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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4)◆米債強気派にも限界か◆  株式会社フィスコ 2017年6月11日

関連ワード : アメリカ 金融経済 

イベント前の調整か、米利回り攻防激しく

金利水準は何処が妥当か見極めるのは難しい。ましてや債券相場の攻防には様々な要因が働くので、落ち着き処を探るのは困難だが、最近の相場では、米債先物取引のロングポジションがベースにあったと思われる(5/25付け「主戦場は米債券市場」参照)。ただ、それに絡むニュースが少なく、ロングポジションを取った投機筋が、どの水準を狙っているのかの目安を持てなかった。7日付ロイターは「英金融大手HSBCは、17年末の米10年債利回り予想を30bp引き上げ、1.9%とした」と報じた。新たな予想は微調整で、見通しを変えた訳ではない、米経済はさらなる引き締めに耐えられるほど強くないとし、市場コンセンサスを下回る予想を継続するとした。高水準の債務を抱える米国が大幅に金利を引き上げることはできないとの従来からの見方が背景。日欧の低金利政策も影響するとしている。ただし、18年末予想は2.3%でユックリとした上昇を想定している。

HSBCの見方が投機筋の狙いに合致するかどうかは分からないが、投機筋が米10年物国債利回りの2%割れを狙って動いている可能性はある。問題は、その方向感は正しいかどうか、実現性はあるのか、利回り低下を煽りながら他市場(為替や原油相場など)で稼ごうとしているのではないか、と言った点にある。おそらく、トランプ政権のさらなる失墜による混迷、世界的な低インフレ化、中国経済の下向きなど、様々な想定がイメージされる。

最近のドル安も、その見方を背景に、仕掛け的に強まったと受け止められるが、7日の市場はやや揺り戻し的展開になった。8日のイベント集中を前に利益確定の動きが出たためと思われ、前倒し含みに動いている。米10年物国債利回りは2.1763%(前日2.1470%)。

コミー前FBI長官が議会証言を前に提出した文書では、目新しい話が無かったこと、欧州の金融脆弱性が表面化したことなども手仕舞いを誘った公算がある。欧州では1日の伊モンテ・パスキの資本再編(66億ユーロの資本注入)合意に続き、7日はスペイン・サンタンデール銀が行き詰ったバンコ・ポピュラールを1ユーロで買収、70億ユーロの増資を行うと発表。米FRBはボルカールール適用を、ドイツ銀、UBS、SVBフィナンシャルに最大5年間、猶予すると発表(非流動性資産の処分に時間が掛かる)。為替市場では、対ドルでユーロが下落(0.14%安の1.1259ドル)、ドル安に歯止めが掛かった格好。

一方、原油相場は5%安。サウジなどのカタール国交断絶は響いていない(カタールはガス大国だが、原油生産はほとんどない)。展開は予想できないが、原油安が続けば世界的なインフレ圧力の低下要因と看做されよう。いずれにしろ、次のヤマ場は来週13-14日の米FOMCに向かうと考えられる。株式市場は大きな影響を受けている訳ではない(ドル建て日経平均182ドル前後で安定)。為替の円高分、調整された格好だが、一本調子の円高想定も以前に比べれば少ない。基調はボックス局面と考え、イベント通過を見極めることになろう。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/6/8号)

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