「第13回政治山調査-TPPに関する意識調査-」から読み解くマーケット展望  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   フィスコ    >   「第13回政治山調査-TPPに関する意識調査-」から読み解くマーケット展望

「第13回政治山調査-TPPに関する意識調査-」から読み解くマーケット展望 (2013/11/19 株式会社フィスコ)

関連ワード : TPP 調査 金融経済 

政治山が先ごろ実施した「第13回政治山調査『TPP(環太平洋経済連携協定)に関する意識調査』」では、輸出の増大やGDP(国内総生産)の増加、物価が下がることへの期待感は大きいものの、1次産業をはじめとした国内産業へのダメージに対する不安は払しょくされておらず、特に食の安全についてはホテルやデパートで相次ぐ食品の『偽装表示』発覚の余波を受けてか、ネガティブな関心を示す割合が際立つ結果となりました。ここでは、投資支援サービスや情報を提供する株式会社フィスコがこの「第13回政治山調査」をもとに、株式相場や円相場を分析しました。

関連記事:第13回政治山調査『TPP(環太平洋経済連携協定)に関する意識調査』

◇        ◇        ◇

エネルギー政策に対する関心は高い 原発推進に対する不安も

graph03 アンケート調査結果によると、2020年に向けて日本の経済成長のために最も重要であると考えられている政策課題は、「エネルギー政策(27.3%)」となった。2位は、「年金制度改革(22.1%)」、3位は「税制改正(15.9%)」である。エネルギー政策については、「脱原発」路線への転換か、原発政策の推進かの二者択一であると考えても良さそうだ。現行の原発政策の問題点を一般有権者が十分に理解しているかどうか難しいところではあるが、原発推進政策に問題がなければ、エネルギー政策に対する関心の度合いは相対的に低くなるはずである。

 自民党のエネルギー政策(原発推進政策)に対して、不安や疑問を感じている人が少なからず存在するというのが現状か。しかしながら、安倍政権は東電を破綻処理せず、国費(税金)投入を検討しているようだ。足元では小泉純一郎元首相が「脱原発」を声高に主張している。「小泉劇場」の幕開け第2弾とも思える動きを、かつて小泉政権で官房長官として閣僚入りしていた安倍首相はどう思っているだろうか。

東電処理 政府は国民負担を最大限に軽減することを検討すべき

 東電の処理問題は、今後のエネルギー政策を検討するうえで避けて通ることはできない重要課題であると思われる。一般国民の負担をゼロにすることは現実的な解決策ではないが、株主責任とのバランスを最大限に斟酌し、国民負担を極力減らすことが安倍政権(自公連立与党)に求められる対応となる。

TPPへの日本の参加 絶対的な情報量不足が問題に

graph04_05 アンケート調査結果によると、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加することについては、半数に近い46.2%が賛成・評価している。しかしながら、TPPに関する議論や情報量については、政府の国民に対する説明は「不足している」「どちらかといえば不足している」と考えている人の割合は90%近くに達している。TPPへの日本の参加を評価している人の割合は半数近くいるが、その人達の過半ているようだ。

 情報量が不足しているにもかかわらず、TPPへの参加に賛成・評価しているのは、マスコミの報道姿勢が関係しているのかもしれない。一部新聞がTPP参加を主張しているが、経済問題に対する関心が高い人は一部マスコミの報道を参考にしている可能性は否定できない。

TPP交渉の問題点 ISDS条項の導入で国家主権喪失のリスク

graph06 しかしながら、TPPは自動車業界を筆頭に米国側でも反対意見が多く、多くの問題点を内包する制度である。TPP交渉では、紛争仲裁制度が導入され、「国家と投資家の間の紛争解決」(ISDS)条項を導入することになったと報道されている。専門家によれば、ISDS条項はTPPの核心部分と言っても過言ではなく、この条項の導入を認めた場合、各国制度の決定に関して、国家権力の上に裁定機関が位置付けられることになる。

 これはすなわち、有権者である国民が主権者としての地位を失うことを意味する。このような極めて重大な問題についてTPPへの参加に賛成している人が正確に理解しているかどうか、少々疑問がある。ISDS条項を導入したことによって、日本企業などの経済活動が著しく制限されるケースが生じる可能性があり、マクロ経済を圧迫する要因となってしまう危険性がある。

株式市場について

nikkei TPP関連銘柄という言葉があるように株式市場では、TPPは高いテーマ性を有しているとの見方だ。ただ、上記のアンケート同様、TPPの詳細が浸透していない状況下、関連銘柄という位置付けが確立していることを疑問に思われる投資家もいるだろう。株式市場では「噂で買って真実で売る(Buy on rumor sell on fact)」という格言がある。TPPでひょっとしたら業績にプラスになるかもしれないといった思惑で株は買われる。「真実」とは業績でその結果が明らかとなった時か(上記の格言は短期投資で当てはまるケースが多いとの見方で長期投資ではさほど大きな影響を受けないとの声もあるのでご注意を)。

 代表的な関連銘柄としては農業関連が筆頭か。産業競争力会議において安倍首相が「農業を成長分野と位置づけて産業として伸ばしたい」と強調したことも支援材料となる公算。足元では、様々な銘柄がTPP関連として位置付けられ思惑的な売買が活発となっている。今回はメジャー銘柄だけではなく、「え、そんな銘柄も?」というようなマイナー銘柄も抽出した。

日本農薬<4997>
農薬大手で売上高の世界順位は業界で15位。農業市場の拡大による恩恵を受けることが期待される。今期業績に関しては小幅な増収増益見通しとしているが、保守的な内容との見方もある。

井関農機<6310>
整地用機械や収穫調製用機械などを手掛ける農業機械中堅。足元では国内のほか、北米や中国などの海外でも農業機械の販売を展開している。今期業績見通しは増収減益ではあるが来期以降、TPPで風向きが大きく変わる可能性も。

ベルグアース<1383>
野菜苗などの製造・販売などを行っている他、農業に参入し農作物の栽培・販売も手掛ける。接ぎ木苗では年間2300万本生産し国内トップの生産量を誇る。西日本で供給能力を高め、関東エリアで営業攻勢をかけることで今期増収増益見通し。

東洋水産<2875>
日本が課している農産物への関税引き下げが見込まれる。コメ、砂糖などが「聖域」になるかどうか議論が進んでいるようだが、小麦の関税が引き下がる場合にはコスト低下につながる。「マルちゃん正麺」の絶好調も支援材料か。

NTN<6472>
自動車部品の中でも、とくにベアリングの輸入関税が高いことから引き下げの恩恵は大きいだろう。急速な円高是正、世界的な景況感の改善を追い風に自動車販売の拡大期待、TPP効果の3本の矢が業績押し上げ要因に。

いすゞ<7202>
米国は乗用車に2.5%、トラックに25%の輸入関税を課している。交渉次第だが、関税引き下げの影響は自動車セクター内ではトラックが最も大きいとみられる。競争力の向上にもつながるとみられ恩恵は大きい。

川崎汽船<9107>
TPPへの参加によって国内企業の貿易取引量が増加すると、海運各社への恩恵が見込まれる。世界景気の持ち直しを背景にコンテナ船市況にも底入れ感が出てきており、TPPをきっかけに一段の市況改善期待も。

ファーストリテイリング<9983>
東南アジアなどで生産した衣料品を国内で販売しており、TPPの参加による輸入関税の影響がポジティブに働く。直近では生産コストの低いアジアへの生産移管を進めており、損益面へのインパクトは大きいとみる。

◇        ◇        ◇

関連リンク
第13回政治山調査「TPP(環太平洋経済連携協定)に関する意識調査」
フィスコ記事一覧
関連ワード : TPP 調査 金融経済