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【海外】和平交渉期限迫るイスラエル・パレスチナ 資金、人材、技術…日本の支援に期待の声も  ニュースフィア 2014年4月25日

 アメリカのオバマ政権が仲介しているイスラエルパレスチナの和平交渉の期限が、今月29日に差し迫っている。しかし合意には程遠い状況で、双方の首脳会談さえ行なわれておらず、交渉延期が濃厚だ。

交渉の厳しい現状

 和平交渉の目標は、パレスチナ人の独立国家をつくり、イスラエルと平和共存させるというもの。いわゆる「2国家共存」。

 しかし両国間の不信感は強く、現状での「2国家間の平和的共存」は理想にすぎないと言わざるを得ない。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、先月末に、約束されていたパレスチナ人政治犯の釈放を見送った。これに対しパレスチナ暫定自治政府のアッバース議長は、和平交渉中は控えると約束していた15の国際条約への加盟申請へ踏み切っている。

 もし加盟が認められれば、イスラエルによる占領や入植活動の違法性について、国際法上で訴える道が開ける。イスラエルはパレスチナ自治区・ヨルダン川西岸地区で入植地を拡大しているため、これを認めることはないだろう。パレスチナ側は、イスラエルの入植活動は国際法違反で、独立国家の領土を一方的に奪うものだと主張している。

 4月22日付のアルジャジーラによると、アッバース議長は、イスラエルが約束されていたパレスチナ人政治犯を釈放し、入植活動を完全に中止して初めて和平交渉に応じる考えだ。しかし、もし和平交渉延期が決まれば、2、3ヶ月以内にイスラエル・パレスチナ間の国境線を定めたいとの積極的な考えも示している。

 対してイスラエルのネタニヤフ首相は4月23日、このアッバース議長の考えに応じる事はできないと回答した(4月23日付・エルサレムポスト)。

 和平交渉はまさに堂々巡りの展開。交渉の扉は未だ固く閉ざされたままだ。

中東和平へ向けた日本の支援

 中東和平交渉期限が近づく中、日本政府は4月14、15日に飯村政府代表をイスラエル・パレスチナに派遣し、モルホ・イスラエル首相顧問、アッバース・パレスチナ自治政府大統領に対し、粘り強い和平交渉の継続を働きかけた。

 パレスチナメディアWAFAは、パレスチナ自治区ラマッラーで14日に行なわれたアッバース議長と飯村政府代表の対談について報じている。WAFAによると、この対談の中で、日本の経済支援、パレスチナと東アジア諸国間の様々な分野における連携体制の構築、その可能性について話し合われた。

 連携体制の構築とは、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)のことで、経済発展を遂げた東アジア諸国の知見・経験や経済力を対パレスチナ支援に活かす目的のもと、設立された。

 日経新聞(2月28日付)によると、日本政府はパレスチナ自治政府への無償資金協力と技術支援として、2年間をめどに2億ドル(約205億円)の供与を決定。

 ヨルダン川西岸の自立を促す、「平和と繁栄の回廊」構想の推進につなげ、今後5年間で環境や農業分野の人材を1000人育成するのが目的だ。「平和と繁栄の回廊構想」は,イスラエルとパレスチナの共存共栄に向けた中長期的取組。日本、パレスチナ、イスラエル及びヨルダンの4者による域内協力により、ジェリコ及びヨルダン渓谷の経済社会開発を行うもの。現在はパレスチナ・ヨルダン川西岸地区・ジェリコでの農産物加工団地の建設が進行中だ。

 無償資金協力は団地内の送電網や水道設備などが整備される。人材育成は国際協力機構(JICA)が現地研修を予定。物価上昇や失業率が深刻なパレスチナ経済の安定を目指して行われる。

 WAFAはアッバース議長が飯村政府代表との対談の中で、日本のパレスチナに対する政治的・経済的支援に対し感謝の意を表明したと報じている。

日本の支援はエネルギー分野にも

 また、日経新聞(4月13日付)によると、日本政府はイスラム諸国とともにパレスチナの経済支援に乗り出し、サウジアラビアに本部を置く「イスラム開発銀行」に信託基金を設け、湾岸産油国からの資金を募って事業を手がける方針だ。

 2014年度は、第1弾として、パレスチナのガザ地区で太陽光発電の設備導入を予定している。普及事業に数十億円を投じ、病院や学校、住宅などへの導入を支援する。日本企業も寄与できる。

 パレスチナは現在、イスラエルから電気を割高で購入しており、電源の多様化や再生エネルギーの活用を後押しする。ハマスが実効支配しているガザ地区は、対立するイスラエルに国境を管理されており支援が届きにくい。

 中東紛争への歴史的な関与が少ない日本であれば、現地で各国との調整が進めやすい。湾岸諸国はパレスチナを直接支援した実績が乏しいため、日本が協力を仲立ちする。米国が重視する中東和平を側面支援する狙いもある。

 中東和平協力における日本への期待は大きい。

パレスチナ、壁に閉ざされた誇り高き子どもたち

 なお、この和平交渉期限が差し迫ったタイミングで、国境なき子どもたち写真展2014 「パレスチナ、壁に閉ざされた誇り高き子どもたち」が新宿区のアートギャラリー「シリウス」にて4月24~5月7日まで開催される。

 パレスチナは国際問題として取り上げられる事が多く、人々の日常的な暮らしはあまり知られていない。この写真展では、そんなパレスチナで暮らす人々の「素」を窺い知ることができる。悲劇的に伝えられることの多いパレスチナだが、実際に現地を訪れると、彼らは人懐っこい笑顔で客人を迎え入れてくれる。

提供:ニュースフィア