ダボス会議での注目点、日本がアジアの成長エンジンになれるか? 株式会社フィスコ 2014年1月17日
来週22-25日にスイスで開かれるダボス会議には安倍首相や日銀の黒田総裁、英国のキャメロン首相、韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領など世界各国・地域の要人が一堂に会する。
ここではイランのロウハニ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の講演も予定されるなど、対立の根深い国・地域のトップが接触する可能性を秘めたイベントでもある。とはいえ、現時点では韓国大統領と安倍首相が接触する可能性は低く、日韓関係の「雪解け」にはまだ時間がかかりそうだ。
関係者によると、ダボス会議での日韓会談は靖国問題で棚上げになったようだ。ただ、2015年は日韓国交正常化50周年を迎える節目とあり、両国ともに事態を打開する糸口を探りたいところ。
韓国側では「村山談話」が話題になっており、この堅持を安倍政権に求めるという形で日本側にボールを投げてきていると思われている。これに対し安倍首相は、「これで日本から韓国にアプローチする必要はなくなった」という認識をもっていると伝わっている。首相のダボス会議出席の目的は日本の正当性を主張するためとの見方もあり、まだ和解のきっかけをつかみにくいのが現状だ。
注目される安倍首相の基調講演では経済政策を中心に組み立てられると報じられているが、靖国問題で国際的な批判を受ける中、日本の立場を正当化する主張を織り交ぜる可能性も否定できない。「アベノミクス」に世界が注目する中、首相の進める政策の力点が経済から逸れているとの印象を与えれば外交的な失点にもなろう。
世界銀行は最新リポートで日本の2014年成長見通しを1.4%に据え置いたが、アベノミクスによる経済改革には「現時点では失望的」と、その成果に満足していない。また、中長期的に日本の景気改善が維持できるかについても、世銀は「不透明だ」と指摘している。
アベノミクスと黒田日銀総裁の「質的・量的緩和」は、アジア地域経済の成長にも貢献している。英HSBCによると、米国の量的緩和政策と中国の高度成長が縮小に向かう中、アジア経済の成長を後押しする第3のエンジンとしての日本の影響が重要度を増してきたという。
日銀の黒田総裁が打ち出した質的量的緩和は歴史的な金融刺激策となり、米国の緩和縮小(テーパリング)の穴を埋めるほどの流動性をアジアにもたらす可能性を秘めている。また、HSBCは日本の銀行がもたらすマネーの量は、東南アジア向けだけでも600億-1400億米ドルに達すると見込んでいる。
靖国参拝でこじれた地域問題を立て直す好機をダボス会議は提供してくれる。日本がアジア成長の第3のエンジンとなるためにも、安倍首相が信頼感を取り戻す、あるいはそのきっかけをつかめるのかに注目が集まりそうだ。 <RS>
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