米緩和策は来年まで継続、ダイエットに励む一部新興国の現状とは 株式会社フィスコ 2013年10月29日
今週29-30日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれます。今月初めから約2週間半にわたって米連邦政府の機能がストップし、一部経済指標の連続性が途切れるなどの弊害が発生したため、今回のFOMCでは量的緩和の縮小など重要事項が議論されない可能性が高まっています。
市場では米連邦準備理事会(FRB)による毎月850億米ドルの資産購入プログラムが来年1-3月期まで現状のまま維持されるとの見方が台頭。つまり、米ドル紙幣を刷りつづけてヘリコプターからばら撒く政策が、短くとも年内は続くことになります。
こうした流れの恩恵を最も大きく受けるのが新興国で、特に5月以降に通貨が急落したインドやインドネシア、マレーシアなどにとって朗報です。これら新興国の一部では、金融危機後に米国が量的緩和を導入してお札を刷りつづけていた間、経常収支の悪化が放置されていました。経常収支が悪化しても、米国を中心に金融緩和を進める先進国からの資本流入がこれを埋め合わせるという状況に甘んじてきたためです。
ただ、米量的緩和は来年から縮小される公算が大きく、今度はその間に経常収支を改善しなければまた通貨暴落という憂き目に会うことは必至の状況。こうした中、インド、インドネシア、マレーシアがダイエットに動き始めました。
最近ではマレーシアのナジブ首相が前週末25日、日本の消費財に相当する物品サービス税を導入し、財政再建に本腰を入れる方針を打ち出しました。同国の今年の財政赤字は対国内総生産(GDP)比で4.0%と見込まれていますが、来年にはこれを3.5%まで縮小させる方針です。
インドネシアも2014年度予算案で引き締め姿勢を鮮明化させており、財政赤字の対GDP比率を今年の推定2.4%から翌14年度には1.5%まで引き締める計画。同国では長らく燃料補助金が財政の重荷となっていましたが、これをカットして資金をインフラ整備など“地に足の着いた”成長分野に振り向けることになります。
インドでも燃料や金などの国内消費を抑制して輸入を減らし、一方で輸出を活性化させて貿易収支を改善させる方策を打ち出しています。また、きょう29日にはインド準備銀行(中央銀行)が政策会合を開きますが、ここでは2会合連続での利上げが見込まれています。
米量的緩和の縮小先送りを単純に喜べない新興国の苦悩が垣間見えますが、ここを乗り越えれば元来持っていた成長余力を十二分に発揮できるようになるでしょう。(フィスコ・リサーチ・レポーター)<RS>
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