中国:東芝IC事業が争奪戦へ、台湾TSMC・鴻海精密の共同提案も 株式会社フィスコ 2017年3月8日
東芝<6502>の半導体(IC)メモリー事業の買収に向けて、ICファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC:2330/TW)とEMS(電子機器受託製造)世界最大手の鴻海精密工業(2317/TW)が連携する見通しだ。コンソーシアムを組んだ上で、3月29日までに買収計画書を提出する構え。需要が世界的に高まるフラッシュメモリー事業に新規参入したい意向という。台湾自由時報が7日に伝えた。
TSMCと鴻海精密は、秘密保持条項を規定した覚書を交わしたとされる。鴻海精密の郭台銘(テリー・ゴウ)・董事長は「韓国エレクトロニクス大手との対抗軸を構築する狙い」と過去に発言。ICメモリー分野で韓国勢とトップを争う考えを示したことがある。また、今月1日に記者団の取材に応じ、東芝IC事業に言及。「買収を真剣に検討している」と繰り返した。こうしたなか、TSMCの張忠謀(モリス・チャン)・董事長は「東芝IC事業の行方を見守っている」とコメント。買収提案の有無に関して明確に否定しなかったという。
東芝が希望するフラッシュメモリー事業の価値は2兆円(約175億米ドル)とされる。一方、台湾2社の時価総額もTSMCが1539億米ドル、鴻海精密が496億米ドルと巨額。資金面のハードルはそれほど高くないとみられる。
サムスン電子(005930/KS)に次ぐ世界シェア2位の東芝フラッシュメモリー事業は、競争力が高く、世界的に見ても“垂涎の的”だ。株式の一部保有を含めて、米国、韓国、台湾、中国の資本による争奪戦に展開する可能性が高い。買い手候補の資本は、◆コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR/NYSE)、べインキャピタルやシルバーレイクなどの投資銀行やファンド、◆マイクロン・テクノロジー(MU/NYSE、NASDAQ)、ウェスタン・デジタル(WDC/NASDAQ)、SKハイニックス(000660/KS)、キングストンテクノロジー台湾子会社や群聯電子 (8299/TW) などのライバル企業や協業会社、◆TSMC、鴻海精密、アップル(AAPL/NASDAQ)、マイクロソフト(MSFT/NASDAQ)など取引先の3種に分類される。
台湾を本拠とする鴻海精密は、グループの従業員総数が120万人に上る。うち100万人超は中国に在籍。鴻海グループには、携帯端末OEMメーカー大手の富智康集団(旧社名は富士康国際HD:2038/HK)も含まれる。経営不振のシャープ(6753/東証)を先ごろ傘下に収めた。
日本のICメモリー大手は、相次ぎ外資の軍門に下ることとなる見通し。日本電気、日立製作所、三菱電機のDRAM部門が合流したエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)は、すでにマイクロン・テクノロジーによって2012年に買収された。
【亜州IR】
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