【経済】米モンサントが1100億円で買収 気象データ分析ベンチャーの本当の凄さとは NewSphere(ニュースフィア) 2013年10月7日
農業バイオ技術大手の米モンサントが、気象データ分析会社のクライメート・コープを約11億ドルで買収することがわかった。
モンサントが2日発表したプレスリリースでは買収金額は9億3000万ドルとなっているが、クライメートの従業員引き止めのための優遇策などを加えた買収費用総額は10億ドルを超えるという。同社は同日、6~8月期決算における2億4900万ドル(1株当たり0.47ドル)の損失も発表した。
モンサントはバイオ技術を利用した新品種の種子を始め、農業関連の商品やサービスを全世界で提供している。この買収によって、クライメートの農業分析・リスク管理の専門知識と、モンサントの研究開発能力を結合し、「農業の次のレベル」をつくりたいとしている。
クライメートは元グーグル出身者らが2006年に設立したベンチャー会社で、降雨量や土壌の質など気候に関するビッグデータ分析を専門とする。また、農業関連の保険販売なども行っている。
特にこの会社を特徴づけているサービスは、リアルタイムでデータを利用して、地域や作物ごとの個々の生産者に最適な保険サービスを提供するものだ。250万ヶ所の気象測定データと1500億カ所の土壌観察のデータと組み合わせて処理することで、10兆にも上る気象シミュレーションポイントを生成して保険価格決定やリスク算定を行っている
海外各紙は、農業部門におけるビッグデータ時代の幕開けだと注目した。
クライメート側の思惑 クライメート・コープは、買収後もそのままの名称で独立して運営を続けるという。同社のグレッグ・スミリンCOOは「この買収は両社にとって理想的だ」「我々が開発したデータ解析技術は種子ビジネス開発に極めて大きな好影響を与えるだろう」とテッククランチの取材に対して語ったという。
ニューヨーク・タイムズ紙は、クライメートにとってモンサント内でより大きな新ビジネスを構築するチャンスだと報じた。また、研究者や金融アナリストとは異なる、トラクターに乗る人たちのためのユーザーインターフェース構築など、モンサントの支出は今後も続くと指摘した。
ビッグデータ時代の幕開け モンサントは近年ビッグデータ分析を導入する戦略を進めている。昨年にはプレシジョン・プランティングを2億5000万ドルで買収し、データを処理する双方向農作業システム開発の第一歩と位置づけていた。
パンド・デイリーは、今回の買収で重要なのは金額ではなく、優秀なインターネットベンチャーがクリック報酬型広告について考えることから離れ始めたことだと報じた。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)もビッグデータに10億ドル投資する方針を示している。今後、他の巨大企業も参入し、農業以外に健康、教育、金融、アンチエイジング分野へとビッグデータが拡大する可能性があると同紙は報じた。
オラクルもビッグデータ関連ハードウェアとソフトウェアの市場として世界の農業分野に焦点を当てており、特にインド、中国市場の開拓に注力しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
日本の気象データ分析 クライメートの複雑なビッグデータ分析手法には米政府機関も興味を持っているという。
日本では気象庁が先月12日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の人工衛星「しずく」からリアルタイムで送られてくる水蒸気観測データの天気予報への利用を開始した。また、気象情報会社ウェザーニューズや政府機関などが、豪雨や竜巻を引き起こす積乱雲の発達を早期に検知する手法の開発に取り組んでいる。