【社会】米国でニセ神戸牛が出回る 実際に輸出されたのは5頭だけ NewSphere(ニュースフィア) 2014年1月28日
日本で最高級食材の一つとして数えられる神戸牛は、海外でもその名が広く知られている。しかし、輸入規制の関係上、海外で本物の「神戸牛」を食べることができる機会は、ごく限られているようだ。
2012年に、米国で「神戸牛」と銘打った牛肉を販売している精肉業者・外食業者を食品偽装で告発した記者が、2014年1月7日付で、2012年の記事続編を発表した。
規制緩和されたものの、米国内の流通量は伸びず
米経済誌フォーブスの1月7日付の記事によれば、2012年8月、米国農務省が日本産牛肉の輸入停止を解除し、神戸牛の米国内での流通は法的に可能になった。しかし、実際に流通している量は、いまだにほんの少量である。輸入が解禁された2012年8月から同年12月末までで、アメリカに輸出された神戸牛はたったの5頭だ。
輸入規制緩和にもかかわらず流通量が少ない理由は、米国農務省が、日本の畜産業者に対し、米国の畜産業者に課せられるものと同様の規制、書類、検査等を課すためだ。記事公開時点で、米国農務省の認証を得ることができた日本の畜産業者は、たった1社だという。
基準がないため、混血種の牛肉も神戸牛として販売されている
しかし、以前から、「神戸牛」「和牛」と銘打ったメニューや商品は、米国内に多数存在している。正真正銘の「神戸牛」を生産販売しているのはごく一部。ほとんどの商品は、和牛種との混血種の牛肉に「神戸牛」「和牛」といった名称を付けて販売しているものだ。
このような食品偽装まがいの慣習が横行する理由は、米国では「神戸牛」「和牛」といった名称に関する基準や規制が設けられていないためだ。
海外での神戸牛の評価は高い
海外サイト上のネットユーザーの声を見る限り、神戸牛の国際的な知名度は意外にも高い。しかし、海外での流通量が少ないだけあって、「食べてみたい」という声や、「本当にそんなにすごいの?」と、神戸牛を食べたことがあるユーザーに問う声が多かった。
大手ソーシャルニュースサイト「レディット」や人気ブログの投稿によれば、神戸牛が絶賛される理由は、その肉の柔らかさ、海外では一般的でない霜降り状の脂身、そして一般の牛肉よりも融点が低いとされる脂質にあるようだ。神戸牛を食べた感想をネット上に投稿している海外ネットユーザーの多くは、その食感を「溶けてなくなるようだ」と表現している。
海外サイトでよく見られた、その他神戸牛に関する記述は、「神戸牛はマッサージの施術や、ビールを与えられ、ショパンを聴かされながら飼育されているらしい」というもの。特定の業者独自の飼育方法が独り歩きし、すべての神戸牛に当てはまる飼育方法だと考えられているようだ。
近年ではアジアへの輸出が順調
前述の米国への輸入の伸び悩みには、神戸牛自体の希少性も影響している。「神戸牛」の認定を受けることができる牛は年間約3,900頭しか生産されておらず、輸出されるのは、そのうちわずか10%。輸出されている数少ない神戸牛のほとんどが、シンガポール・マカオ・タイなど、需要が急激に伸びているアジア圏に輸出されていることも、米国でなかなか流通しない理由の一つのようだ。