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地方行政のプロが政策説得術をレクチャー――総務官僚の渡邉泰之氏が母校・慶応大学で講演 (2015/11/25 政治山)

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 総務省の官僚として要職を経験してきた政策研究大学院大学の渡邉泰之准教授(43)が17日、母校である慶應義塾大学の三田キャンパスで、「政策立案・執行における説得手法」というテーマでセミナーを開催し、研究者や専門家約70人が出席しました。

セミナーの様子

聴講者で満席となった慶応大学三田キャンパスでのセミナー

 渡邉氏は1998年に総務庁(現総務省)入庁後、郵政民営化や人事畑を務めた後、内閣官房行政改革推進室参事官補佐として、第1次安倍晋三内閣や福田康夫内閣で行政改革の大ナタを振るった渡辺喜美行革担当大臣をサポート。その後、大阪府高槻市副市長、栃木県那須塩原市副市長などを務め、現在は総務省からの出向で政策研究大学院大学の准教授として各国から派遣された政府職員らに政策執行の過程などを教えています。

ランチにも役立つ説得術の心得

 冒頭、渡邉氏は「説得とは、同僚とランチに行き『そばを食べたい』と提案された時、スパゲティに変更してもらうようなときにも用いられる日常のプロセスです」として、説得術のスキルを高めることの重要性を指摘。古代ギリシアの哲学者アリストテレスが説いた弁論術の3つの要素であるethos(人柄)とpathos(感情)、logos(言論)のうちpathosとlogosを駆使して高槻市や那須塩原市の副市長時代に数々の改革を行った経験を語りました。

自治体幹部のやる気を変えた渡邉氏の就任

 渡邉氏は自治体での実務の実質最高責任者として、まず、各部幹部に「前向きな政策にチャレンジした結果の失敗」の責任は問わないと説明しました。当時、責任を取らされることを恐れて、事なかれ主義に陥りがちだった幹部も担当事業に関し主体的に関与するようになりました。彼らのインセンティブが変わった結果、やがて「こんなアイデアはどうか」と次々と提案が来るようになったそうです。

事なかれ主義の市役所から、恋するフォーチュン・クッキーを踊る集団に

 那須塩原市では、渡邉氏の副市長就任後、定住促進計画や新幹線通勤者への定期券購入費補助事業、馬場整備事業など多くの新規事業に着手し、市役所に活気が生まれたそうです。就任当初には考えられなかったこととして、若手職員の発案で、職員の7割が参加したAKB48のヒット曲「恋するフォーチュン・クッキー」の那須塩原市バージョンを作成、自治体の中でいち早く配信し、短期間に10万超のアクセスを記録、市のPRにつながったエピソードなどを、動画を交えて語りました。

 時にはウォルター・リップマンやヘンリー・キッシンジャー、クレメンス・フォン・メッテルニヒ、鬼谷(中国・戦国時代)などの歴史的人物の言葉を引用しながら、説得手法の心得を説く渡邉氏の講演に、出席者は最後まで真剣に聴き入り、終了時間まで質問は途絶えませんでした。

プロフィール
渡邉泰之 政策研究大学院大学准教授渡邉 泰之(わたなべ やすゆき) 政策研究大学院大学准教授
1972年11月埼玉県生まれ。慶應義塾大学、コロンビア大学卒業。
1998年、総務庁(現総務省)入庁。内閣官房郵政民営化準備室参事官補佐、総務省人事・恩給局参事官補佐、内閣官房行政改革推進室参事官補佐等を歴任。また、大阪府高槻市副市長、大阪府特別参与、栃木県那須塩原市副市長等として各種の改革に従事。
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