今こそ年貢の納め時。茅葺古民家を「村民」が守るシェアビレッジ町村 (2015/12/5 ジモトのココロ)
村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができる――思わずハッとさせられてしまったこの一言は、地図にはのらない秋田県のとある村の村長によるもの。これまでの「村」の概念を覆す発想で始動した、村と古民家の再生プロジェクト「シェアビレッジ町村」とは一体どういうものなのでしょうか?
帰る場所がないなら、みんなで作ればいいじゃない
東京での生活につかれた秋田県出身の現村長・武田昌大さんがシェアビレッジ町村を立ち上げたのは2015年4月。
「田舎でゆっくりしたい」「でもどこにいっていいかわからない」「そもそも帰る田舎がない」という問題に、「それなら自分の村を作ってしまおう!」と思い立ったのが始まりとのこと。
さらに武田さんは、人口減少の影響もあり消滅の危機にある古民家に着目。古民家が失われつつあるのは、住む人と維持する費用がないからだと考えました。そして考えついたのが、「古民家を村に見立てて村民に維持費を払ってもらうことで、ひとつの大きな古民家を複数人で維持していく」というものでした。
今こそ年貢の納め時。茅葺古民家を「村民」が守る シェアビレッジ 町村
こうして、村という古民家を複数の村民という出資者で保全するプロジェクトがたちあがり、クラウドファンディングを利用して「シェアビレッジ町村」が誕生しました。「シェアビレッジ町村」は古民家を保全するというだけでなく、これまで関わりのなかった複数人の村民でこの場所を守っていくことで、新しい発想とクリエイティブな環境が生まれます。
あなたもそろそろ年貢の納め時?
たくさんの村民で構成される古民家は、まるで昔話に出てきそうな築133年の茅葺屋根。秋田県の秋田駅・秋田空港からそれぞれ車で40分のところにある町村という小さな集落にあります。
町村には、かつて520年前に当時の地主によって開かれた、県内で最も古い朝市が今でも開催されています。江戸時代には、久保田と能代の地域や阿仁鉱山などへの物資補給の基地なり、市は流通の拠点として栄え、さまざまな農作物から作業道具など生活に必要なあらゆるものが揃う盛大な市さまざまな職人が集まったという歴史の長い地域です。
そんな町村にピッタリなのが、シェアビレッジ町村の村民制度です。
年貢
この単語、歴史の授業で習って以来という方も多いはず! シェアビレッジ町村では「年貢(NENGU)」と呼ばれる年会費を3000円払えば誰でも村民になれます。村民になると、自分の好きなタイミングで町村へ行き、田舎体験をしたり、村民同士で楽しんだり、もちろん宿泊もできます。
PCさえあれば仕事ができるという環境の方なら、シェアビレッジで仕事をしたり、芸術系の方なら制作活動に浸ったり、好きなように場所と時間を使うことができます。
寄合
なかなか村に帰る時間がない…という方でも村民になりたくなる仕組みがあるのがシェアビレッジ町村の面白いところ。時間をとって何度も村へ帰ることができないという村民のために、村民だけが集まる飲み会「寄合(YORIAI)」を都市部で定期的に開催しているんです。
本当の地元や故郷でもなく、会社の付き合いでもなんでもない、シェアビレッジ町村の村民という繋りで開かれる寄合だからこそ、いつもの生活とは少し違った人との関わりが生まれます。
里帰
村民同士が仲良くなることで生まれるのが「里帰(SATOGAERI)」です。これは、寄合などで仲良くなった村民同士が集まり、実際に自分たちの村に遊びに行くというもの。村には村長や大名(というありがたい役職も!)が村を守ってくれていて、いつ行っても楽しめるような企画を用意して待ってくれています。
私たちの村は日本の宝
春にはお花見、夏には蛍観賞、秋には紅葉狩り、冬には囲炉裏で鍋を囲む…etc。その他、例えば茅葺を葺き替えたり、敷地内の畑を「開墾(KAIKON)」したり、年に一度のお祭り「一揆(IKKI)」という名のフェスでは、村民みんなで「村歌(SONG)」を歌ったり。ネーミングからワクワクするイベントを1年を通して実施しているんです。
「シェアビレッジ町村」として使われている茅葺の古民家は、茅葺古民家写真集の表紙を飾ったり、JR東日本のポスターにも使われたりするほど、古くて広くてとても立派。それでも維持費や住む人の問題から、一時は解体も検討されていたそうです。
このプロジェクトをきっかけに、蘇った日本の宝を自分たちの「村」にしてみませんか?
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