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なぜ中国は領海侵犯を繰り返すのか? 米識者が示す分析と今後の対応策とは  ニュースフィア 2016年8月15日

関連ワード : 中国 尖閣諸島 領土問題 

 このところ中国の公船が尖閣諸島沖に出没し、日本の領海に侵入を繰り返している。南シナ海での領有権を巡る国際仲裁裁判で、中国の主張は無効とされたばかりだが、その野心はくじかれるどころか強まるばかりだ。中国の狙いは何なのか、また日本を含む国際社会はどのように対応していくべきかを、米識者たちが論じている。

◆複数の紛争でじわじわと利益を。中国式が効果発揮
 ノッティンガム大学中国政策研究所のマイケル・コール氏によれば、中国共産党は、「中国が外国に封じ込められ犠牲になっている」という考えを国内的に浸透させている。共産党支持につながるこのイメージを維持するには、常に紛争をうまく片付け、国のために尽くしていると示す必要があるため、政府は複数の場所でアクションを起こすのだという。具体的には、南シナ海、東シナ海の2ヶ所がそれに当たり、台湾、中印国境紛争地帯も含めれば4ヶ所だ。各地で緊張の度合いを高めたり低めたりし、相手側に隙ができるまで辛抱強く待ち、チャンスが到来すると、確実に小さくとも何かを得て、それを既成事実化するのが中国の戦法だという。国際法とアメリカのアジア重視のリバランスに挑戦する中国が、事実上南シナ海を軍事化して占領し、一方的に東シナ海上空に防空識別圏設置を宣言したのがその例だ(ナショナル・インタレスト誌)。

 国内を満足させるのが目的であるため、紛争を戦争につなげる意思は、中国にはないとコール氏は見ており、実際2ヶ所で戦争を起こすことは命取りであり、すべての領土紛争で思い通りに勝つことは幻想であると共産党はよく分かっていると述べる。現状優位に立っていることから、アメリカがアジアへの関与を更新する今は、しばらくの間、複数の場所で紛争が続く状態が中国にとって最も国益になる、と同氏は見ている。

◆中国を止められるのはアメリカ。国際協調も必要
「Nikkei Asian Review」に寄稿した米ハドソン研究所上席研究員のアーサー・ハーマン氏は、中国を止められるのはアメリカしかいないと主張する。中国には戦後の国際秩序に挑戦し、国際法を書き換える決意があるようだとし、アメリカがまず、日本の尖閣諸島への歴史的主張をサポートし、近海での中国の挑発を止めさせる具体的措置を取るべきだと述べる。

 そして日豪、NATOも含めた多国籍軍を南シナ海、東シナ海で組織し、航行の自由は世界共通のものだと示し、緊張を和らげ、国際危機を引き起こす一方的な軍事行為の可能性を取り除くため、尖閣諸島と南沙諸島での即時の非武装化を、中国だけでなくフィリピンやベトナムにも提案せよとアドバイスしている。いまや南シナ海と東シナ海は「アジアの火薬庫」になりつつあるという同氏は、手遅れになる前に、アメリカが関与すべきだとしている。

◆米中開戦ほぼなし。あれば日本も巻き込まれる?
 中国に戦争の意思がないとしても、アメリカが関与を強めれば、米中衝突の可能性も出て来る。米の研究分析機関、RANDコーポレーションの米中戦争を想定したレポートの主執筆者であるデビッド・C・ゴンパート氏は、米中が戦争に突入することは考えられないが、中国が近隣国を威嚇しすぎてアメリカの介入を誘ったり、尖閣問題でのアメリカの関与の意思を過小評価した場合など、危機の扱いを間違うことで戦争が始まる可能性はあると述べる。

 米中開戦となれば、現状ではアメリカが有利だが、両国の軍事力や装備の差は縮まっていることもあり、長期化し両国に大きな犠牲をもたらすとレポートは結論づけ、戦争は米中どちらにも利益をもたらさないので、誤解や間違いを防ぐための策や、各国単位、2国間単位の危機管理が大切だと指摘している。

 ちなみに日本に関しては、参戦はないとしながらも、日本が米軍に基地を提供することで、中国の攻撃の対象となりえるとし、もし中国が自衛隊を攻撃した場合、日本はおそらく抗戦すると見ている。レポートは、日本の参戦の可能性は、中国の戦争突入の決断に影響するため、強固な日米同盟と高い能力を持つ自衛隊が、戦争に対する主要な抑止力になるとしている。

◆領土は広げたが敵を利した?習主席に批判
 力で周りを服従させようとする中国だが、米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのロバート・A・マニング上席研究員と、米国防大学国家戦略研究所のジェームス・プリスタップ上席研究員は、中国の習主席の外交政策が、国内では失敗と見られていると指摘する。両氏は、南シナ海の仲裁判決を始め、米軍の迎撃システムTHAADの韓国配備、日本の安全保障政策の見直しや平和憲法改正の可能性、EUによる中国のWTO「市場経済国」不認定など、結果的にアメリカを利する形になり、オバマ政権のリバランス強化につながってしまっていると述べる(フォーリン・ポリシー誌)。

 3月には、習主席の逆効果の外交政策を「危険な冒険主義」と批判する匿名の手紙が共産党中枢部宛に送られており、党内にも不満がくすぶっているようだ。マニング氏とプリスタップ氏は、習主席失脚の可能性も示唆している。今後も傲慢な態度を続ければ、国際社会の中国を見る目はますます厳しくなりそうだ。

提供:ニュースフィア

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