用いて分析したところ、▽入院期間に関わらず、入院初日から退院日までのいずれの時点でも175点未満の患者が出現するが、入院後半に多くなる傾向がある▽入院期間が長くなるにつれて175点未満の患者出現頻度は、退院日に近づく傾向にある(ただし、極端に退院前日もしくは退院日近辺に集積してはいない)―ことなどが明らかになりました。
こうしたデータも踏まえながら厚労省は、「基準病床数の算定式では平均在院日数の経年推移(短縮)を見込む」ことになっており、「175点未満の患者」も含んだ退院患者の増加を加味したものとなっていることを確認しています。平均在院日数の短縮とは「在宅移行を含めた退院患者の増加」を意味し、これは前述のように基準病床数算定式の中で勘案することが決まっています(A)。また、地域医療構想では医療資源投入量の少ない(175点未満)患者の在宅移行を推進するとしており、これは平均在院日数のさらなる短縮を意味します(B)。したがって「医療資源投入量が少ない患者」は、算定式における「平均在院日数の短縮」という考え方の中に織り込まれているとの考えを厚労省は示しています。
検討会では、この考え方についても了承されています。ただし、上記の(B)、つまり「175点未満の患者の在宅移行による平均在院日数の短縮率」をどの程度見込むかについてはデータの解析が間に合っておらず、「今後、さらに精査する」ことになっています。
有床診療所、「届出」のみで一般病床の整備可能とする特例を拡大
9日の検討会では、「有床診療所における特例」を拡大することも了承されました。
現在でも、▽在宅医療▽へき地▽小児・周産期その他特に必要である―といった機能をもつ有床診療所は、病床過剰地域であっても、「届出」のみで一般病床を設置することが可能です(有床診特例)。
しかし、有床診は減少の一途を辿っており、今般、この特例を下図のように拡大することが了承されました。厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「病院から、有床診+介護老健施設へ転換するなどの選択肢を増やすことが狙い」と説明しています。ただし、既存の有床診はこの特例の対象にはならず、新規開設(無床から有床、病院から有床診など)のみが特例の恩恵を受けられます。
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